第61話 スターの国の破壊兵器
「”物理変化”」
体が崩壊していく。これで終わりだ。真耶はそれを見届けながら手を離した。その破壊兵器も前の破壊兵器と同じように落ちていく。
真耶はそれを見ながら絨毯に魔力を流した。絨毯はその魔力で前に進み出す。そして、だんだんとスピードを上げていきすぐにその場を離れた。
「まーくん……一体何だったの?」
「わからんが、嫌な予感しかしない。ルーナに今この世界で1番有名になっていることを聞いてくれ」
「わ、わかったわ!」
奏は返事をすると急いで絨毯の中に入っていく。そして、奏と入れ替わる形でフェアリルが出てきた。
フェアリルは真耶の体を見るなりすぐに掴みかかってきた。
「っ!?何だよ」
「あなた、こんなに体を傷つけて!カナデ様を心配させちゃうじゃない!」
「は?何言って……っ!?」
真耶は疑問に思いながら自分の体を見た。確かに体中に傷がある。しかし、痛みを何も感じない。
さらに言うなら深く切られた場所も痛みが薄らいできた。しかし、優眼は使用していない。だから、痛みを感じないことは無いのだ。
「……」
どうやら今の自分の体は自分が思うよりも深刻な状況になっているみたいだ。
「マヤさん、どうしたんですか?」
そんなことを考えていると、ルーナが絨毯の中から出てきた。真耶は出てきたルーナに直ぐに頼む。
「今この世界で起こっている事件で重大なものを調べてくれ」
「わ、わかりました。”世界の森羅万象を知り、世界を作りしものよ、その知識を教えたまえ”」
詠唱が終わるとその場に風が吹き荒れ始めた。そして、魔力の波を感じる。その波は前より少し大きいようだ。
(……1つだけ、ある……)
いつもの男性が現れそういう。そして、少し暗い顔をしてルーナに言った。ルーナはそれを聞いて少し動揺しながらも、何とか収めて真耶に伝えた。
「1つだけあります……。世界最大の王国……スターの国が……滅びました」
「っ!?なるほど!そういう事か!」
「っ!?ど、どういうことですか!?」
「なんで急に襲われたか謎だったが、やっとわかったよ。こいつらはスターの国の兵士だ。おそらくデマ情報で俺を殺しに来て、その隙を狙ってきた何者かに国を落とされたと言ったところだろう」
なんとも悲惨な国だ。一体誰がこんなことをしたのだろう。いや、答えは既にわかっている。どうせアイツだ。あわよくば俺も殺せればいいとか思っていたのだろう。
思いどおりになって溜まるか。俺は絶対に操られたり手のひらで踊ったりはしない。そして、必ず殺す。
真耶は改めて決意を固め目の前を睨んだ。殺気が強まり漏れ出してくる。ルーナは多少怖がりはしたもののすぐに心配そうな顔で見てきた。
「怖いか?この俺が」
「い、いえ、その、さっきから後ろにクロエさんが見えるのですけど、ずっと頭を撫でてるのですけど、私目がおかしくなっちゃったのですかね?」
「フフッ、無視しろ」
清々しいほどの笑顔でそう言った。その声も爽やかさが出ていて、言ってることとのギャップが凄い。もし日本にいた時にこの力をもっていれば、モブを脱するのも容易だっただろう。
まぁ、そんなことは置いといて、俺に怖がっている訳じゃなくて安心した。これからは心置きなく殺気を放てる。
とか何とか思っていると、あることに気がついた。ルーナの足元に水たまりができているのだ。そして、服の股の部分がびしょ濡れだ。
「……やっぱ怖かったのかよ」
「だって!急にぞわーってするんだもん!」
「悪い悪い」
真耶は少し謝ってルーナの頭に手を置いた。そして、絨毯とルーナのズボンを綺麗にすることもなくギアの街へと向かった。
━━ギアの街まではそこから30分程で行けた。実際のところ、馬車だと3日、徒歩だと1週間はかかる。それもそのはず、ギアの街までは迷路のようになっておりルートを知っていなくてはならない。
しかし真耶は、その上空を抜けてきた。だから、迷うこともなく30分で来れたのだ。
ギアの街……そこは、とても不思議な街だった。街全体に歯車があり、カラクリが多い。そして、全てのカラクリは歯車で動いているようだ。ギアの街と言うだけあってギアが多い。
そして、今真耶の目の前には予想の斜め上のことが起こっている。なんと、ギルドが斜め上にあるのだ。これは、坂の上とか階段の上にあるとかそういう意味じゃない。空に浮かんでいるのだ。巨大な歯車の上にたっていて、それが浮かんでいる。
「ルーナ、お前って確かギルドの職員やってただろ。空に浮くギルドってあるのか?」
「き、聞いたことはあるのですが……見たのは初めてです」
「……」
真耶はその場で固まってしまった。そんな様子を見てか、宿の亭主が話しかけてきた。
「お客さん、お客さん、この街は初めてかい?」
「あぁ、初めてだ。なんなんだこれ?」
「これはデウス歯車と言って不思議な力で空を飛ぶんだよ。行きたいなら、街の向こうに送ってくれる場所がある。そこに行きな」
「飛んで入るのは?」
「良いけど、あんたは出来そうでも連れのねーちゃん達が無理そうだぜ」
確かに、と思った。だから、大人しくその送ってくれるところまで案内してもらうことにした。
その送ってくれるところに聞くと、そこにもデウス歯車があった。どうやらそれに乗ってあの場所まで行くらしい。
ギルドに行くだけで一苦労だ。
「徒労だ」
真耶はボソッと呟いた。奏達は気まずそうにしていたり、ショックを受けていたりしていた。
そんなこんなあってか、デウス歯車がギルドの元まで行くと皆は急いで中に入った。でも、別にここで早くしても意味はない気がするのだが……まぁ、その心がけは褒めてやろう。
そんなことを考えながら皆の頭を撫でた。奏だけは胸を揉んだ。
「ふにゃあっ!?ま、まーくん!?」
「あ、悪い。つい触りたくなってな。まぁ、そんなことより早く依頼見ようぜ」
真耶達はそう言って依頼が貼られてある看板を見た。たくさんの依頼がある。その中に1つ不思議なものを見つけた。
「……これは……早速見つけたな。玲奈を倒すのに役に立つかもしれない」
真耶はそういうと、その紙を持って受付に出した。受付のお姉さんは笑顔で受注してくれたから、やる気も十分だ。それに、怪しまれなくて良かった。
「さーて、行くか……っ!?」
そう言ってギルドを出た時、再び事件は起きた。
読んでいただきありがとうございます。感想などあれば気軽に言ってください。




