第76話 3度目の襲撃
「っ!?」
一体何が起こったのか、真耶には理解することが出来なかった。いや、理解したくなかった。なぜなら目の前で、学園を燃やす玲奈がいたからだ。
「……くん……まーくん!行かないと!何が起こってたのか分からないけど、今はまーくんしか何とか出来ないよ!」
「あ、あぁ、そうだな。お前らはこの学校のヤツらを避難させろ」
真耶はそう言って学園の中にいる玲奈の元まで飛んだ。奏達は、病み上がりの奏を気にしながら学園の中に入っていった。
「おい、玲奈」
真耶は玲奈の後ろに達そう言った。玲奈は待ってましたと言わんばかりの笑顔で振り返ると手を突き出してきた。どうやら殺る気らしい。
真耶も、何時でも魔法を使えるように構える。
「ふふふ、まさか真耶がこの学校にいたなんて。運命すら感じるわ」
「黙れ。勝手に乗り込んできやがって。しかも、黒い炎……地獄の炎か?」
「えぇ、そうよ。まぁ、この技も大小はあるんだけどね」
「代償か……俺も散々味わったよ。もうコリゴリだな」
皮肉を込めた声で玲奈に言う。玲奈はその会話が少し楽しいのか不敵な笑みを浮かべた。
まぁ、真耶からしてみれば何も楽しくないのだがな。
そもそも、女体化したらあんなに性格が変わるなんて思ってなかったからな。あそこまでMになったらもうトラウマでしかない。
「ま、なんでもいいけど帰ってくんないかな。邪魔なのよ。私は真耶を傷つけたくないの」
「それはこっちのセリフだね。あと、傷つけたくないならなんでこの学校にこんなものを打ち込んだんだ?」
「めんどくさいわね。もう死んで。”インフェルノフェニックス”」
玲奈は突如態度を変え、黒い炎の不死鳥を作り出した。黒い炎の不死鳥はものすごい速さで真耶へと迫ってくる。
「おいおい、さっきと言ってること真逆だぞ。”物理変化”」
真耶はそう言って炎の不死鳥を作り出した。そしてその不死鳥は、玲奈のはなった黒い炎の不死鳥とぶつかり激しい爆発を引き起こした。
真耶と玲奈はそれぞれ弾き飛ばされる。そして、玲奈は外壁に、真耶は校舎にぶつかり止まった。
「クソ……なんつー威力の魔法だ……!」
真耶は、そんなことを言いながらその場に立ち上がる。その背中は血で真っ赤に染っていた。さらに、校舎はかなり壊れたのか、パラパラと瓦礫が落ちてくる。
「……っ!?」
突然殺気を感じた。真耶は全力で背中を反らす。すると、その真上を黒い炎の槍が通って行った。
その炎の槍は、壁に当たるなりすぐに壁を燃やし始める。そして、休む暇もなく杭のようなものが飛んできた。真耶はそれも素早く避ける。そして、1度その場から距離をとった。
「真耶、逃げてばかりじゃ私を倒せないわよ」
「気を伺ってるだけだ。いずれは俺が勝つ」
「……ふーん、まぁいいわ。今日はあなたと戦うつもりじゃなかったの。この子と戦っておいて」
玲奈はそう言って体を炎で包んだ。その炎は玲奈の体を覆い隠していく。そして、玲奈は消えた。
「逃げたか……一体何をしに来たんだよ」
真耶はそう呟いた。そして、その時だった。突如目の前に謎の男が現れたのは……
「っ!?誰だ!?」
「フフフ……私は月下の奇術師、魔導騎士だ!そして、それは表の顔……裏の顔は、月夜に舞う闇の支配者、怪盗だ!」
「マジックナイト?……て、お前、謎目木界じゃねぇか」
何がマジックナイトだよ。どこからどう見ても怪盗じゃねぇか。
真耶はそんなことを考える。そして、表も裏も怪盗のマジックナイトは不敵な笑みを浮かべてこっちを見てきた。
「フフフ……君に1つプレゼントをあげよう」
そう言って手をあげた。そして、何度か裏返す。3回目に裏返した時に、それは起こった。
