第50話 謎のマジョッコリルちゃん
マジョッコリルちゃん……魔法少女がこの世界にもいたとは……しかも、時間魔法まで使えるなんて最強じゃないか。
真耶は固まった皆を横目にリルを捕まえた。そして、指で頬をぷにぷにする。人の肌と同じ材質で作ったとはいえ温かみもある。本当に人間のようだ。
「っ!?」
そんなことをしていると、奏達が動き出した。どうやら止まっていた時間が動き出したらしい。
「す、すごい。この子時間を止めるなんて……」
「驚きすぎて時間が止まりました……」
皆はそれぞれそんなことを言う。それにしても、謎だ。機械だと思ってフィギュアにしたが、まさか人だったとは。
いや、本当に人かも分からない。確かなことといえば、機械だったらこの温かみはないということだ。
少し前の話になるが、前に1度だけ魂眼で機械を修理したことがある。突然動かなくなったと言われ、その時はたまたま近くに機械の魂があった。だからそれを入れて直した。
だが、ここまでの話で1つ不可思議なことがある。それは、機械にも魂があるということだ。これは、考え方……いわゆる認識の違いで変わってくるのだが、物に魂が宿ると認識しているものとしていないものがいる。付喪神のようなものなのだが、そのように魂が宿ると認識見えるらしい。しかし、そう認識してないものは見えない。だから、それが本当に機械の魂なのかも分からない。
そして今も、目の前に動いているフィギュアがいる。もしこれが人ならそれはそれでおかしい。
これも前にやったことなのだが、1度だけ死んだものの魂を素材で作った人の器に入れた時どうなるかを実験した。結果は簡単。魂は定着せず、すぐに抜ける。どれだけ定着させても定着しない。最後は器諸共真耶が消し飛ばしたのだ。
「なんでこのフィギュアに魂が定着したのだろうか……機械では無さそうだが……」
「どうしたの?このマジョッコリルになにか御用かな!?」
「……まぁいいや。とりあえずこの絨毯でデュオラの街まで行ってくれ」
真耶がそう言うと、リルは敬礼のようなポーズをとり、魔力を放出し始めた。真耶はそれを見ると、階段をあがり上に出る。
外に出ると、少しづつだが絨毯が動いていた。しかし、かなり遅い。それに、端っこの方でやってるのに通る人達がガン見している。
真耶は1度だけ階段を降りてリルに言った。
「遅せぇよ。速く出来ねぇのか?」
「ま、魔力が……」
「これって外から魔力で動かせないの?」
「一応出来ますが……相当魔力使いますよ」
「良いよ」
そう言って真耶はもう一度外に出た。そして、絨毯に座って魔力を送り込む。すると、絨毯は動き出した。
魔力を使うと言っても1や2くらいみたいだ。そこまで使わないのでどこまででも行ける。真耶は一気に魔力を送り込んだ。すると、絨毯は急加速する。
「うわぁ!ちょっと、マスター!早すぎます!」
「普通だろ。慣れろ」
真耶はそう言って急上昇した。中で皆が転がってるのが分かるが、気にしない。そもそも中には、外がひっくり返っても中はひっくり返らない魔法がかけてあるはずなんだがな。
おそらく、多少は反動が来るのだろう。それとも、また魔力が足りないかだ。まぁ、そこら辺は着いてからでいいや。
真耶は頭の中でそう考えると、全速力でデュオラの街に向かった。
━━それから5分後……
全速力で飛行したからか、魔力を多少使ってしまった。しかし、デュオラの街には5分で着いたので良しとしよう。
真耶はすごい達成感を感じながら階段を降りた。すると、中で目を回して倒れている5人と1つがいた。
「あー、やっぱ壊れてたのかも」
真耶はそう呟くと操縦室に入る。そして、色々見て回った。すると、中と外を分ける結界を作り出す機械が壊れている。
これは、魔力が足りないとかそういうレベルではなかった。なにかがぶつかったような壊れ方だ。
「あ……それは、さっき私が壊しました……」
リルがフラフラになりながらそう言ってきた。
え?何やってくれてんの?じゃあこれはただ魔力が足りなかっただけってことじゃん。
そんなことを思いながらリルを掴む。そして、身体中をめちゃくちゃな巻き方で糸を巻き、振り回した。
「きゃああああ!やめて!やめてください!怖いですぅぅぅぅ!あと、痛いです!紐がお尻と股にくい込んで痛いです!」
そう言って泣き始めた。真耶はそこで手を止めた。
「ぶぇちゃ!」
リルは訳の分からない言葉を言いながら壁にぶつかる。真耶はそれを見ながら静かに考え事をしていた。
「ちょっと、痛い……です……」
リルは真耶が自分のことをすごく不思議そうに見ているのを見て言葉を止める。そして、その場に立ち尽くすと真耶が手に取り目を見つめてきた。
「えぇぇ!?は、恥ずかしいです……」
「なんでだ?なんで涙が出るんだ?やっぱりお前は機械じゃない。だが、なんで魂が定着している?」
「え?」
真耶は自分の目から涙が出ることがおかしいと言った。だが、確かにそうなのである。なぜ機械から涙が出るのだろうか?そもそも自我がある時点でおかしい。だとしたらリルは人間なのである。しかし、もし人間なら魂は定着しない。
「……ま、後で考えるか。それよりこっちが先だ。”物理変化”」
真耶は機械を元の形に戻した。邪眼でリルの頭を除くと元の姿があったので、すぐに直せたのだ。
真耶は機会を元に戻すと全員を起こした。どうやら全員酔っているらしい。さすがに中で吐かれては困るので、外に出そう。
外に出ると、そこは壁際だった。さっき止まったところから少しズレてる。誰かの魔力が漏れたのだろうか
まぁそれもいい。そんなことよりこれをどうするかだ。持ち運ぶのはキツそうだが……
「どうやったらコンパクトに出来るんだ?」
「ま、魔力を使ったら……いいです……」
「魔力ねぇ……こんな感じか」
魔力を放出すると、絨毯は丸まって手で抱え込めるサイズになった。どうやら小さくなると言うより畳まれるだけらしい。
「……ま、これでもいいか。誰か持ってくれない?俺は剣があるからさ」
「それなら私が」
フェアリルは絨毯を受け取ると、腰の辺りに横向きで背負った。紐で固定しているから落ちたり無くしたりはしないらしい。フェアリルなら安心していいだろう。もしルーナやクロバ、アロマが持ったら……考えるだけでも恐ろしい。
『ちょっと!何考えてるの!?』
3人が声を揃えて怒ってきた。もしかしたらこの3人はテレパシーが使えるのかもしれない。これから気をつけておこう。
「じゃあ、行くか」
真耶はそう言って突如街へ向けて歩き出した。奏達は気を抜いていたせいかその場にコケる。しかし、真耶は気にすることも無く行ってしまう。奏達は急いで真耶のあとを追いかけた。
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