第6話 初のクエスト
真耶の持つ剣はドラゴンへと突き刺さった。しかし、刺さりは浅いらしい。血が出ることもなかったし、ドラゴンは何も思っていない。
「あ、やばい・・・うゔぇっ!」
ドラゴンはしっぽで真耶を吹き飛ばした。真耶はかなり遠くまで吹き飛ばされて岩にぶつかり止まった。
「痛〜・・・”物理変化”」
すぐに起きると傷を治す。そして、すぐにその場の岩の破片を手に取ると、鉄の剣に作り替える。
「さて、どうしたもんかね」
そう呟くと、再びドラゴンに向かって走り出す。そして、剣をかまえた。・・・が、急ブレーキをかけて止まった。
「え?なにこれ・・・」
なんと、急いでいくとドラゴンが小さくなっている。煙が出てどんどん小さくなる。そして、人の形に変わっていく。その煙が収まると、中から人が出てきた。
「人?何者だ?」
「・・・私はドラゴンの騎士・・・」
そう呟いて前に進む。そのため、体全体があらわになる。
「・・・女?」
「・・・あなたのせいで・・・あなたのせいで!」
いきなり攻撃してきた。しかも、何故か薙刀を持っている。
「おい!いきなりなんだよ!?」
「あなたのせいで、私はドラゴンに戻れなくなっちゃったじゃない!」
そんなことを言って斬りかかってくる。言いがかりも程々にして欲しい。全くもって無実だ。しかし、この女性はすごく怒りながら斬りかかってくる。
「クソッ!」
真耶は持っていた剣で防ぐ。その度に甲高い音がなる。
「いい加減に・・・しろよな!」
2人の戦いは激化する。しかし、どうやら真耶の方が劣勢なようだ。それもそのはず、たった1周間前まではゆとり世代の温室ぐらしだったんだ。オタクと言えど、突然実践を強いられてもまともに戦えるはずがない。
「あなたのせいで!」
「何が俺のせいなんだよ!?言いがかりも程々にしろよ・・・うわぁっ!」
真耶は弾かれ地面に倒された。
「もらった!」
「ここで負ける訳にはいかないんだよ!”物理変化”!」
真耶が手を地面につけると、地面が盛り上がり棘となって女性に迫る。しかし、全て壊され地理となると薙刀を振り上げた。
「死ね!」
「・・・フッ・・・足元には気をつけることだな!」
真耶はそう言って手元のツルを引く。このツルは今魔法で作ったものだ。こっそり女性の足元に絡ませておいた。
片足を絡め取られてバランスを崩した女性は後ろに転ける。それと同時に真耶は女性に馬乗りする。そして、胸に左手を置く。
「きゃぁっ!やめ・・・」
「動くな。死にたくないのなら静かにすることだ」
「そんな脅しが通用するとでも・・・?」
女性がそう言うと、真耶は優眼を発動し右手の骨を針のように尖らせ手のひらから突き出す。
「優眼!?・・・やはりあなたは精霊族・・・それに、錬金術まで・・・」
「何、お前はこの目を知ってるのか!?」
真耶はそう聞いた。それに対して女性は不敵な笑みを浮かべると言った。
「私を離してくれたら教えてやっても良いわよ」
そう言って見つめてきた。真耶は少し見つめると、静かに手を離しその場から離れた。
「それで、お前はこの目について何を知って・・・」
振り返ると、女性が背中に隠してあった剣を握り斬りかかって来ていた。真耶はそれを難なくかわすとその手に触れる。そして、そのまま押すと女性の腕がちぎれた。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!腕が!腕がぁ!」
女性はその場に倒れ込み右手を抑える。その手は食いちぎられたような傷跡になっている。真耶が物理変化を使ってちぎりとったようだ。
「やるよ。それはお前の右手をまとめた残骸・・・要するにお前の腕だ」
そう言って肉片を投げる。そして、もう一度馬乗りをして左手を胸に置いた。
「いいから話せ。この目はなんだ?何故俺を殺そうとする?」
「言わない・・・!殺せ!」
女性はそう言って目を閉じた。殺してもいいが、情報は欲しい。真耶は右手を女性の左腕につけると、魔法を唱える。
「がぁぁぁぁぁぁ!いだい!やめて!あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
真耶は左手から手を離していく。すると、中の骨が皮膚を突き破り出てきた。