界の手にはナイフが現れたのだ。だが、現れただけならどうにでもなる。だが、そのナイフが現れた時には真耶の胸にはナイフが刺してあった。
「っ!?」
胸に痛みが遅れてやってきた。しかし、そんなことを気にしている暇は無い。ナイフを引き抜き魔法で胸を治す。そして、すぐにその場に落ちていた石を拾い、魔法で形を変えた。
「喰らえ。”ゴッドフェニックス”」
「おっと危ない。急に攻撃してくるなんて危ないなぁ」
「いや、それはお前な。死ね。”物理変化”」
真耶は空気中に漂う原子を炎に変える。そして、その炎は界を覆い隠した。
「残念だったね。どうやらその技は私には通用しなかったらしい」
「……」
界はそう言って無傷の体を見せつけてきた。確かに、体には傷がないし服にすら傷は着いていない。それどころか、ホコリ1つ着いてなかった。
「……ま、そうなるよな」
……謎目木界……職業は奇術師と怪盗の2つ持ち。この世界ではかなり珍しいが、恐らく怪盗という職業に着いた時にもう1つ職業を手に入れられるのだろう。その証拠に、特殊スキルにスパイがある。
そもそも、神眼スキルで確認した感じでは特に強そうでは無い。だが、それはステータスが強くないだけ。コイツの強さは異常だ。それに……
「デウスエネルギーか……」
「おぉ!デウスエネルギーを知っているのか!?君はすごいな!」
「褒められても嬉しくねぇよ。めんどくさいことしやがって。”物理変化”」
真耶は魔法を発動した。すると、空気がどんどん渦を巻いていき巨大な竜巻が発生する。しかし、その竜巻も瞬く間に消された。
「君!こんなものが私に通用するとでも!?」
「……いや、目的はそっちじゃない」
真耶がそう言うと、空から剣が降ってきた。真耶はそれを掴むと背中に装備し、鞘から剣を抜く。
「それはなんだい?そんなもので私に勝てると思ってるのかい?」
「まぁな。これは、覇滅瞳剣アルテマヴァーグ。俺の愛刀だ」
その言葉と共に、刃から波動が溢れ出した。
「それが君の愛刀か。どんなに強い武器でも、当たらなければ意味は無いぞ」
「逆に、どんなに強くても、当たれば一撃だ」
真耶はそう言って剣を横に振り払った。すると、剣先から高密度に圧縮された波動が放たれる。その波動は界に当たると界の体を真っ二つに切り裂いた。
しかし、界の体から血が吹きでなかった。代わりに煙が出てきた。
「ちっ、フェイクか」
「残念、本物はこっち」
後ろから声が聞こえた。真耶は高速で振り返り、剣を振り払う。しかし、そこに界はいなかった。
真耶は少し戸惑ったが、すぐにその場を離れる。すると、その数秒後に真耶のいた場所に光線が降ってきた。
「凄いね。良くそれを避けたね」
「まぁな。それだけさっきを放てば、誰だって避けられるさ。不意打ちってのはもっと静かにやるものだぜ」
「どういうことだい?」
「こういうことさ」
そう言って真耶はてを天に掲げた。そして、手を一気に振り下ろす。
「……?」
しかし、何も起こらなかった。雷が降るとか、光線が降り注ぐとかもなく、なんにも起こらなかった。
「ハハハハハ!一体なんだったんだい?そう言う遊び……っ!?」
界は突然言葉を止めた。そして、急に動かなくなる。
真耶はそんな界の目の前まで歩いていき、首を掴んで持ち上げた。
「う……クッ……」
「これが不意打ちだ」
そう言って真耶は界の首をへし折った。そして、その場に捨て離れる。すると、界の体は縦に真っ二つに切り裂かれた。
真耶はそれで界が絶命したのか確認すると、確実に絶命していた。それを知った真耶はその場に立ち尽くし、不敵な笑みを浮かべた。
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