第59話 破壊兵器
「ん……あれ?もう朝?」
「やっと起きたか。皆支度をしろ。街を出るぞ」
「えーもう出るのー」
皆は少し眠そうだ。それに、まだ遊び足りないと言った表情をする。だが、もうやることはしたし調べたいことも調べられた。ここにいる必要は無いんだが……
嫌というなら残っても良い……
「なんて言うとでも思ったか?」
『嫌だぁ!まだここにいたい!』
そんな叫びは完全に無視して真耶は宿を出た。ルーナ達は残念そうな顔をしたが、すぐに切りかえて支度を始めた。
「次はなんにも起こらないと良いですね」
クロバがボソッと呟いた。真耶は急いで宿に戻り皆がいる部屋に入ってきて言った。
「それフラグだからな。回収した時お前がどうにかしろよ」
そう言ってくれる真耶は宿を出ていった。皆は真耶に追いつくように急いで宿を出た。宿を出るとすぐに街の入口まで歩いた。
街の入口には色々ある。例えば、馬車乗り場だ。馬車乗り場には定期的に馬車が来る。まるでバス乗り場だ。
他には検問所がある。犯罪者を見つけるらしいが、意味は無い。なんせ、昨日玲奈が俺の部屋に侵入してこれてからだ。
そして、これらのものは何故か他の街には無い。この街だけの特別なものなのだ。だが意味は無い。意味は無いけどあるのだ。
「マヤさん!」
そんなことを考えていると、ルーナ達が走ってきた。かなり急いできたのだろう。息を切らして肩で呼吸していた。
そういえば、奏の姿がない。一体どこに行ったのだろう。
「奏は?」
「はぁはぁ……よ、横にいますよ」
「え?……あ、いた」
本当に横にいた。全然気が付かなかったな。
「まぁいいや、フェアリル、絨毯を出してくれ」
フェアリルは真耶の言葉を聞くと、背中に背負っていた絨毯をもち一気に広げた。
「よし、入れ」
真耶がそう言うと、皆は中に入っていく。中に入ると、机の上で着替えをしているフィギュアがいた。リルだ。奏はリルの顔を見るなり話しかけた。
「久しぶり」
「あ、皆さん、久しぶりですね」
「5日ぶりくらいかしら。てか、あの時いなかったよね」
「あの時ですか?あぁ、あの時は寝てました。てへへ」
リルはそう言って笑う。皆は呆れて何も言えなくなった。
そんなこんなしていると、上から真耶の声が聞こえた。そろそろ出発するらしい。だから中が揺れるから気をつけろと言ってきた。
6人は近くの置いてあるものにしがみつく。リルは奥の部屋に行き魔法陣を組みたてた。
「よし……」
真耶は魔力を流し始めた。魔力は順調に流れていく。
「あれ?この魔力……まさか!マスター!この魔力って、もしかして古代の魔力ですか!?」
「あぁ、そうだが……ん?なんだこれ?」
絨毯は深緑色に変色をし始めた。そして、模様が黄緑に光る。その光は全体まで行き渡ると、手を置いている部分に魔法陣が発生した。
真耶は咄嗟に手を離した。しかし、魔法陣は完成してしまい消えることはなかった。
「遅かったか……なぁ、中どうなってんの?」
「どうもなってないけど……リルの足元に魔法陣が出てきたよ!」
あーね、なるほどね、嫌な感じがするが、リルに聞かないとわかんないわけね。
「リル!どうなってるんだ!?」
「マスターが流した魔力が古代の魔力だったから本来の力を取り戻してるんです!」
なるほどな。この絨毯が古代の時代に作られたから古代の魔力を流し込むと本来の力を取り戻せるわけね。
「で、取り戻したらどうなるの?」
「……可愛くなる……かな」
そう言ってお茶目なポーズをとった。なるほど、壊されたいわけだ。よし、今すぐそっちに行って壊してやろう。
「ま、待ってください!冗談です!自動運転が可能になるんです!私が魔力を自動で増幅させるからその魔力を使って自動で進めるようになるんです!」
正直に話してくれた。こんな感じに話してくれるといつも助かるのだが、すぐに嘘をつくんだよな。まぁ、正直に言ってくれたからよしとしよう。
てか、自動運転が可能って、魔法の絨毯とは思えない光景になるだろうな。シュールすぎて笑えてきた。
真耶は魔力を最後まで流し込むと、魔法陣から離れた。魔法陣は着々と完成していき絨毯をから浮き出てくる。そして、とてつもない魔力が絨毯に宿った。
性質は俺と全く同じ。魔力量は全然違うがそれでも多い方だ。それに何より、魔力が接続されたから自分の魔力が減ってもこの絨毯に宿っている魔力……要するに、リルの魔力を使えるらしい。
真耶はそれを確認すると絨毯に飛び乗った。気分が高揚している。なんだかいいことが起こりそうだ。
それに、この目の能力も早く慣れないといけない。そうでなければ上手く使えず殺されるだけだ。
「お前ら、出発するぞ」
『はーい』
真耶はその返事を聞いて、改めて魔力を流し始める。すると絨毯に魔力が流れ空高く浮き上がった。
絨毯は魔力を流すといつもと違い絨毯内部に溜まっていく。そして、自動で前に進み出した。おそらくリルがやったのだろう。前と違ってかなり早い。
「これは楽だな」
真耶はそう呟いて絨毯の上に寝転がった。
「っ!?……何か来る……」
突如、とてつもない殺気を感じた。そして、何かがとてつもない速さで近づいくるのが見えた。
「……お前ら、気をつけろ。何かが……っ!?」
咄嗟に剣を抜いた。その直後に謎の生物が剣を振り下ろしてきた。真耶はそれを防ぐと1度絨毯を操作し遠くに離れる。そして、その生物を見た。
それは、紫色でゴツゴツトゲトゲしている。そして、両手に剣を持っている。背中には羽のようなものが着いており空を飛んでいる。さらに、黒いオーラが背中から出ている。一言で言えば、闇の戦士のようだった。
「何者だ?」
「……」
その生物は何も答えない。まるで破壊兵器だ。そんなことを考えていると、破壊兵器は剣を振り上げた。そして、一瞬で目の前まで距離を詰められ攻撃を仕掛けてくる。
「”壊れろ”」
真耶は左目2魔力を溜めながら剣で防いだ。そして、そう言った。その左目には太極図が描かれている。
破壊兵器は真耶の言葉を聞くと、右腕が壊れた。バラバラと紫色の欠片が落ちていく。しかし、真耶の目の前で驚くべきことが起こった。
なんと、右腕が修復しているのだ。落ちていく欠片が逆再生のように戻っていく。そして、再び真耶へと攻撃をしてきた。
「クソッ……”物理変化”」
攻撃を防ぎながら1度その場を離れる。そして、空気中の炭素原子を使い空中に炭素を作り出した。真耶はそれを踏んで絨毯の元まで飛ぶ。
しかし、絨毯がある場所には破壊兵器がある。破壊兵器は向かってくる真耶を確認すると、剣を構えた。
「”物理変化”」
体を水に変える。すると、振り下ろされた剣は体をすり抜けていった。その流れで蹴りをぶち込み一時的に遠くに突き放す。そして、再び絨毯の元まで帰ってきた。
「さてと、少し本気をだすかな」
そう小さく呟いて遺物で作った剣……名前は……そうだな、覇滅瞳剣アルテマヴァーグにしよう。
真耶は背中に背負っていたもう1つの剣、覇滅瞳剣アルテマヴァーグに手をかけた。
読んでいただきありがとうございます。感想などありましたら気軽に言ってください。




