第80話 次のステップへの準備
「っ!?……これは?」
「とぼけるなよ。あんたもわかってんだろ」
真耶がそう言うと、お兄さんは少し殺気を強める。真耶はそれを確認すると、少し戦闘態勢をとった。
「……お前は俺と戦えない。戦ったらダメなんだろ」
「……何故それを知っている?」
「神眼を舐めるなよ。あらゆる情報は筒抜けだと思え」
真耶はそんなことを言う。おそらく、今真耶と博識のお兄さんの間では高度な駆け引きが行われているのだろう。
しかし、奏達は一体何を話しているのか2回できなかった。いや、それだけじゃない。博識のお兄さんがなぜここにいるのか、なぜあのボタンに反応したのか、それすらも分からなかった。
「ねぇ、そもそもなんでここにあなたがいるの?」
奏は素朴な疑問をなげかけた。それに対し真耶は、少し微笑むと説明するかのように語り始めた。
「……フフッ、簡単な話だよ。こいつ自身はただの魔力の塊。肌や服の色は光魔法で見え方を変えてるだけだ」
真耶はそう言って静かに奏を見た。真耶はルーナに視線を戻すと、話し足りないかのように話を続ける。
それからしばらく真耶の説明は続いた。そして、だんだん長い話がめんどくさくなっていき、奏達は真耶の頭を殴った。
「……」
真耶は殴られたせいで意識を失った。そして、博識のお兄さんは静かに真耶に魔法をかけ始めた。
「……ごめん。彼がどれだけ強いか試したんだけど、まさかここまで俺の事を知っているとは思わなかった。作戦っていうか、やりたかったこと全部見透かされていた」
「別にいいよ。ただ、ちゃんと治してね」
奏は静かにそう言って微笑んだ。
━━それからしばらく時間が経った。傷を治し終えた博識のお兄さんは奏達に別れを告げて消えていった。そして、奏達は真耶が起きるまで絨毯の中で過ごすことにした。
「……まーくん起きないね」
「本当ですね。普段ならここら辺で起きるのに」
「いや、普通に考えたら当たり前か。まだ2時間くらいしか経ってないもんね」
そんな会話をする。そして、奏は真耶の剣に目をやった。その剣からは波動が溢れだしている。
「まーくん……」
多分、この剣が真耶に災難を連れてきているのだろう。奏の頭にはそんな考えが浮かんだ。だからといってこの剣を捨てることは出来ない。
そもそも、もし今玲奈が攻めてきた場合奏が迎え撃つ必要がある。だが、今の奏に倒せるかと言うと、十中八九無理だろう。
だとしたらこの剣は奏達全員が使いこなせるようになっておかないといけないわけだ。だが、どういう訳かこの剣は触れられない。触れようとすると、波動に阻まれてしまう。
「もぅ!本当に不思議なことばかりだよ!」
奏は突然叫び出した。そのせいでルーナ達は驚いてしまった。
「あ、ごめん……」
「もぅ!びっくりしたじゃないですか!」
「か、カナデ様……ど、どうしました……!?」
皆は心配して焦っているようだ。そのせいで罪悪感がすごい。奏は罪悪感に前着れなくなってその場で皆に土下座をした。
「ご、ごめんなしゃい……」
そんな奏を見て皆は慌て出す。そして、何とか辞めさせようとするが奏はやめようとしない。
「うぅぅぅ……」
「何してんの?」
突然真耶の声が聞こえた。真耶が寝たところを見ると、何と真耶が起きていた。真耶の体を見ると、傷はほとんど修復していて目立った外傷は無い。
とてつもない再生力だ。皆は頭の中でそう思う。そして、真耶に抱きついた。
「おいおい。何泣いてんだよ」
真耶はそう言いながら優しく微笑む。そして、皆の頭を優しく撫でた。皆はそれが気持ちよかったのか、猫のように甘えてくる。
「……あ、そう言えばなんだけどさ、まーくんはこれからどうするの?」
「なんだ?唐突だな。……そうだな……」
真耶は自分のステータスプレートを見た。そして、不敵な笑みを浮かべると奏の頭をわしゃわしゃと撫でて言った。
「俺は……玲奈を倒す!」
「っ!?……本当に倒すの……!?」
奏はその答えを聞いて思わずそう聞く。そして、真耶に飛びつき叫ぶ。
「本当にお姉さんを倒すっていうの!?それって殺すってことだよね!まーくんはお姉さんのことが好きじゃないの!?」
「好きだからだよ!でも、今の姉貴はもう俺の知ってる姉貴じゃない!だったら……せめて、俺の知ってる優しい姉貴のまま終わらせたいんだ……」
真耶の言葉はその場の皆の心に深く突き刺さった。そして、真耶は少しだけ笑顔になるとかその場に立ち上がった。
「それに、どうやら博識は俺に玲奈を倒して欲しいらしい。プレゼントも貰ったしな」
そう言って不敵な笑みを浮かべる真耶の目の前には文字が浮かんでいた。
【特殊スキル、天眼、星眼、世界眼、解放しました】
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