第51話 デュオラの街の謎
真耶達は街に入ると商店街のようなところを歩いていた。
「なぁ、俺達はなんでこの街に来たのか知ってるか?」
「調査でしょ」
「そうだ。で、お前らが今してるのは?」
「……」
奏達は喋らない。突然振り向くことも無く早歩きになった。しかし、真耶はすぐに前に立つ。そして、奏達を止める。
「で、お前らが今しているのは?」
デジャブか!と言ったら殺されそうなので振り返り逃げる。しかし、真耶は既に後ろにいた。
「殺さないよ。殺すより痛くてキツくて苦しいことをするだけだよ」
その言葉で恐怖心を煽られる。顔がどんどん青ざめ手足が震え出す。逃げようにも逃げられない。どうせ逃げた先にいる。ここはあれしかない。
奏達は頷いた。そして一斉に土下座を決め込んだ。
『ごめんなさい!許してください!』
「許すわけないだろ。お前らが観光するせいで俺の所持金は無くなった。あのなぁ、この街はジェルでもゴールドでもないんだよ。ギルなんだよ。使った分自分らで働いて貰うからな」
真耶は額に青筋を立てながら言ってきた。それが怖すぎて奏達は声が出ない。それどころか頭をあげることすら出来ない。
ザッザッザッと足音が聞こえる。真耶がこっちに向かってきているのだ。足音が止まった。奏の前に止まっている。
奏は恐怖で包まれた。この後何をされるのだろうか?もしかしたら裸で街を走らされるかもしれない。それとも、裸釣りにされて商売にされるかもしれない。
「な、何をするの……ふがっ!?」
真耶は突然鼻に痛みを感じた。上に釣り上げられる感じだ。なされるがままに顔を上げると、真耶が紐を持っているのに気がついた。それで察した。これは鼻フックだ。鼻がすごく痛い。しかも、絶対にブスになっている。
「ま、まーくん……痛い……よ」
「こんな痛みで根を上げてたら俺の金は一生戻ってこない。お前にはこの鼻フックをされ続けるか鼻フックをされ続けた状態で働くか、どっちか選ばせてやる」
「ど、どっちも嫌だよ……ひぐっ!」
今度は体に痺れを感じだ。恐らく電気だ。電流を流して痛めつけるつもりだ。
「違うな。これは俺の殺気だ。どうする?地獄の沙汰も金次第とは言うが、お前は金がないな。どうする?」
こ、怖い。怖すぎてちょっとおしっこ漏らしちゃった。まーくん本気だ。本気の目だ。それに、鼻フックが痛い……!
パシャッ!
「え?」
カメラのシャッター音が聞こえた。だが、ここは異世界だ。カメラなんであるはずが無い。じゃあ、なんでそんな音が……
「え?それって……」
「カメラだよ。試しに作ったんだけど、上手くいったよ。この豚みたいな顔を色んな街に拡散されたくなかったら働け」
「は、はい!そ、それで許してくださいますか……!?」
「……時と場合による」
真耶はそう言って紐を手放した。すると、鼻の痛みが消える。すぐに鼻フックを外して鼻を触った。多分真っ赤だろう。それに、ちょっと鼻が上に上がった気がする。豚みたいになった気がする……!
パシャッ!
またシャッター音がした。真耶だ。真耶はすぐに写真を見せてきた。そこには、鼻は真っ赤だが、いつもと変わらない自分が映っていた。どうやら豚みたいになったわけではないらしい。
「さぁ、働いてこい。そして、お前ら。あんなことされたくなかったら一緒に働いてこい」
『はい!』
全員は猛スピードでバイトを探しに行った。
「……はぁ、クロエ、見てるか?お前の金、全部アイツらが使ったぞ」
誰もいないところにそう呟いた。しかし、魂眼は使わない。クロエが俺の横で顔を真っ赤にしながらポカポカ殴ってそうだから使わない。
「ん?そう言えば、クロエは薙刀を持ってた気がするけど、使ってなかったな。どうしたんだろ?」
そんなことを小さく呟くと、突如胸に痛みを感じた。薙刀で刺されたような痛みだ。……多分クロエだろう。まさか、精神的なダメージを負わせて来るなんて……さすがは龍人族だ。
「さて、俺も調べ物を始めるとするか」
真耶は1人そう呟いて人混みに紛れ込んだ。
━━調査を初めて3日が経った。真耶はこの3日間で分かったことを整理する。1つ目は、国王を暗殺したあの女性達は召喚者、もしくは転生者などの転移者の可能性が高いということだ。
普通この世界の人はあまり特殊能力に長けていない。しかし、あの女性はほとんどのことが完璧だった。そんなことが出来るやつは、転移者以外に思いつかない。
そして2つ目は、あの女性の魔力の質は自分と似ている。というか、ほぼ同じということだ。魔力の質とは、その人の性格が魔力になって出てくるやつだ。これは、人によって違うが、家族は似てるらしい。そこからわかることは1つ。あの女性はやはり……
まぁ、それは置いといて、3つ目に分かったこと、それは、この街のギルドはブラック企業だということだ。毎日ギルドで働く奏達が傷だらけで帰ってくる。さすがに心配だ。1日目でバイトを辞めるよう言ったのだが、まだ続けているみたいだ。
「どこの世界でもブラック企業はあるんだな」
そんなことを呟きながら自分の手元のお金を見る。ギルドで何回かクエストをしたが、どれも報酬は少ない。だが、遺物調査のクエストだけはかなり高額だ。
遺物……前に本で読んだが、神器やアーティファクト的なやつらしい。しかしちょっと違う。例えば、剣聖の持ってた剣が神器だ。あれは、聖なる力を帯びていた。そして、アーティファクト、それは古代文明の技術で作りているらしい。
そしてそれらのどの特徴にも当てはまらないのが遺物だ。遺物はそれぞれに固有の能力が宿っている。例えば通信、発火、波動など。
そんなもの調査してどうするのだろうか?高額な分調査して欲しいのだろうが……
「十中八九訳ありだな」
真耶は小さく呟くとおもむろに立ち上がった。そして、剣を背負いギルドに向かった。
ギルドには宿から5分ほどで着いた。中に入ると奏達が働いている。そして、上司らしき人は鞭を持っていて、冒険者達は平気で女性のお尻を触っていた。
「……見る感じブラック企業だな」
そう思いながらも依頼を見る。やはり、遺物調査は報酬が高い。しかも、この遺物調査の依頼はこの街が行わせている。そこからわかることは、この街が遺物を欲しているということだ。
「受けてみないことには何も始まらないな」
真耶はそう言ってその依頼の紙をギルドに出した。
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