第63話 再戦!勇者!
闘技場に着くと、希望達は武器の手入れを始めた。真耶も武器の手入れを始める。
「まーくん、勝てるの?」
「そうですよ。マヤさんはいつも無謀です」
「マヤ様、無茶しないでください」
皆は口々に言ってくる。皆真耶のことが心配なようだ。
真耶は嬉しさのあまり、不敵な笑みを浮かべた。それを見た奏達は少し違う感じの心配そうな顔をする。
「……そんな顔するなって。2回目なんだ。勝てるよ」
真耶はそう言って皆の頭を撫でていく。
それにしても、希望もしつこいな。この執念深さは魔物より上だぞ。しかも、レベル300ってなんだよ。俺なんてまだ1だぞ。
それに、あの武器……絶裂光剣シャイニングリヒト、一体どう言った能力を持っているのやら。
いや、それだけではない。癒優の持っているあのスティック、神童のタクト、彩花の持っている杖、ナイトメアの杖、雷斗の持っている剣、星屑のピアス、どれも神器だ。それに、前の武器と違う。やはり変わっているようだ。
癒優のタクトは神々しいオーラが溢れ出している。先端には何かをチャージするように球体が着いている。
彩花の杖は先端が月の形になっており、やはり神々しいオーラが溢れ出している。それに、虹色になったり透明になったりする布を纏っている。
雷斗のピアスはアダマンタイトでできているみたいだ。それに、すごく軽そうだ。普通、アダマンタイトで作った武器は重たくなる。しかし、軽量化されているというのはあまり見たことがない。
4人とも前より強くなっているみたいだ。もしかしたら手加減しなくても死なないかもしれない。いや、どちらにせよもう手加減はしない。本気でいく。
「マヤ様、無事に帰ってきてください」
「帰ってきたら、皆でパーティしよう」
「良いよ。でも、そのお金は多分俺のなんだろ。勝手に使うなよ」
『……』
全員揃ってだんまりを決め込んだ。こいつら、この人数でこのチームワークは最強なんじゃねぇの。
真耶はそんなことを思いながら闘技場の中まで歩いて進んだ。中に入ると既に希望達はいた。観客の歓声が上がる。
どこからか噂を聞きつけた人達が来たらしい。はた迷惑な奴らだ。もしこれで俺の技とかこいつらの技が飛んでいっても文句言わないで欲しいな。
「真耶!本気でいく!」
希望がそう叫んで戦いのゴングはなった。カーンという音が鳴る。それと同時に雷斗が突き刺してきた。
避けるのは容易い。壊せるかも分からないが多分出来る。だが、ここは大人しく刺さってやろう。少しチャンスをくれてやる。
真耶は一切動かなかった。傍から見れば動けなかったように見えるが、頭のてっぺんから足のつま先まで微動だにしなかったのを見てわざとだと希望達は気づいた。
「何故手加減をする!?」
「お前らが本気を出していい相手か見極めるためだ」
「っ!?僕達が実陸不足だと言うのか!”シャイニングソード”」
希望の剣が光った。そして、いくつかの光線が飛び出してきて真耶を刺し貫く。
そして、彩花が遠くで詠唱しているのが聞こえた。
「”暗闇に舞いし光を駆逐せよ。ダークインパクト”」
黒い何かが目の前に現れた。それは、あたりのものを全て飲み込んでいる。飲み込まれたものは中で粉々に破壊され消されている。食らうのはまずいな。
だが、この強さなら多少本気を出してもいいかもしれない。真耶は目の前の黒い何かを見据えながら右目にかかる髪を退けた。
その目には時計が写っている。その時計はカチカチと時を刻んでおり、真耶の、寿命を表している。現在は何万回以上も回るので5000年程度はあるはずだ。
真耶が目を見開くと、この場の時間が止まった。そして、右目の時計の針が少し動く。
「もうこの技も使い慣れてきたな」
そう言って雷斗の腹を殴った。すると、止まった時間は動き出した。
これまで使ってきてわかったことだが、時間を停めた場合自分が動いても時間が進み出すことは無いが、止まっている物体や人に触れた場合止まった時間が動き出してしまうらしい。だから、倒せても1人だけ。
そして、今のは試し打ちだ。軽く殴った程度だから気絶することはないと思うが、これで気絶するようなら俺は本気を出さない。
「……クッ、な、何をした?」
雷斗は片膝をつきながらそう言ってきた。きぜつしてない。前より強くなったみたいだ。
合格だな。
「フフフ……本気で相手してやるよ」
真耶はそう言うと、背中のアルテマヴァーグを抜いた。すると、刃に波動がまとわりついていく。
「皆!あの剣はヤバい!僕の剣で防ぐ!その隙にやつに攻撃を与えてくれ!」
『了解!』
4人同時に動き出した。癒優は後方へ、彩花は少し前へ、雷斗は素早い動きで真耶の後ろにいた。そして、希望はさらに速いスピードで間合いを詰めてきた。良い連携だ。
もしかしたら、前の自分だったら苦戦していたかもしれない。だが、今は違う。希望達が強くなったように自分も強くなった。レベルは上がってないが……まぁ、それでも強くなれれば良い。逆に、弱ければ死ぬだけだ。
「”解放しろ、覇滅瞳剣アルテマヴァーグ”」
そう言うと、覇滅瞳剣アルテマヴァーグからとてつもない波動が放たれた。その波動は瞬時に刃にまとわりつき、前のやつと今のやつで二重螺旋の波動になった。
「フフフ、先に神眼で確認しておいて良かったな」
真耶は嬉しそうに、さらに自慢げに笑いながらそう言った。
だが、希望達はそれどころでは無い。あの攻撃を喰らえば確実に負ける。そう直感した。
希望達は覇滅瞳剣アルテマヴァーグの能力を知らない。だから距離をとって戦えばいいと思った。そして、全員真耶から距離をとる。
……それが失敗だった。
「一撃で決めてやるよ。”物理変化”」
空気が熱くなる。すると、突然空気が燃えだした。その炎は螺旋する波動に絡め取られて刃にまとわりつく。
真耶は1度全員の位置関係を確認すると、剣を振り上げた。そして、一気に横に振り払った。螺旋する波動は一直線の斬撃と化し希望達を襲う。一瞬で来る波動は対応することは出来ず、結界を張ることも叶わなかった。さらに、刃にまとわりついていた炎は波動に乗って向かってくる。斬撃は一瞬のうちに炎の斬撃となった。
そうなれば、さらに希望達が防げる確率は下がる。普通の斬撃なら良かったものの、炎の斬撃だと威力は倍増する。希望達は一瞬にして切られた。しかし、当然刃は落としてある。誰かさんと違って。
希望達は峰打ちをされて、気を失った。
「これで終わりだな。俺の勝ちだ」
真耶はそう言うと、不敵な笑みを浮かべた。
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