第49話 魔法の絨毯
メテオの街からデュオラの街まではそう遠くない。歩いて3日程度だろう。すぐに着きそうだ。
「いや遠いよ!馬車に乗ろうよ!」
「マヤ様は感覚がバグってますよ」
酷い言われようだ。確かに3日は長いかもしれないが、メテオの街に来た時よりは短いだろ。
「いや、メテオの街に来た時も馬車で1日だからあんま変わんねぇか。よし、馬車に乗ろう」
そう言って街の馬車乗り場まで戻ろうとしたところである店を見つけた。それは、移動販売の店で骨董品を売っているらしい。そこに、あるものを見つけた。
「魔法の絨毯?なんだこれ?」
「それは魔法の絨毯だよ。乗ると空を飛べるらしいが、今はただの絨毯さ」
「へぇー、じゃあこれくれよ。いくらだ?」
「あいよ。それは売れ残り、タダで持っていきな」
まじか、それは嬉しいな。
真耶はそれを受け取ると早速皆のところに持ち帰って広げた。
「なんですかこれ?」
「魔法の絨毯らしい。今は飛べないらしいがな」
全員が揃って使えないじゃんという目で見てきた。確かに飛べないから使えないかもしれない。だが、使えるかもしれない。例えば風魔法で飛ぶとかな。
とりあえず真耶はこの絨毯が本当に使えないのか調べることにした。まず、神眼でどんな材質で出来ているのか確認する。どこが壊れてるのかを確認……え?
「いや、壊れてすらねぇし」
「え?どういうこと?」
「ただの魔力不足だって。魔力を注ぎ込めば治るよ」
だが、簡単に言ってみたものの実際どうやるのだろうか?神眼で見ると、必要魔力量が1000万になっている。
今ここにいる中で魔力を合わせると、俺を除いて約100万だ。
……うん!普通に足りないな!だが、ここで魔力を使いすぎるといけない気がするんだが……
「ま、時眼でどうにかなるか」
そう言って魔力を注ぎ込む。ちなみに、最近知ったことだが、時眼は魔力を使わないらしい。寿命を使うと言っても多少は使うかと思いきや、全く使わなかった
前に1度だけ魔力を全て使い切った状況で時眼を使ってみた。すると、難なく発動した。だから、魔力が減っても何も問題は無い。
「でも、使いすぎると死んじゃうんだよね」
「ん?何か言った?」
「いいや、何も」
真耶は黙々と魔力を注ぎ込む。絨毯を見ていると、魔力が溜まっているのか光を発し始めた。
そして、2分程度で魔力は注ぎ込めた。絨毯は魔力が溜まると光を発した。そして、急に宙に浮く。
「ほらー!やっぱり飛んだじゃないかー!信じなかったやつ今すぐここで土下座しろ!」
真耶は飛んだのが嬉しすぎたのか、テンションがおかしくなる。しかし、その時にふと思った。
(異世界って魔法の絨毯とかないだろ。聞いたことないぞ)
……そう、テンプレではなかったのだ。
「またこれかよ!なんでこの世界は俺の予想の斜め上を行く!?」
「えぇ!?急にどうしたの!?」
真耶の突然の大声に皆はびっくりする。しかし、真耶はすぐに落ち着くと何も無かったかのように絨毯に乗った。
「あ、結構いいぞ。乗れるのれ……え?」
真ん中に乗ると、真ん中が開いた。そのせいで、真耶は下に落ちる。そこは階段だったからよかったが、それでもかなりやばい。真耶は時代劇などの階段落ちのように階段を勢いよく落ちていった。
「ま、マヤさん!?」
「え、え、え!?ま、マヤさんが落ちてっちゃった!」
再び皆は驚く。当の本人は階段を落ちて壁みたいなものにぶつかって倒れていた。
「は、入っていいのですか?」
「い、いいんじゃない?カナデ様はどう思いますか?」
「は、入ろう!」
奏はそう言って絨毯の中に入った。それに続いてルーナ達も入っていく。
その階段は螺旋階段になっていた。短いものの落ちればタダでは済まない。いや、そもそも階段から落ちればタダでは済まない。
奏達は恐る恐る階段を降りた。そこは、かなり広い部屋となっていてかなり豪華だ。それに、装飾品や壁の模様が絨毯の柄と似ている。
「うわぁ、すごい……」
奏達はその部屋を見て感嘆の声を上げる。そして、すぐに真耶の姿を探した。しかし見つからない。この部屋の他に多くの部屋があるが、開いた形跡はどこにもない。
「……こっちだ……」
「っ!?」
その時、真耶の声が聞こえた気がした。しかし、見当たらない。どこにいるのだろうか?
奏達は部屋中くまなく探したがやはり見つからない。
「こっちだよ。どこ見てんだよ」
「あ!まーくん!」
気がつけば目の前にいた。真耶曰く、ずっと目の前にいたらしいが全然気づかなかった。ルーナは真耶を見つけるとすぐに駆け寄る。そしてそのまま真耶のいる部屋まで入ってきた。
「ここは……?」
「わからん。階段転げ落ちてたらこの部屋まで落ちてしまった」
見た感じ操縦室のようだ。他に人は居ないが、妙な気を感じる。真耶は神眼を発動した。しかし、何も見えない。
(生きてるものでは無いってことか)
次に魂眼を発動した。すると、まやの目の前に白い球体のようなものが現れる。それは、白くフワフワしているものだった。
いや、基本的に魂だけの存在となったら同じ形だ。ちょっと色が違うだけなのだが……真っ白となると人では無い。もしこれが人ならかなり潔癖症か無感情の人だろう。そうでないなら機械か何かだ。
「なにか見えるの?」
「んーとね、幽霊的ななにかかな。体を作ってやろう」
真耶はそういうと、持っていた石ころを取り出す。そして、魔法で形を美少女フィギュアにした。
「え?マヤさん……これって……」
クロバが何か言いたげな表情をしているが、それを無視して魂を掴んだ。魂眼を使っている最中は魂に触れることも容易い。
(この力は全部クロエのおかげだ……!クロエ、ありがとう!)
『そんなこと言ってる暇があったら早くその器に入れてあげなよ』
突如クロエの声が聞こえた。……はぁ、やっぱりまだ成仏してねぇのか。
「あのなぁ、あんまりこっちに残りすぎるなよな。今回は機械だから出来るが人の魂を定着させるのは出来ないんだよ」
『知ってるよーだ!別にそんな事しなくてもいいもん!』
「あのなぁ、それはそれで問題があるんだよ。俺は閻魔と戦いたくないんだよ」
真耶は呆れたようにそう言う。しかし、クロエは何も聞いてないようだ。
「まーくん……どうしたの?怖いよ……」
あ、忘れてた。そう言えばクロエが見えるのは俺だけだった。そもそも、なぜこうなったのか言うと、2ヶ月間の特訓中に真耶は魂眼の練習もした。すると、妙に懐かしい魂があると思い魔力を与えてみると、それがクロエだったのだ。
魂眼を手に入れたのがクロエのおかげだからと言うこともあって、成仏させずに真耶に取り憑かせているのだ。
(ま、後々面倒なことになりそうだが仕方がない)
そんなことを考えながら、掴んでいる魂をフィギュアに入れた。するとフィギュアが動き出した。かなり精密に作ったから動きもかなり良い。
「さて、お前は何者か話せ」
真耶がそう言うと、フィギュアは喋りだした。
「わ、私はこの魔法の絨毯の少女……そう!魔法少女リルちゃんです!」
その時、その場の時間が止まった。
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