第47話 辛い真実
「さて、何があったのか話してくれる?」
男はそう言って窓の光を遮るカーテンを少し下げた。どっかで見た事あると思ったら、昔の刑事ドラマでよくやってたあれだ。
本当にやってる人いたんだ。とか思いながら真耶は話を始めた。
「かくかくしかじかでうんぬんかんぬんなんだ」
「なるほど、かくかくしかじかでうんぬんかんぬんか……真面目に言ってくれないか?」
「悪い悪い」
ダメだったか。こういうこと言ってたら何とかなるかと思ったのだがな。まぁいい、嘘をつくか。いや、本当のことを言うべきか。
悩むなぁ。本当のこと言ったら捕まりそうなんだけど……
「あ、先に言っておくけど、別に捕まえようとか思ってないよ」
え?じゃあなんでここに連れてきたの?こいつ本当に俺らのこと捕まえないの?逆になんでだよ。
まぁいいや。捕まえないならそれでいい。だが、だからといって本当のことを話すとは限らない。嘘をつくか、それとも……
「……フッ、まぁいいや。話すよ」
真耶はやれやれと言った感じでため息をつくとこれまであったことを話し始めた。
━━5分くらい経って真耶の話は終わった。その警部っぽい感じの人はその話を聞いて目を丸くする。
真耶はその様子を見ながら話を続けた。しかし、真耶は話しながらにして思った。街の半分を壊したのが自分だと。
(まぁ、多分あれだな。水素を爆発させたのところだな。量が多すぎたか)
真耶はそんなことを思いながら話を進める。
「そう言えば、結局何があったんだ?」
真耶は聞いた。その言葉で警部らしき人は静かになる。そして、厳しい顔をして話した。
「……国王が暗殺された……!」
「っ!?」
その言葉は驚きのものだった。そのせいで、全員言葉に詰まる。しかし、1人だけ別の理由で言葉を失っていた。
(嘘だろ……この国って王様いたの?初めて知ったんだけど)
真耶は心の中でそう思う。顔には出さないが、内心めちゃくちゃ焦った。横目で奏の方を見ると、かなり驚いているのが見える。しかしそれは、国王がいたからではなく死んだからの表情だとわかる。
この空間で、本当に真耶だけ国王がいた事を知らなかったのだ。
(嘘だろ。そんなこと何も気にしたことがなかったから知らなかったが、国王がいたのかよ……国王が暗殺……別に良くね?いや良くねぇか)
真耶は内心めちゃくちゃ焦りながらも何とか冷静になる。そして、少し考えた。
「なるほどな。国王暗殺が目的だとしたらあの女が来たこと自体がカモフラージュだったってわけか。あの街にいた人達全員の注意をあの女に向けさせることで暗殺がしやすくなるって感じか」
「よくそこまで分かったな。その通りだ。だから、あの女が何者か気づいたことを教えて欲しい」
警部っぽいひとはそう言ってきた。しかし、そう言われても気がついたことなどない。実際神眼で見てもあまり情報は入ってこなかった。
全て”???”になっていた。恐らく何かしらの妨害効果だろう。あの女の情報を手に入れるには、もう少しこの目を強くしないといけない。
「……ねぇ」
考え事をしていると、奏が耳元でヒソヒソと話しかけてきた。
「なんだ?」
真耶も誰にも聞こえないようにヒソヒソと話返す。……て言うか、ここから離れればいいじゃん。
「悪い、少し席を外す」
真耶はそう言うと、奏と2人で部屋を出ていった。警部っぽい人は、優しく微笑んで頷いた。……めちゃくちゃいい人だった。
「それで、なんだ?」
真耶は誰もいないところに行くと、話を戻す。すると、奏は用心しているのか、結界を張った。そして、防音魔法も使う。それを見て真耶は少し気を引き締めた。
ある程度結界を張ると奏は話を始めた。何重にも重なった結界はその声を外に漏らさない。それを確信して、本題に入った。
