第62話 勇者再び
突如、真耶の目の前に砂嵐の波が襲ってくる。真耶は目の前の空気を魔法で固めた。これで、砂嵐の影響を受けることはない。
その直後、砂嵐は真耶達を襲いかかっていた。空気の壁があったから影響は無かったものの、当たったら一溜りもない。
それにしても、何故砂嵐が襲って来たのだろう。ここは砂なんてないはずなのに。いや、もう考えるのはよそう。理由はだいたい分かっている。
真耶は背中のアルテマヴァーグに手をかけたが、すぐに手を離し盾を構えた。こんなところで戦いたくは無いし、アルテマヴァーグの波動はまだチャージが出来ていない。
そして、自動で物理変化を唱えれるようにオンにしておく。
「……来る」
そう呟いた瞬間砂嵐の中から光る剣が現れた。
「ウォォォォ!”ライトニングスラッシュ”」
キィィン!
剣が盾に当たり甲高い音が鳴った。そして、光る剣はさらに光をましていく。
「やっぱりお前か。希望。”物理変化”」
真耶は盾の形を変え、1部を鋭いトゲにかえ突き刺そうとした。しかし、希望は後ろに飛んで逃げる。
「っ!?何故僕の名前を知っている!?」
……は?こいつの頭はいかれてるんじゃないのか?いや、そういえば学校でもテストの点数は俺よりも下だったな。
あぁ、なるほど。だから記憶力がないのか。頭が悪いと大変だな。よし、それなら仕方がない。許してあげるか。
「なんて言うわけないよな」
真耶は盾を背中に戻すと剣を抜いた。そして、刃を落として気絶させようとする。そのためにまず距離を詰める。そして剣を構えた。
「お前、いい加減俺の名前を覚えろよ」
そして、剣を一気に振り下ろした。
カキンッ!
再び甲高い音が響いた。そして、目の前に男の人が現れる。さらには、背中に杖のようなものを突きつけられた。
まぁ、逃げるのは簡単だ。そして、このまま反撃するのも容易い。でも、しても意味が無い。まぁ、意味はあるのだがする必要がない。
だって、どうせこいつらは勇者パーティだから。普通に考えてみろよ。こんなピカピカした剣を使っているやつは勇者ぐらいしかいないだろ。
「逃げようとしたら魔法を撃ちますよ」
「逃げないよ。だってする必要がないから」
そう言って剣を鞘に収めた。それを確認すると、目の前の男も剣を収める。
しかし、警戒はしているようだ。めっちゃこっちを見ている。
……てか、こいつなら覚えてるだろ。俺の事。
「なぁ、俺の……」
「何者だ?名をなの……」
「黙れ」
速攻で黙らせると、後ろの2人に話しかけた。
「お前らは俺の事知ってるよな」
「いや、全然知らないわ」
「じゃあ死ね」
「なっ!?」
真耶はそう言うと、振り返ってギルドの中に入って行った。勇者パーティはタイミングよくデウス歯車が動きだし下の方に下ろされていった。
それにしても、本当にモブだ。めっちゃ嫌な気分にしかならない。早くこのバッドステータスを良くしたいのだが、勇者の感じを見て絶対に無理だと分かる。
仕方がない。モブを脱するのはやめよう。てか、なんであいつの剣変わってんの?わけわかんねぇよ。勝手に神器を変えやがって。絶対いつか奪い取ってやるよ。
そんなことを考えていると、アルテマヴァーグの波動のチャージが完了した。かなりチャージが終わるのが早かった。
「よし、クエストに行くか」
「ちょっと待った!お前!真耶だな!」
そう言ってギルドに入ってきたのは希望達だった。希望は入ってくるなり真耶を指さしながら近づいてくる。
「うわっ、まだ居たのかよ。俺達はクエストに行きたいんだよ」
「そうか、なら待ってやる」
なんだ、聞き分けがいいな。それならゆっくり行ってやろう。……と、言いたいが、早く終わらせたいので早く終わらせよう。
「お前ら行くぞ」
真耶はそう言って振り返った。しかし、後ろには誰もいない。連れ去られたのかと思ったらギルドの外から入ってきた。
「どこいってたんだ?」
「クエスト終わったよ。ほらこれ。一応まーくんのために多めに取っておいたから」
「あ、あぁ、ありがとう」
そう言って目的のものを手渡してきた。今日に限って手際がいいな。やはり、紅音と、フェアリルが仲間になったのが大きいのだろうか。
とりあえず、真耶にとってはすごくありがたいことだ。
「よし!真耶!俺と決闘だ!」
「はぁ?お前、またやるのか?アホか」
「なんと言われようと決闘だ。この、”絶裂光剣シャイニングリヒト”のサビにしてやる!」
うーわ、なんでそんな強そうな武器持ってんだよ。
そんなことを頭に、神眼を発動した。どうやらこの剣は前の武器の進化版みたいなものらしい。
それだと、本当にチートだろ。何故こんなに俺と決闘をしたがるのだろうか。やはり、こいつは頭が悪い。
「……まぁ、良いけど。負けても何も言うなよ」
「当たり前だ!しかし!一つだけ許して欲しい!今度は僕達は4人で戦わせて欲しい!」
……いやそれズルじゃん。4対1は普通なら厳しいだろ。しかも勇者パーティ。そんなの魔王か裏ボスぐらいしか戦わないだろ。俺は魔王軍に入隊した覚えはないぞ。
だが、これは普通ならだ。俺は普通じゃないから別に構わない。
「良いよ」
真耶は少し呆れたようにそう言った。
しかし、そうなると難しい。何が難しいかというと、手加減が許されなくなるということだ。
いやまぁ、手加減ができないほど追い詰められるわけじゃない。気分が高揚して手加減するのを忘れてしまうのだ。手加減しなかったらと思うと……考えたくもない。
新手のトマト祭りが始まりそうだ。
「待ってくれ!手加減はやめて欲しい!全力で僕達と戦って欲しい!」
希望はそんなことを言ってきた。本気で戦って欲しい。それは、俺にアルテマヴァーグを抜けと言っているのだろう。時眼を使えと言っているのだろう。
「……」
真耶は黙って希望立ちを見つめた。癒優、彩花、雷斗、そして希望。4人とも実力は十分ある。レベルも、見ない間に300を超えたようだ。
手加減……
「フッ、死んでも知らねぇけどな、いいぜ。本気でやってやるよ」
真耶は不敵な笑みを浮かべるとそう言った。
「それで、決闘は何時だ?」
「今日にしてもらいたい」
「あなたは強いわ。だから、私達が有利な状況で戦いたいの」
こいつすげーこと言うな。まぁいいけどさ。てか、彩花と雷斗は何か喋れよ。まぁ、それもいいけど。
そんなこんな考えていると、希望達が移動を始めた。真耶も奏達を連れて移動を始める。そして、闘技場に着いた。
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