第7話 精霊族の脅威
4人はその場を動かず見つめ合う。精霊族の2人は奏とルーナを魔法の檻で閉じ込め武器を構えた。その時、葉っぱが都合よく落ちてきた。そのヒラヒラと落ちてきた葉っぱは地面に着く。
「っ!?」
先に動いたのはクロエだった。クロエは真っ先に剣で斬りかかる。
「我を殺そうとするか・・・”ウインドストーム”」
そう唱えると、竜巻が現れた。
「我は風使いの精霊、ウィンドだ」
そう言って3つの竜巻を作り出した。
━━真耶達は、2人で戦わずクロエの方を見ている。
「あっちは始まったみたいですね」
「どうする?こっちも始めるか?」
「良いんですか?あなたじゃ小生には勝てませんよ」
そう言って本格的に笑う。真耶は普通に面白くないから笑わない。何それ、精霊ジョークなの?とか思いながら笑う目の前の男に目をやった。
「あはははは!小生に勝てるわけもありませんよ!小生に弱点などないのですから!」
そう言って地面に何か鉄のようなものをばらまく。それだけで能力の大体はわかった。
「それなら対処は簡単だな・・・」
そう呟いて、地面から生えてきた鉄の棒を全て避ける。
「小さな鉄を大きくする。物体の大きさを変える魔法か」
真耶はそう呟いて地面に手をつける。相手が地面の中を使うなら、出られなくすればいい。そう思って地面を固めた。そして、鉄の棒を1つ折り剣を作る。
「流石ですね」
男はそう言うと地面を突き抜いて鉄の棒を生やした。どうやら自分の前にトラップを仕掛けていたみたいだ。
「まずいね。じゃあ、これはどうだろうか」
そう言って地面を鋭いトゲに変える。しかし、全て鉄の棒で防がれてしまった。
(本当におかしな魔法だ。まるで俺達がここに来ることが前提のように仕掛けられている。それとも、今仕掛けたのか?だが、地面の材質を変えれば俺が気づかないはずがない)
そんなことを考えていると、再びあの攻撃がくる。それをバク転で避ける。やはり、地面になにか仕掛けがあるようだ。
「フフフ・・・どうしましたか?もう終わりですか?」
男はそんなテンプレなことを聞いてくる。
「仕方ない。”物理変化”・・・どこまでいけるか試してみるかな」
「・・・ん?何かおかしいですね・・・体が揺らいでいる・・・?」
「水の状態変化さ。個体は融点を超えると液体になる。俺はそれを融点を超えずに個体そのものを液体に作り替えた。今の体は液体だってことだ」
そう言って真耶は自分の腕を落とす。しかし、血は出ない。やはり液化しているようだ。
(再生は出来ない。失えば戻ってこないということか・・・)
真耶は目で見て色々調べた。情報が多いため分かりにくいが、だいたいわかったし慣れた。真耶は足元を気にすると、前に走り出した。水が少しずつ無くなる。ま、足りなくなれば補充すればいいだけだ。
「どんな体になろうと、小生の攻撃は防げませんよ!」
そう言って再び鉄の棒を地面から生やす。それらは一斉に真耶へと襲いかかったが真耶は気にせず進む。
「別に防ぐ必要は無い。どうせ当たっても・・・」
そう言ってぶつかると、真耶の体を突き抜ける。しかし、特に支障はない。
「・・・水だから支障はない」
そして、鉄の棒を全てくぐり抜け間合いに入った。
「馬鹿ですね!水だったら攻撃も出来ないでしょうに!」
「そういう訳でもないんだよ!」
真耶はそう言って手を斜めに振り下ろす。すると、男の体が斜めに切り裂かれた。
「っ!?」
男は何が起こったのか分からないと言った感じで後ずさる。それを見た真耶は不敵に笑うと右手を突き出して言った、
「この手は水と何も変わらない。だから形を変えることは造作もない」
真耶はそう言って右手の形を元に戻す。
「だが、形を変えただけでは斬ることは出来ないだろ!」
「水のままだと切れないが、鉄に変えれば斬ることは出来る」
「っ!?」
