第55話 偽物真耶VS奏
「俺を殺すだと?お前が?」
「無理だって言うの!?」
「いや、出来るさ。覚悟があるならね」
そう言って腰につけている謎の武器に手をかけた。奏はその武器を警戒する。朝に見た時には無かったものだ。
奏はその剣を抜かせてはいけない。そんな気がした。
「”ゴッドフェニックス”」
先に仕掛けたのは奏の方だった。炎の不死鳥が偽物真耶目掛けて真っ直ぐ突き進む。今度は包み込むような素振りはなく殺す気だ。
偽物真耶は左目を見開いた。その目には、これまで見た事もない模様が浮かんでいる。
「何あれ……?太極図……?」
「古代の力だ。”水よ……全てを流してしまえ”」
大量の水が炎の不死鳥を襲う。しかし、そんなことで消える炎では無い。奏の放った不死鳥は勢いを消すことなく大量の水を蒸発させた。
「流石だ。……これが本気になった奏の力……だが、まだまだだな」
パチンッと、指を鳴らした。一瞬にして大量の水が消える。炎の不死鳥は抵抗が無くなったことにより勢いを強めた。
炎の不死鳥が偽物真耶を襲う。当たったら火傷ぐらいじゃ済まないだろう。……当たれば……ね。
偽物真耶は左目を見開いた。目の前に太極図が現れる。その太極図は半回転すると空間が白と黒に分けられた。そして、その白と黒は反転する。すると、炎の不死鳥がひっくり返って奏に向かっていった。
「え?なんで……!?”ブリザードフラワー”」
氷の華が咲いた。そこから氷の花粉が巻き散らかされる。氷の花粉によって炎の不死鳥は凍りついた。
「……はぁはぁ……まーくん……!早く……返して!」
「返す?俺が真耶だ。返すというのはおかしいぞ」
「違う!あなたはまーくんじゃない!月城真耶じゃないのよ!それに、魔法だって違うしその目だって全然違う!」
「目か、これはどうだ?」
そう言って右目にかかる髪の毛をどかした。すると、時計の模様が描かれた目が見えた。
そう、時眼だ。偽物真耶は時眼を見せてきた。
その時、奏は危険だと感じた。いや、奏だけでは無い。その場にいる真耶の力を知っているもの全員がそう感じた。
「……俺を殺すつもりならこっちも殺す気でいく」
真耶は小さくそう呟く。それが聞こえた奏は咄嗟に風魔法で全員を遠くに飛ばした。そして、その直後に奏の両手の時間を止められた。
肘の辺りに緑の光を発する波動のような球体が出来る。その球体を暗い緑色をした謎の文字が円を描くように公転している。そして、その文字の円は2つあり十時を描くようにそれぞれ公転している。
(っ!?……こんなの見たことない……!一体まーくんに何が起こったの!?)
そんな考えで頭の中は埋め尽くされた。しかし、偽物真耶はそんなこと気にしない。目の前まで来ると奏の額に手を置いた。
「お前を俺の従順なペットにしてやる」
偽物真耶の左目が赤く光った。邪眼だ。前にステータスプレートを見せてもらった時にあることは知っていた。だが、能力は分からない。
一体何をするのだろうか?たしか、前に使った時は記憶を消していた気がする。まさか、私の記憶を消すつもりなのだろうか!?
「そんなことはしない。言ったろ、俺のペットにするって。記憶を書き換えるだけだ」
記憶を書き換える。それは、多分私がまーくんのことを忘れるということ。そして、この偽物真耶にメロメロになってしまうということ。
「嫌だ!あんたなんか大嫌いよ!」
「大丈夫さ。俺の事が好きっていう記憶に書き換えるから」
「絶対にならない!まーくんを返してよ!」
「物分りが悪いやつだな。俺が真耶だ」
「違う!まーくんはそんな事しないもん!まーくんはいつも冷静で強くてかっこよくて仲間思いなんだもん!……っ!?うげぇ……!」
偽物真耶は力いっぱい奏の腹を殴った。突然腹に激痛が走る。そして、腹から込み上げてくるものがあった。
「おぇ……!」
腹を殴られたせいで吐き出してしまった。涙が出てくる。目の前に真耶の顔をした真耶じゃない人がいて、記憶を書き換えようとしている。奏はとてつもない恐怖に包まれた。
「俺のおもちゃにしてやるよ」
偽物真耶はそういうと、目を真っ赤に光らせ魔力を右手に貯め始めた。そろそろ終わりの時間だ。
「まーくん……助けて……」
その言葉が小さくこだました。
その時、突如目の前が白く光った。奏はすぐに顔を上げ目の前を見つめる。涙で滲む目に微かに写った。それは、いつもの真耶だった。
「まーくん……!」
「またせたな。奏」
真耶はそう言って不敵に笑った。そして、胸に手を当てて魂を引っこ抜く。すると、真耶の体から白い魂のようなものが出てきた。それは、出てきた途端7色に変わったが、どす黒い色へと変色していった。
「俺の勝ちだ。”消えろ”」
その言葉でどす黒い魂は消えた。真耶はそれを確認すると安心しきった顔で背中から倒れた。
「まーくん!戻ったのね!」
「あぁ。悪かったな、心配かけて」
「本気だよ!ばかぁ!次こんなことになったら許さないんだから!」
奏は泣きながらポカポカ……いや、ボコボコに殴ってきた。痛い。普通に痛い。……と、前の俺ならそう思っただろう。だが、何故か痛くなかった。
(あれ?痛くない……なんで?優眼は……使ってない。何故だ?)
そんな真耶の様子など、今の奏は気づかない。奏は痣ができるほど殴ってきた。だが、それは痣ができるほどの力で殴ってきただけ。実際に痣ができる訳では無い。真耶の体は殴られても痣ができることは無かった。
「あれ?まーくん……なんで?傷が……」
流石に奏も気づいたようだ。急にうろたえ始める。
「マヤさん!カナデさん!大丈夫ですか!?」
「あ!ルーナちゃん!こっちこっち!」
ルーナ達が来たらしい。飛ばされてからずっと探していたようだ。おそらく、この暗さだから方向が分からなくなったのだろう。
そんなことより今は自分の体のことだ。なぜ傷がつかないのだろうか?それに、何故か体の中に不思議な力を感じる。
「……古代の魔力……まさか!」
神眼で自分の体を見た。魔力が流れていた場所に深緑のよく分からないものが流れている。
それで察した。どうやら自分の体には古代の魔力が流れているらしい。しかも、普通の魔力が全くない。
「あー、なるほど……」
「ん?どうしたの?」
奏は不思議そうに見つめてきた。真耶は静かに起き上がると不敵な笑みを浮かべて言った。
「古代人になったのかもな」
「……え?」
奏はなんのことか分かってないらしい。真耶はそんな奏を見つめながら、膝を立てその膝の上に腕を置いた。そして、奏の頬に手を触れる。
「ひゃあっ!ど、どうしたの!?」
「いいや、何でもないよ」
真耶は少し微笑むと、静かに立ち上がった。そして、ルーナ達と合流し奏に手を伸ばす。奏はその手を掴むと勢いよく立ち上がった。そして、街に向かって足を進める。
「さ、早く帰ろ」
そう言った真耶の目の前には文字が現れた。真耶はそれを見ながら皆と一緒に街に戻った。
【特殊スキル、古代眼、解放しました】
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