第94話 異端者排除
それから20分程時間が経った。その間真耶は、その女性から世界で起きたことなど話を聞いた。
話を聞く限り、アーサー達がめちゃくちゃやったせいでこの世界はめちゃくちゃになったらしい。魔物共は凶暴化し、新たなるダンジョンがいくつも現れたとか。
それだけじゃない。これまで何も出来なかった犯罪者や犯罪集団がこぞってアーサーに忠誠を誓い人々の敵となっているらしい。
他の国や街では勇者パーティや剣聖の噂を聞くが、それでも世界はめちゃくちゃだとか。
「俺が居ない間にこんなことになるなんてな……」
真耶は小さく呟くと、右目を見開いた。そして、街の方を見る。その目には青白い光を放つ円が浮かんでいた。
「なるほど……この街には3人ほどいるみたいだ……」
3人……暗殺するのがベストだろう。それとも、この街事消すか……。いや、それはまずい。いきなり街1つ消えればアーサー達は不審がるだろう。
なら、悪だけを消せばいい。俺が敵と認識したものに天罰を与えればすぐに終わるじゃないか。
「……フフフ……フハハハハハ!簡単な話だな!一撃で終わらせる」
真耶はそう言うと右目に金色に光る円を描いた。そして、両手を前に突き出し左手で何かを握るような形をする。そして、弓を引くように右手を引いた。すると、金色に光るエネルギーの弓矢が現れる。
「”世界を裁け、悪を断絶しろ、金色に光る制裁の矢……断罪之矢”」
真耶はそう言って矢を放った。金色の矢は街の外壁にぶつかると貫通し街を突き抜ける。しかし、傷は無い。
金色の矢が街を突き抜けると、街の3つの場所で悲鳴が上がった。そして、黄色い粒子が飛んでいくのが見える。
「終わったな」
真耶はそう呟いて振り返った。奏達は驚きと尊敬の眼差しで見つめ拍手をしている。
そう言えばこの技も初めてだったな。この前の戦いはこっそり終わらせたし。
「マヤさん、この街はどうなったのでしょう?」
「多分さっきよりマシになったと思うよ。アーサーの手下は消した。今は次元の歪みとなって超空間に漂っているはずだ」
「す、凄いですね」
フェアリルはそれを聞いて少し怯えてしまった。いや、別にお前らには害はないんだけどな。
「ま、1度街の中を見てみようぜ」
そう言って全員は街の中に入っていった。街の中に入るとそこは地獄だった。街は汚く異臭がする。街の人々は死んだ目をしていて、女性は皆精神崩壊したように天を仰いでいた。
「あれ?俺、地獄に来たのかな?なんか皆死んでるんだけど……」
「……皆、この街の領主様に散々犯されたので、女性は皆あんな感じです。男性も、休む暇などありませんので……」
「……そうねぇ、仕方ないな」
真耶は少しだけため息を着くと今度は左目を見開いた。その目には時計が写っている。真耶はその時計の針を7週ほど動かした。すると、街に時計が現れ街の人々や、物など全てのの時間が戻っていく。
少しすると街は綺麗になった。それと同時に時計も止まり、カチカチという音は消えていく。
「うーん……だいたい5か月くらい戻したから俺の寿命も5か月減ったな。まぁ、まだあと4000年近くあるがな」
そんなことを呟いていると、街の冒険者が近寄ってきた。何かを言っているが、何を言っているのか聞こえない。
その声は近づくにつれだんだん大きくなっていき、聞こえてきた。
「ありがとうございます!私達を救ってくれて!」
「本当に感謝するよ!」
そんなことを言っている。どうやら奴隷にされていた人達らしい。その人達は泣きながら真耶の元まで走ってきた。
「お前ら……っ!?」
突如真耶が抱きついてきた人達を突き放す。そして、その場を5歩ほど下がった。突き放された人達は、なぜ真耶がそんなことをしたのか理解出来ない。しかし、その理由はすぐにわかった。
「うわぁっ!な、なんなんだこれ!?」
冒険者の1人が声を上げた。その声で皆ハッとする。なんと、目の前に得体の知れない魔物がいたのだ。
「真耶くん!逃げて!」
「いや、お前が逃げろ。”物理変化”」
早速真耶は魔法を唱える。地面から細い何かが出てきた。それは、紐のように曲がり、ゴムのように伸び縮みする。そして、その何かは魔物を捉えた。
「全員逃げ……っ!?」
気がついたら右腕が無くなっていた。どういう攻撃を食らったのか分からないが、肩と肘の真ん中くらいから下がなくなっている。
さらに、奏達は真耶が魔法で逃がしたから良かったが、冒険者達は皆殺されてしまった。
「一体なんなんだ!?」
「あ、も、もしかしてあれって……」
「あれ?ルーナちゃん知ってるの?」
「い、いえ、ですが……話だけは聞いたことが……」
ゆっくりルーナは確証がなさそうに話し出す。その話によるとこうだ。
あの魔物はキリングと言ってこの世界の関係を崩すような何かが現れた時、その何かを排除するために現れるらしい。
なんともはた迷惑な野郎だ。恐らくマーリンによって洗脳されているのだろう。《《真耶を殺せ》》とかな。
そうなれば、もうこの魔物はただの殺戮兵器と変わりない。殲滅するまでだ。
「お前ら下がってろ。こいつは俺が殺す」
真耶はそう言うと背中の剣に手をかけた。それも、アルテマヴァーグじゃない方の剣だ。
それは、5か月間で作った剣だ。世界眼を使ったらアーティファクトが出来たから試しに色々作ってみたのだ。
そして、その最高傑作の1つがこれ。絶愛輪廻アムールリーベだ。これは、愛眼を手に入れた時に思いついた作品。愛に飢えたこの剣は、どんなものでも受け入れ愛する。
要するに、全て吸収するということだ。
「まーくん!避けて!」
奏の声が聞こえた。前を向くと、キリングが炎をふこうとしている。それも、蒼い炎を。
「フッ、俺を舐めるなよ」
真耶はそう呟くとキリングに向かって飛び出した。魔物はそれを見て真耶に向かって炎を吐き出してくる。
「まぁくぅぅぅん!」
奏の悲痛な叫びがその場にこだました。
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