男は話を聞いて黙ってしまった。真耶はそれを見て再び手の形を変える。そして、足に力を込め間合いを詰めた。
「これで勝ちだ」
そう言って手を突き出す。しかし、真耶の手は届く前に切り落とされてしまった。
「っ!?」
すぐにその場を離れ、ウインドと名乗った男の方に目をやった。すると、クロエが倒れているだけでウインドはいない。
「やってくれたな」
「残念でしたね。小生も強いですが、ウインドも強いのですよ」
そう言って2人は剣を構える。
「”物理変化”」
真耶は地面に手を付き魔法を唱える。地面が盛り上がり鋭い棘となり2人を襲う。
「”ウインドウォール”」
風の壁が作られた。壁の風は棘を細かく刻み防いでしまった。
「万策着きましたか・・・では、小生の勝ちとして終わらせて頂きましょうか」
「・・・いや、まだあるよ・・・」
真耶はそう言うと再び地面に手を着いた。そして、地面を盛り上がらせる。
「だから無駄だって・・・言って・・・」
男の言葉が止まる。それもそのはず。真耶は地面を盛り上がらせると、水に変え大波を作り出したのだ。大波は2人を飲み込むと落ち着きを取り戻していく。
「はぁ・・・まじで魔力が減った気がするのだが・・・」
そう言って手を離す。そこにはもう精霊族はいなかった。奏とルーナの檻が消える。
「まーくん!一体何が起こったの!?」
「地面が波打った」
「・・・嘘なんてつかないでよ。いじわる・・・」
奏は呆れた顔でそう言った。だが、確かに嘘っぽいが嘘では無い。真耶は地面を液体に変化させた。そして、神眼で地面のエネルギーを振動へと変化させ大波を作り出したのだ。真耶は2人を飲み込んだ地面を元に戻すと落ちている自分の手を拾った。
「”物理変化”」
自分の手がくっついた。少し振り回してから手首を鳴らすと2人の元へ戻った。
「まーくん大丈夫!?」
「マヤさん、どこかおかしなところはありますか!?」
「大丈夫だ。だが、力がいつもより入りづらくなっている気がするのだが・・・何かわかるか?」
真耶は手をグーパーしながら聞いた。すると、2人は少し悩む素振りを見せると言った。
「多分・・・急に大量の魔力を使用したからだと思うよ」
「魔力は使いすぎると魔法が使えなくなるだけじゃなくて、体に異常をきたすことがあります。特に魔力を一気に使用すると、気だるさなどを感じるそうです。ステータスプレートで確認できますよ」
ルーナがそう言うので見てみると確かに書かれていた。さらに、今の魔力量が元の数より減っている。
(最初が???だったのは単に入り切らなくて表記されなかったのか。だから減って表記されるようになったのか)
ちなみに、現在の残りの魔力量は900万程度である。どうやら、さっきの魔法でかなり使ったらしい。
「じゃあ帰る・・・っ!?」
真耶が帰ろうと足を進めると地面から物音がすることに気づいた。真耶は慌てて2人とクロエを掴みその場を離れる。その数秒後に精霊族の2人が地面から飛び出してきた。
「なっ!?まだ生きてたのかよ!?しぶといな!」
「あれくらいで死ぬほど弱くない」
「我らを舐めないで欲しいな。”ウインドショット”」
「チッ!いきなりか!」
そう言って地面に手をつけた。地面が盛り上がり壁が出来る。ウインドが放った風はその壁に当たると壁を壊したが勢いは無くなった。
「やっぱり埋めるだけじゃダメか・・・」
(奏とルーナは連れて逃げれるが、クロエまでは無理だ。ここで倒す他ない・・・)
「私達はここらで引かせて頂きたいのですが、ダメですか?」
男がそんなことを言ってきた。もちろんこちらとしては願ってもないことなのだが、どうも怪しい。
「・・・」
真耶は目の前の男達を見つめて小さくため息をついた。
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