「まーくん、落ち着いて聞いてね。多分あの女の人……まーくんのお姉ちゃんだよ!」
「っ!?何?」
真耶の声が低くなる。そして、少し気が強くなった。そのせいで、いくつかの結界は壊れる。
「あ、悪い。”物理変化”」
真耶は結界を張り直すと話を戻した。
「どういうことだ?冗談ならお仕置だぞ」
「私がまーくんの前で、冗談でお姉ちゃんの名前を出すと思う?」
奏はかなり強い口調で言う。その言葉を聞いて確信した。前々からそんな気はしていたが、やはりそうだったか。
「アロマから聞いたのか?俺の本当のことを」
その言葉に奏は静かに頷く。それを見て真耶は殺気を強くした。いや、強くしたと言うより勝手に強くなってしまった。
「まだ俺の事を……あの時のことで懲りてねぇのかよ」
「ううん、あの時のことはすごく反省している。今裸で土下座しろって言われても出来るくらい反省している。勝手に調べたことも反省してる……」
「いや、お前は悪くないよ。俺か嘘をついたから悪いんだ。……フッ、俺は嘘つきだからね」
真耶はそう言って不敵な笑みを浮かべた。まぁ、別に勝手に調べられても良いんだけどね。今はそんなことは置いといて、姉貴のことだ。
「話を戻すが、なぜ姉貴だと分かった?」
「んー……なんとなく?」
真耶は即座に胸を掴む。そして頭を抱きしめて完全に固定する。
「え!?きゅ、急に恥ずかしいよ!」
「……冗談で言ってるのなら熱が出るまで胸をもんだあと気絶するまで口付けしてやるぞ」
「しゅ、しゅみましぇん!許してくらしゃい!」
恥ずかしさと恐怖、そして、意外と嬉しいという謎の気持ちで呂律が回らなくなってしまった。……それに、まーくんの胸の揉み方が……き、気持ち……良い……!
「真面目に答えろ。なんで分かったんだ?」
「なんとな……」
バチィィン!という音が響いた。そして、真耶の目の前にはお尻を真っ赤にして泣く奏がいる。
「ご、ごめんなさぁい!許してくらしゃい!うわぁぁぁん!まーくんとチューできると思ったんです!」
なんというやつだ。まさか私利私欲のためにおらを騙すなんて……て、俺も人のこと言えねぇじゃん。
真耶はそんなことを思う。そして、奏を立たせようと手を差し伸べた時に気がついた。なんであんな音が鳴るのだろうかと……
「奏!ちょっとお尻見せろ!」
「え!?な、なんで……!?」
奏の返答を聞かずに真耶はお尻を見る。すると、服が無くなっていた。その時気がついた。
「……力が暴走している……!」
こんなこと起こらなかったはずなのに……なぜ?……まさか!?
「奏、お前まさかこれが理由か!?」
「そ、そうだよ」
真耶の言葉に奏は泣きながら頷く。そして続けて話した。
「まーくんはお姉ちゃんと会うといつもおかしくなる。それは嘘じゃないって知っていた。だから今日も、あの女の人と戦ってる時に無意識に手加減してるのがわかったの。多分体が反応してたんだよ。お姉ちゃんは攻撃できないって」
「なるほどな。たしかに、それならこれまでのことも頷ける。急に力が暴走したことや、無意識に手加減したこと……」
真耶は自分で言いながら不思議に思う。しかし今はこれからどうするかを決めなくてはならない。
「ま、今はとりあえず知っておくだけにするよ」
これ以上は頭がついて行かなさそうだ。対策は後々考えればいい。真耶は頭の中でそう自分に言い聞かせて結界を壊そうとした。その時、奏から一言だけ言われた。
「ねぇ、まーくん。あのさお願いがあるんだけど……」
その時、ちょうど結界が壊れた。その音で上手く聞き取れなかったが、真耶だけは聞き取れた。
真耶はそれを聞いて、顔を暗くした。
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