第89話 ラブアイ
その目はとても可愛かった。綺麗だからとか美しいからとかそういうのじゃなく、ただ単に可愛かった。
リルと玲奈はそんなことを思う。そして、その目に釘付けとなり目が離せなくなる。すると、だんだん頭がぼーっとしてきて、胸がキュンキュンしだす。
「マヤ、起きたのか!?」
シュテルはそう聞いた。その言葉でリルと玲奈は目を覚ます。しかし、すぐにまた頭がぼーっとしだす。
「まぁな」
2人はそんな会話をした。リルと玲奈はその会話を聞きながら、胸の高鳴りを何とかこらえる。しかし、頬はどんどん赤くなり熱くなっていく。
そして、やっぱりそのまま真耶の体をしゃぶった。
ジュルジュルという音が鳴る。そして、真耶の体がヌルヌルベタベタになっていく。
「なぁ、こいつらはなんで俺を舐めてんの?」
「私が知るわけないだろ」
理由が分からない。真耶はじっとリル達を見つめたが、何か洗脳魔法にかかっているような気配は無い。もしかしたら自分にシークレットアイテムを使われたのかとも思ったが、それも違う。
「……1つ聞いて良いか?」
「良いよ。何?」
「何で君は生きているんだ?完全に心臓は止まっていただろ。それに、脈も呼吸も無くなっていた。魔力だって感じなかったぞ」
「あぁ、それはあれだな。魂眼で魂だけの存在となったからだ」
「魂?」
あぁ、そういえばシュテルに見せるのは初めてだったな。時眼は1度見せたことがあったが、魂眼はその後に手に入れた技だしな。
「俺はあの時心臓を突き刺されて潰されただろ。その数秒前に魂眼を使って魂だけの存在となった。そして、魂だけで何とか傷を修復したわけだ」
「だが、傷は治らないはずだろ」
「あれは、生きていればの話だ。恐らくあの剣は、”壊滅神剣アロンダイト”だ。硬いだけと思っていたが、この世界に召喚された際に不治の効果が付与されたらしい」
真耶はそういう感じの説明をした。しかし、シュテル達は何が何だかと言った感じだ。どうやらカタカナが多くて意味がわからなかったらしい。
真耶は少し目を瞑るとゆっくり目を開いて言った。
「とりあえず、不治の効果は消えたってことだ」
「不思議なこともあるんだな」
真耶の言ったことにシュテルはそう答えた。だが、真耶からしてみればこの世界にいること自体が不思議なことなのだ。
なんせ、この世界に来た理由が召喚されたからである。元々真耶達は魔法とは無関係の日本にいた。だから、この世界に来たこと自体不思議なことなのである。
「やっぱ考え方が違うんだよな」
「ん?どうした?急に」
「いや、何でもない。それより、1つ聞きたいんだが、奏達はどうした?」
「あぁ、彼女達なら絨毯の中に……あ」
シュテルは喋るのを途中でやめた。なぜなら、絨毯は着地に失敗してぐちゃぐちゃになっているからだ。
シュテルはまだ真耶が魔法の絨毯を持っていなかった時に出会っている。だから、絨毯の中が外界とは別離された空間だと知らないのだ。
「フフフ、別に大丈夫だよ。その絨毯はいくらぐちゃぐちゃになろうとも中は無事だ」
「そうなのか……なんだか、心配して損したな」
いや、損したとか言うなよ。心配はしろよ。てか、お前ってそんなキャラだったか?いや、そんなことはどうでもいい。なんでここにお前がいるんだよ。
そうだ、初めから気づくべきだった。そもそもこいつがここにいることがおかしいんだ。だってこいつを俺は呼んでない。
本当に……まじで……なんでこいつはここにいるんだ。いや待て、考えろ。なにか理由があるはずだ。コイツがここに来る理由……
「てか、考える前に聞けば良いか。なぁ、なんでお前ここにいるの?」
「ん?あぁそれはね、勇者が来たんだよ」
「勇者?」
「あぁ。その勇者は急に来て言ったんだよ。ちょうどこの辺りに不思議な力を持った人がいるってな。それで、調査に来ていたらとてつもない魔力を感じたかは急いで来たんだ」
シュテルはそう言って剣を見つめた。真耶は少し微笑むとそうか、とだけ言う。そして、自分の目を元に戻そうとした。しかし、やめた。
なぜなら、目の前に突如として文字が現れたからだ。そこにはこう書かれていた。
【特殊スキル、愛眼、解放しました】
ラブ……アイ……また変なスキルを手に入れてしまった。なんなんだよこのスキルは。もしかして、このスキルのせいで玲奈達がこんな変な感じになったのか?
もしそうなのであれば、スキルをとく必要がある。だが、どうやってといていいのか分からない。
さっきから何度も目を閉じたり開いたりしているが治らない。そんなことを考えていると、あることに気がついた。
文字に触れられるのだ。真耶はその文字に触れてみた。すると、文章が見えてきた。
フムフム、なるほど。この愛眼にはどうやら能力が2ついるらしい。
1つ目は相手を自分にメロメロにさせる。
この能力は名前からわかることだろう。愛と名前に着いているのだ。愛されるというのはだいたい予想が着く。
だが、もう1つの能力、これはよく分からないな。どうしてそうなるのかも分からなければ、なぜこの目なのかも分からない。
2つ目の能力は、自分の心臓を強制的に動かすことだ。止めることも出来るらしい。だが、この力は全く愛とは関係がない。
「まぁいいや。とりあえずこの2人をどうにかしてくれないかな。引き離すとかさ」
「いや、もぅ無理だ。ちっさい女の子が君のズボンの中に侵入してしまった」
「あーそれはやばいね。でも、傷口に侵入されなくて良かったよ」
「それはそれでやばいな。だが、もぅ俺の力ではどうにもならん。彼女は君の姉か?君の姉なんかズボンを脱がそうとしてるぞ」
そう言われて下を見ると、確かに脱がされそうだ。多分これは愛される能力のせいだろう。俺の事を愛しすぎるが故に子供を作りたくなったとかそんな感じだと思う。
「ま、このままにしておくのも気が引けるし普通に良くないか」
ここはあれを使うか。
真耶は玲奈とリルの首元を見た。そして、素早い動きで玲奈とリルの首元に手刀を決める。これぞ、秘技トン、だ。
玲奈達は真耶によって気絶させられ無力化した。そのすきに真耶はその場から離れる。そして、自分の目の魔力を別の場所に移した。すると、目は元に戻る。
「よし、治ったな」
真耶は小さくそう呟いた。そして、この目について詳しい情報を見る。
愛眼……相手に愛されるようになる。心臓を強制的に動かしたり止めたりできる。そして、解放条件は……
「ハハ……解放条件が死ぬことって普通無理だろ」
しかも、下にこの目の説明が書いてある。そこに書いてあったのは……
「愛に飢えた者にのみ解放される。……愛を求める目……か」
真耶はそれを見て小さく笑った。
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