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モブオタクの異世界戦記  作者: 五三竜
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第75話 説得からの最速の卒業

 ガチャりという音と共に扉が開いた。そして!真耶は中に入る。すると、いきなりナイフを突きつけられた。


「えぇ!?な、なんで……!?」


「動かないで」


 先生はそう言って体をまさぐる。真耶は不思議に思いながらも、動かずに待った。少しこしょばいし、触ってるところが悪いからか、少し恥ずかしいがそれも我慢した。


「ふーん、暗器は持ってないみたいね。いいわ、そこで裸になりなさい。そして、土下座しなさい」


「なんでですか!?」


「あなたが私を襲わないと決まった訳ではないからよ」


 その言葉に真耶は呆れて何も言えなくなってしまった。しかし、先生がナイフを首元まで持ってきたので仕方なく言うことを聞いて、服を脱ぎ始めた。そして、その場に土下座をする。


「こ、これで良いですか?」


 真耶は顔を真っ赤にしながらそういう。先生は真耶の体をじっくり見つめると、体の色々な所を引っ張った。そして、手、足、腕、太もも、お腹、背中、お尻を棒で力いっぱい叩いてきた。


「いだぁい!な、何するんですか!?」


「ふーん、暗器はないみたいね」


「だからないって言ってますよね!」


 そう言うが、先生はまだ疑いの目を向ける。これは見せた方が早いかもしれない。てか、早く男に戻りたい。なんだか性格が変わってきた気がする。前ならこんなことで恥ずかしがったりしなかったし、こんなヘマもしなかった。それに、痛いのが快感だと思うこともなかったし、慌てたり叫んだりもしなかった。


 ……もう女体化するのはやめよう。自分が自分じゃなくなってきた気がする。


「先生……もぅ良いです。ここって魔法を使ってもいいですよね」


 真耶はそう言って立ち上がった。


「あぁ?別にいいぜ。なんせここは魔法を使う場所だからな。そんなセンサーをつけてたら面倒だろ。それより、急に雰囲気が変わったな。どういうことだ?」


「……フフフ、変わったんじゃない。戻ったんだ。”物理変化ぶつりへんか”」


 真耶の体が光を帯び始めた。その光は一瞬だけ明るくなると、すぐに収まり始めた。そして、その光の中から出てきたのは、服を着て男の体となった真耶だった。


「っ!?どういうことだ!?」


「これが俺の本来の姿だ。俺は月城つきしろ真耶まや。冒険者で、男だ」


 先生は突然変貌した真耶の姿に絶句した。しかし、真耶はそんな様子の先生を横目に話を続けた。


「騙して悪かったな。どういう訳か、女体化すると性格が変わってしまうんだ。人格とかもな。二重人格とでも思ってくれ。それでなんだがな、早速だが先生には呪いを解いて欲しい」


「……デウスの呪いか?」


「あぁそうだ。俺の大切な人がデウスエネルギーを体に取り込み呪いにかかった。俺は適応したんだがな」


「何!?適応しただと!?」


 先生は目を見開き驚く。真耶はそんな先生を見て右手を突き出した。そして、デウスエネルギーを放出する。すると、真耶の右手がピンク色の光に包まれた。


「デウスエネルギー……なんでその力にこだわったんだ……私にはわかる!あんたはそんな力がなくても十分強い!その力にこだわる必要はなかったはずだ!」


 先生はそう言って涙を流した。たしかに、デウスの力にこだわる必要はなかった。普通の敵と戦うだけなら。


「何か訳ありって感じだな」


「まぁな。そもそも、なぜ先生はデウスの呪いについて知っていたんだ?」


「……」


 真耶の何気ない問いに、先生は黙り込んでしまった。そっちこそ訳ありみたいだ。


「深くは聞かん。そんなことより、デウスの呪いを解いて欲しい」


「あんたはあの国のヤツらじゃないみたいだね」


「あの国がどの国かは知らないが、多分俺の考えてる奴らと一緒だろう」


 先生はその言葉を聞いて少し顔を俯かせた。そして、奥から何か持ってきた。それは小さな瓶に入った青色の水だった。


 先生はその水を周りを確認しながら真耶に渡す。真耶はそれを受け取ると、すぐにポッケにしまった。


「これは、デウスの呪いの解呪薬だ。誰にも見つかるんじゃないよ」


「フッ、了解した」


「これからあんたはどうするの?」


「この学校を辞める。そして、皆の元に戻る。先生、名前は?」


「メディムだ。……ところで、誰が私を推薦したのだ?」


「……フッ、どうせわかってんだろ。クロバだよ」


 メディムはその言葉を聞いて少し驚いた表情をした。そして、少し涙を流し始め顔を俯かせた。


 真耶はそんなメディムにハンカチを投げ渡すと、魔法を唱えて体を女の子に変えた。


「……こっちの体になると、どうも人格が歪むなぁ」


「フッ、どちらかと言うなら、そっちの体の方が優しくていいと思うぜ。男の時は、どうも殺気が漂っている気がしたからな」


 そんなことを言ってため息をついた。マヤは着替え終わると扉のところまで歩き、振り返った。


「気がしたんじゃないですよ。漂わせていたのですから」


「ほらやっぱり、そっちの方が性格が良い」


 真耶はその言葉だけ聞くと、部屋を出た。そして、すぐに校長室に向かった。


 ━━それから20分後……


「何とか辞めれたな。にしても、あんなに泣きつかれるとは」


 真耶はそんなことを呟く。なぜなら、辞めると言った時に何故か異常な勢いで止めてきたからだ。


 どんなに言っても辞めさせて貰えなかったので、自分は男だと言ったら、それでもいいとまで言われた。だが、自分にはやるべきことがある、俺がいるとこの学校が危ない。そういうと、渋々卒業という形で辞めさせてくれた。


 そして、真耶は急いで学校の外に出た。あることに気がついたからだ。校門の傍にはテントがあった。中を見ると、ルーナ達がいる。ルーナ達はみんなでカードゲームのようなものをしていた。


「おい」


「……わぁっ!?な、何!?……て、マヤさん!?もう出てきたのですか!?」


「まぁな。俺を誰だと思ってる?まぁいい、奏を今すぐ治そう」


 真耶はそう言って解呪薬を取り出した。ルーナはそれを見ると、収納魔法の中から奏を取り出した。


 真耶は奏をテントの外の広い場所に連れていくと、止めてあった時間を進め始めた。急激に奏の命の灯火が小さくなっていく。真耶はそんな奏の口の中に解呪薬を流し込んだ。


 すると、一瞬で奏の顔色が良くなっていく。


「え?早いな」


 そんなことを呟いてる間に、奏は起き上がった。どうやら、かなり即効性のあるものだったらしい。


「……フッ、おかえり」


「え?あ、え?ど、どういうこと?」


「どういうことでも良いよ」


 真耶はそう言って奏に抱きついた。そして、その真上を黒い影が通って行ったことに真耶達は気が付かなかった。


 そして、その数秒後に学園は黒い炎の海となった。

読んでいただきありがとうございます。感想などありましたら気軽に言ってください。

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