表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブオタクの異世界戦記  作者: 五三竜
80/181

第79話 博識スキル

 その空間には炎の音がパチパチとなる。そして、その炎は黒く真耶達を暗黒へといざなっていた。


 真耶は界を倒すと自分の体を元に戻す。すると、さっきまで明るかった場所が暗くなっていき、真耶達は闇に囚われてしまった。


「”……ゴッドフェニックス”!!!」


 炎の中からそういう声がする。そして、そのすぐ後に炎の不死鳥が飛んできた。


 その不死鳥は黒い炎に穴を開ける。そして、その穴から真耶達は絨毯に乗り脱出した。


 真耶は脱出するなり絨毯のコントロールが上手くいかなくなり墜落する。そのまま墜落した衝撃を殺しきれずに真耶は100メートルほど飛ばされた。奏達は中にいたため飛ばされることは無かった。


「まーくん!」


 奏は慌てて絨毯から出る。そして、すぐに真耶の元に駆け寄った。真耶はこれまでのダメージもあってか、頭から血をダラダラと流して気絶している。それに、腕の骨が反対に曲がっていた。だがそれだけでは無い。数えだしたら終わらないほど怪我をしていた。


 奏はすぐに真耶に回復魔法をかける。しかし、あまり得意ではないせいか、真耶の怪我は治らない。


 遂に、真耶から魔力を感じられなくなった。恐らく、絨毯を動かすのもギリギリな程に魔力を消耗していたのだろう。だから、今ので完全に魔力が切れてしまったのだ。


「そんな……頭が切れてる。血が止まらないよぉ……それに、私の力じゃ治せない……!」


「カナデ様!」


 後ろからフェアリルの声がした。振り返ると全員いる。皆絨毯から出てきたらしい。皆は真耶を見ると、目を見開いて絶句した。


「そんな……マヤ様……!」


「マヤさん!死なないで!」


「そうだ……」


 ルーナは何かを思いついたかのように呟くと、目を閉じて念じ始めた。


「どうしたの?……あ!」


 奏も、何かを察して静かになる。静寂に包まれる中ルーナは念じた。


(お願いします!教えてください!マヤさんを助けるにはどうしたらいいんですか!?博識様!)


 ルーナはそう念じる。詠唱もせずにそう願った。すると、突如頭の中にお兄さんが現れた。そのお兄さんは少し微笑むと、とてつもない光を発した。


「キャッ!」


 ルーナは思わず目を隠す。そして、次に目を開けると目の前に博識スキルを使った時に現れるお兄さんがいた。


「一体何が……?」


「誰!?あなた一体誰なの!?」


 奏の声が聞こえる。思わず奏の方を見ると、かなり慌てているようだ。それだけじゃない。全員驚いて言葉を失っている。


 その時ルーナは気がついた。自分が目を開けていることに……


「なんで!?」


「……フフッ、君達じゃ、この少年……断りを変える存在を守りきれないと思ったからだよ」


 そう言って魔法を発動する。それは、魔道士が12人ほど束になって発動する大規模回復魔法、”リターンズライフ”だった。


「すごい……大規模回復魔法を無詠唱で……」


 奏達は、その魔法を見て感心する。そして、真耶の体の傷はある程度無くなった。


「すごい……」


 ルーナは思わずそう呟いた。博識のお兄さんはクルッと振り返るとルーナの元まで歩いていく。そして、ルーナの首を絞めた。


「っ!?何するの!?」


「何って、お仕置きだよ。この子は理を変える存在を守りきれなかった。これは重罪だ」


「っ!?理を変える?一体何を言ってるの!?」


「彼の力はこれからの戦いで必要となる。だから、ここで死なせる訳にはいかないのだよ」


 そう言ってルーナに向き合った。そして、ルーナの首を絞める手の力を強めていく。そのせいで、ルーナの顔はどんどん青ざめていった。


「ルーナを離して!」


「無理だ。これはこの世の理……約束を守れないような者には罰が下される」


 そう言って、さらに力を……強めることは出来なかった。


「手を離せよ。俺の女に手を出すことは、誰であろうと許さない」


 真耶はそう言って博識のお兄さんの右腕をもぎ取った。そして、目から血を流しながら睨みつける。


 博識のお兄さんはそれを見ると、少し微笑んで右腕を再生させた。真耶はそれを見て魔法を使う。


「やってくれたな。俺の傷を半分も治さなかったな」


「まぁね。こうなることも予想していたからさ」


 そう言って真耶に向かって手を突き出してくる。恐らく魔法を打つつもりだろう。もし今魔法を打たれたら恐らく防げない。


 しかも、下手な動きをすれば傷が広がってしまう。それに、今の動きで既に傷は開いてしまった。


 これ以上はもう耐えられないだろう。だから、次の攻撃は防ぐという選択肢は無い。それ以上の攻撃で打ち消す他ない。


「次打てば殺す」


「すごい殺気だね。打ってみていいかな?」


「……もう一度言う。次打てば殺す」


 真耶はそう言って博識のお兄さんを睨みつけた。博識のお兄さんをとてつもない殺気が襲う。


「”ゴッドフェニックス”」


 博識のお兄さんは容赦なく放った。奏が放つ炎の不死鳥とは比べ物にならない大きさの炎の不死鳥が真耶を襲う。


 真耶はその炎の不死鳥を静かに見つめた。そして、左目から血を流しながら魔力を溜める。そして、静かに呟いた。


「”吹っ飛べ”」


 そう言うと、炎の不死鳥と共に博識のお兄さんは吹き飛ばされていった。真耶はそれを見ると、静かに立ち上がって左目から流れ落ちる血の涙を拭った。そして、左目に太極図を浮かべながら静かに語る。


「俺の邪魔をするな。”これは命令だ。今すぐ死ね”」


 そう言うと、左目の太極図が光を発する。そして、博識のお兄さんの胸に太極図が現れた。そして、急に博識のお兄さんの目から光が無くなる。


「了解」


 そう呟いて、自分の手で心臓を握りつぶした。


「っ!?」


 その光景を目にして皆は言葉を失う。紅い液体が真耶の頬に飛んできた。鉄のような匂いがする。気がつけば、足元は真っ赤に染まっていた。


「……フフフフフ……アハハハハハハハ!……そんなことで騙されると思うなよ」


 真耶は博識のお兄さんに向かってそう言った。すると、博識のお兄さんは真耶と向き合う。胸の傷は既にほとんど治っていた。


「……よくわかったね」


「俺に通用すると思うなよ」


「そのようだね」


 2人は短い会話しかしないのに、殺気は強まっていく。そして、最後には博識のお兄さんが胸の傷と心臓を治した。


「さすがだな。これをくれてやろう」


 真耶がそう言うと、博識のお兄さんはさらに笑顔になる。真耶はそれを見て博識のお兄さんにあるボタンを渡した。

読んでいただきありがとうございます。感想などありましたら気軽に言ってください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