第52話 謎の遺物
早速真耶は依頼の場所に来た。そこは、崖のような場所で全体的に満遍なく草が生えている。話によると、ここに遺物があるらしい。
そして、素手で触ると良くないらしい。そのため破邪の手袋を借りなければならないのだが、真耶はそんなもの知らないので借りなかった。だから当然見つけてら素手で触るだろう。
「あ、あった。これだ。ここら辺いっぱい落ちてるんだな」
真耶はそんなことを言いながらその遺物を触る。案の定素手で触った。しかし、何も起きない。真耶はその遺物を見た。何故か分からないが、懐かしさを感じる。
見た感じ変だ。変な形で、謎の感触だ。しかも黒い。
「柔らかい……だが、壊れない」
真耶はそれを伸ばしたりねじったりする。しかし壊れない。と、その時とてつもない寒気がした。多分クロエだ。真耶はただ事ではない気がして魂眼を発動した。
『ダメー!!!それは触っちゃダメー!』
発動した途端耳に強烈な衝撃が走った。とてつもない大声が鼓膜に響く。耳が痛い。
「一体何だよ?」
『それは遺物でしょ!素手で触ったら呪われるよ!』
は?え?やば、めっちゃ触ったんだけど。
真耶はそのまま固まってしまった。しかし、すぐに意識を取り戻す。そして、すぐに神眼を発動させた。
自分を見ると何ら変わらない。呪われた形跡もない。それに、この遺物に呪いの効果はなかった。
どういうことだろうか?クロエが嘘をつくとは思えない。それに、嘘をついているような様子でもない。もしかしたらこれには神眼でも分からないような呪いの効果があるのかもしれない。
「……なぁ、どんな呪いの効果があるんだ?」
『え?知らないの?手が腐り落ちて、言葉が喋れなくなるらしいのよ。この国で1番頭がいい人が、恐らく古代語だって言ってた』
「なるほどね……」
古代語……喋ってる本人は知らないから、何を言ってるのか分からないということか。それに、手が腐り落ちる。それは恐らく魔力の欠乏だろう。今触っているが、かなりの魔力を吸っている。それに、魔力とは違う何かが流れ込んできているのが分かる。古代の魔力かもしれない。
「確かに、触ると危ないな」
真耶はその遺物を捨てた。そして、どうしようかと悩む。金は欲しいしこの遺物を調査したい。
実際のところ、素手で触って持っていくことも出来る。しかし、それをするとヤバいやつだ。誰も素手で触れないのに触っている。異端者確定だろう。
まだ異端者認定されてないのはモブだから。モブというバッドステータスが役に立っているのだ。
「ま、こんなものずっと持ってたら危ないしな。時眼で時間でも止めるか」
そう言って右目にかかる髪を少しどかした。時計の模様が浮かぶ右目が現れる。そして、右目に魔力を溜め発動した。すると、遺物の魔力を吸う能力は失われた。
「これで持ちやすくなったが、これを持っていったらやばいということは変わってないな」
それに、自分の寿命が少し減った気がする。……いや、減ってるだろう。
真耶は道に落ちてる石を拾うと、鏡に変えた。そして、自分の右目を確認すると使用前より時計の針が動いている。やはり減ったようだ。
「ま、あと5000年近く寿命があるし良いか」
そう呟いてギルドに向かって足を進めた。そして、その道中に遺物をもう1つ拾った。真耶はその遺物の時間を止めて、懐に隠した。
そして、今度こそギルドに向けて足を進めた。
━━少し歩いてギルドの前まで来た。他の人が手袋をつけているのを見て真耶も手袋を作りつける。そして、平然と受付に出した。
受付の人はそれを見て破邪の手袋を持ってくる。そして、慎重に触り始めた。これが本物かどうか調べてるらしい。
「うーん……本物ですね。これは報酬です」
ギルドのお姉さんはそう言って1000ギル持ってきた。ほぅ、本当に高額だ。これだけで宿に1ヶ月は泊まれるぞ。
そんなことを思いながらお金を受け取った。そして、ギルドを出て宿に戻る。そこで遺物の調査を始めることにした。
「この遺物……魔力を吸い続けてやがる。時間を進め始めた途端これだ。どうなってやがんだよ」
そんなことをつぶやく。そして、神眼を発動した。しかし、神眼で見てもこれがなんなのか分からない。全ての表記は???になっている。
(使えねぇー)
真耶は半分呆れながら遺物を握った。ぷにぷにしている。本当に変な感触だ。それに、魔力をかなり吸っている。
これ、逆に魔力を与えたらどうなるのだろうか?そんな考えが頭の中に浮かんできた。
いや、それはダメだ。やってはいけない。そんな気がする。なんだかそれをすると爆発しそうな、そんな予感がする。
だが、真耶はやった。試しに魔力を送ってみた。しかし、何も起こらない。どうやら魔力を送っても何もならないようだ。
真耶はこれで調子に乗ってしまった。つい調子に乗ってしまってある魔法を唱えた。と言っても真耶が使える魔法など1つしかない。
「”物理変化”」
ドプンッ!
変な音が鳴った。そして、右腕に強烈な痛みが襲う。気がつくと右腕が無くなっていた。真耶は咄嗟に遺物から離れる。そして、右腕を再生させた。
(めちゃくちゃ痛かった。優眼を使ってない時にこんなことになるとは……油断した)
真耶は右腕を再生させると、遺物をもう一度手に取る。どうやら魔法を唱えると魔力が逆流して腕が弾け飛ぶみたいだ。
「……もう一度やってみようかな」
真耶は不敵な笑みを浮かべるともう一度遺物に魔法をかける。
「”物理変化”」
ドプンッ!
やはり、右腕が吹き飛んだ。どうやら遺物に魔法を使うのは良くないらしい。だが、魔法を使ったあと右腕が弾け飛ぶのに変な間があった。
(……恐らくあれだな。魔力を流して別の物質へと変えているのだろう。そしてそれを俺の右腕に流す。神眼に似てるな)
だとしたら流れ込んで来るものを別の物質に変えればいい。例えば魔力とか……
「”物理変化”からの”物理変化”」
真耶は物理変化を同時に2回発動させた。すると、今度は右手が弾け飛ぶことも無く遺物の形を変えることが出来た。
真耶は遺物の形を剣に変える。その剣は黒く、謎の模様がついている。大きさはショートソードくらいだ。
「まさか、出来てしまうとは……」
これは凄いぞ。勇者パーティーどもは神器やアーティファクトを持っている。俺が遺物の1つくらい持ってても良いだろう。
だが、武器を作っても鞘が無いな。それに、ただの鞘だと魔力を食われてしまう。そもそも使用時に魔力を吸われてたら一溜りもない。
「……」
時眼を連続使用すれば何とかなるかもしれない。だが、それはさらに危険すぎる。連続使用すれば寿命を縮める。魔力の枯渇より危険だ。
そもそも、さっきから右手がおかしい。恐らく吸われたぶん別の何かが入ってきて、その量が多くなりすぎたのだろう。
「……いつか来ると思ってたんだよ。ついに、神眼の隠された力を使う時が来たか」
そう呟いて遺物を見つめた。
読んでいただきありがとうございます。感想などあれば気軽に言ってください。