「死ぬより苦しい痛みを味あわせてやる。それが嫌なら話せ」
「うぅぅ・・・私・・・は、屈しない・・・!」
「神経は魔力で繋げてある。この骨を折ったらどんな痛みなんだろうな?」
真耶がそう言うと、女性は涙を流し始めた。そして、わかった、と小さくつぶやくと話し出した。
「私は龍人族で、父はその長だった。ある日、精霊族の1人がやってきて龍人族の1人を殺した。それを抗議しに行った人達も殺されて、精霊族はその事で私達に話をしに来たんだ」
女性は泣きながら続ける。
「自分達が襲われたからやむなく殺した。これは我が国への宣戦布告だと取って貴様を処刑する。精霊族の長はそう言って父を殺した。だが、それだけじゃ飽き足らず龍人族の虐殺を始めたのだ」
その言葉を聞いて、真耶は驚いた。
(何それ・・・精霊族って、もっとファンタジーじゃ優しい存在だろ。普通善だろ。ゴリゴリの悪じゃねぇか)
そんなことを考えていると、女性がさらに続けた。
「私はなんとか逃げきれたが、皆殺された」
「ちょっと待て、それと俺のなんの関係がある?」
「精霊族には特徴があって、皆同じ目を持つ」
なるほど、そういう事か。
真耶はそう思った。そして、女性が言ったことは真耶の予想と同じことだった。
「あなたの使ってる優眼・・・それは精霊族特有の目なんだ!あなたは精霊族で私の父を殺した仇なんだ!」
「・・・」
(いや、仇なんだ!とか言われても、俺は精霊族じゃないから全く関係ないだろ。だが、妙だな。なぜ、精霊族しか使えない目を俺が使えるのだろうか・・・)
真耶は黙ってしまった。なぜなら、目の前の女性は泣きながらも自分を殺そうと殺気を放ってくるからだ。
(それほどまでに殺したいのか・・・)
真耶はその目を見て考え込む。この世界はどこかおかしい。召喚されれば殺されかけ、精霊が悪の塊・・・
「さぁ、殺せ!もう私には用がないのだろう!」
「いいや、殺さない。気が変わったからな。特別にお前の復讐を手伝ってやろうか?」
「っ!?何を言っている・・・あなたのような精霊族には手を借りない!」
真耶はその言葉を聞くと不敵な笑みを浮かべた。そして言う。
「俺は精霊族じゃない」
「信じられない」
真耶が違うと言っても信じて貰えない。どうしようかと悩んでいると、唐突に強大な殺気を感じた。
「っ!?」
すぐに龍人族の女性を掴みその場から離れた。そして、速攻で両腕を再生させる。
「痛っ・・・あ、ありがと・・・っ!?お前は・・・!?」
龍人族の女性は目を見開いて絶句した。真耶も、目の前に現れた2人の男を見て睨む。
「やってくれたな・・・今すぐその2人を話して貰えないかな?」
「それは不可能です。小生はあなたを殺すために来たのですから」
「我も貴殿を殺すように承っておる。死んでもらおうか」
2人はそう言って奏とルーナを人質にとった。真耶はそれを見て少し目を細める。この女を差し出せばいいかもしれない。そんな考えがよぎったが、すぐに消した。
「まぁ、2人を人質にとるってことは俺も殺すつもりだよな」
「よくお分かりで」
そう言って2人は笑う。龍人族の女性はそんな二人を見て殺気を強める。
「おっと、怖いですね。小生も少し対抗しないといけませんかね?」
「知らん。自分で考えろ」
真耶は静かにそう言う。そして、龍人族の女性の前に手を出して突撃するのを防ぐ。
「何をする!なぜ止める!?」
「冷静になれ。それと、名前を教えろ。命令が出しにくい」
「あなたに命令される覚えは・・・」
「じゃあ死ね。勝手に突撃して死ね。俺に迷惑だけはかけるなよ。どうせ、お前1人が何かしたってどうせ何も出来ないんだ。無駄死になだけだ」
真耶は平然とそう言った。それを聞いていた、精霊族の2人や、奏とルーナは少し驚いた表情をする。龍人族の女性は目に涙を浮かべたると俯いて言った。
「クロエ・リ・ヨルムンガンド・・・です」
「クロエか。いい名前だな。早速だが、クロエには右のやつを相手して欲しい。俺は左の方をやる」
真耶がそう言うとクロエは頷く。そして、武器を構える。それを見た向こうも戦闘態勢に入ったようだ。
「さて、この状況でどこまでいけるかね・・・」
真耶は小さく呟いた。
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