第48話 次の目的へ
2人は話が終わると部屋に戻る。どうやらこっちでも話は進んでいたらしい。部屋に戻るとすぐに席に着いた。そして、話を聞く。
「あの、マヤ様……何かあったのですか?」
「え?なんで?」
「だって……カナデさんが泣いてるんですもの」
そう言って奏の方を見た。
……正直このことは話したくない。だが、言わないことには話が進みそうにない。
「はぁ、話すしかないのか。ついさっきな、話が終わって部屋に戻ろうとしたわけよ。そしたらな、奏の靴が脱げたから待ってたら奏が突然足を滑らせて壁に頭を打ったんだよ」
真耶は少し呆れた感じでそう言う。だが、今の話を聞くと真耶が言いたくない理由が見つからない。あ!もしかしたら奏への愛が目覚めたのかもしれない!とか思うが、それはなさそうなので考えないようにした。
そんなことを思っていると、真耶は話を続けた。
「頭を打った奏は悶えながら俺に激突した。そのせいで俺は後ろに倒れたんだよ。そして……」
『そして?』
「……そして、たまたま後ろにいた女性の、パンツを脱がしてしまってな。今めっちゃ怒ってるの」
真耶は平然とそう言う。そして、真耶が入ってきた方向を見ると、鬼のような目つきで睨みつける女の人がいた。手には10トンと書かれたハンマーを持っている。
「ま、やってくるようなら容赦はしない。全力で叩きのめすだけだ」
「マヤさん、カッコつけてるけど悪いのマヤさんとカナデ様ですよ」
フェアリルの鋭いツッコミにその場が静まり返る。真耶はめちゃくちゃ顔を暗くして落ち込んだ。
「ゴホンッ、話を戻していいかね?」
「構わないよ」
「それで、国王暗殺の事だが、もう既に他国に知れ渡っているだろう。これは大事件だからな」
警部っぽい人はそう言って少し考えるような、素振りを見せる。絶対何も考えてないだろ、とか思うが言わないでおこう。
そんなことより、国王暗殺されたあとの次の国王は誰なのだろうか?変な人がなると、戦争になりかねない。
「ん?ちょっと待て、俺1回だけ国王に会ったことあるぞ」
『え!?』
「世界中に散らばる前に図書館でちょっとな……まさかあの時の国王が殺されるとは……」
いや、だが、それなら死んでもいいんじゃないか?実際のところ勇者パーティーが世界中にバラバラになったのもあの変な白い服着てる爺さん達のせいだし、そこにいたとなれば当然国王もぐるだろうな。
いや、もしかしたら国王がそいつらに恨みをかわれていたもしれない。国王だけいい人で、あの爺さんどもが他国の暗殺者を雇って殺したのかもしれない。
「それが1番有り得るな」
「どういうことですか?」
「ん?いや、なんでもないよ。それよりこれからどうする?」
唐突に真耶は聞いた。もし国王が暗殺されたというのであれば、王都に行ってみるのが1番かもしれない。幸いなことに、ここから王都までは少し近い。
それに、他のクラスメイトを探したい気持ちもあるし、行ってみるのもいいかもしれない。
「ま、俺達はそろそろ行くよ」
「そうか……」
なんだか歯切れの悪い返事が返ってきた。まぁいい、気にしないでおこう。そんなことより、今更になって自分がモブでよかったと思うよ。こういう時に誰からも気が付かれないしな。
「そうだ、街は修復しておいてやるよ」
半分は俺が壊したからな。とは言わずに手を振って出ていく。しかし、その途中で止められた。
「待ってくれ!1つ願い事を聞いてくれ!」
「なんだ?」
「……この事件、お前達の力で解決してくれないか!?何か嫌な予感がするんだ!これだけじゃ終わらない気がする!だから、無理にとは言わないが手伝うだけでもして欲しい!」
そう言って頭を下げてきた。その時真耶はいくつかの言葉が頭の中に浮かぶ。なぜ自分でしないのか?なぜ俺なのか?だが、その答えは簡単だった。
多分こいつは自分では出来ないと思い込んでいるんだ。自分の実力を過小評価している。そして、勇者パーティーである矢影達のことも過小評価している。
「お前は十分優秀だ。1人で出来ないこともないだろうと思うが、お前を危険な目に合わせたくは無い。俺が調べるよ」
「っ!?引き受けてくれるのか!?」
「あぁ」
真耶はそう言って頷いた。それを見ると、警部っぽい人の顔が明るくなる。そして、安心したように息を吐いた。
真耶はそれを見て少し微笑む。そして、自分の手を見た。
(多分この事件は簡単なものじゃない。だとしたら、俺はこの先何人も人を殺すことになるだろう)
もしそう言う状況になった場合は何としても人間性だけは保たないとな。連続無差別殺人鬼になる気は毛頭ない。平和と愛に溢れた男になろうと心の中で固く決心した。
真耶達は話が終わると戦った場所まで行った。怪しいと言って矢影達も着いてきたが、問題は無い。それに都合もいい。
真耶は目的の場所につくと早速行動に取り掛かる。と言っても魔法で一瞬なんだけどな。
「おい、霧音、ちょっとこい」
「あなたに指図されたくないわ」
「じゃあいい。ただし、元通りにはならないがな」
真耶はそう言って立ち上がった。そして、その場から立ち去ろうとする。
「行くぞ」
「え?元に戻さないの?」
「無理だな。見たことも無いものをどうにかするなんて無理だろ」
そう言って奏達を連れてその場から離れだした。霧音はそれを見て真顔で立ち尽くす。多分怒ってるのだろう。そしてさらに泣いている。
顔には出さないが気でわかるな。ちょっと意地悪しすぎたか……
「フッ、冗談だよ。だが、お前が手伝わない以上修復は難しい」
「……そういう事ね。いいわよ」
そう言って霧音は近づいてきた。真耶は近づいてきた霧音の頭に手を触れると邪眼を使う。そして、霧音の思考を読み取る。
「お前なら街の風景とか詳しく覚えてるだろ。思い浮かべろ」
真耶がそう言うと、頭の中に街が浮かんでくる。恐らく霧音が街を思い浮かべたのだろう。ここまで綺麗に覚えているのはすごいとしか言えない。
さすが暗殺者だな。記憶力は抜群と言ったところか。いや、これはスキルか?まぁどちらでもいいが、ここまで鮮明だとやりやすい。
「”物理変化”」
真耶は魔法をはつどうする。すると、地面は盛り上がり建物へと変化する。
「はい終わり。行くぞ」
建物を作るのはすぐに終わった。本当に一瞬だった。内装も全て元通りになっている。
「すごいわ。一体何者なの?」
「他言無用だ」
真耶はそれだけ言って街の入口まで歩き出した。国王が暗殺されたことを調べるために次の街へ向かう。向かう街はデュオラの街だ。
「忙しくなりそうだな」
真耶は小さく呟いて街を出た。
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