第46話 戦後の雑談
真耶の右目が黄色く光る。そして、その目に写る時計は刻々と時を刻む。カチカチとなる音は静まり返ったその空間に鳴り響いた。
真耶はその右目で爆発があった場所を見つめる。そこには人影があった。その人影はまるで何も無かったかのようにその場に立っている。
真耶はその人影をよく見た。それはあの女性だった。どうやら爆発はあまり効いてないみたいだ。しかし、多少は傷つけることが出来るとわかった。
「まだ生きてるのか……タフなやつだ」
「ふふ、あなたが手加減なんかするからよ。ま、今日はこれくらいにしておくわ」
そう言って女性は投げキッスのように手を口の前に持ってくる。
「まさか……!」
そして女性はフッと息を吐いた。
「”物理変化”」
真耶は魔法を発動し間接的に地面を壁にする。そして、その壁になった地面に手を触れ鉄へと変える。これで防御は完璧だ。そう思った2秒後に黒い炎が真耶達を襲った。
鉄の壁は熱せられ高温になる。そのせいで、真耶の手は焼けただれる。さらに、鉄の壁は溶かされていく。真耶はその鉄の壁を溶かされないように再生し続けた。
奏達は水魔法を使ったり、結界を張ったりして炎から身を守った。しかし、到底守り切れる火力では無い。もし真耶が鉄の壁を作らなかったら全員丸焦げだっただろう。せいぜい生き残れても真耶くらいだ。
しばらくすると、炎は収まった。真耶もそれを確認すると鉄の壁から手を離す。その手を見ると、焼けただれ真っ赤になっていた。
「誰か水持ってない?」
「私持ってます」
そう言ってクロバは水魔法を使う。その水は真耶の手に触れるとすぐに蒸発してしまいあまり意味はなかった。それでも冷やさないよりはマシだろうと思い冷やし続けた。
「マヤさん、これって一体……?」
「あいつの魔法だな」
「どうしてわかったの?魔法が来るってことが」
「それはだな……」
真耶は全て説明した。別に隠す必要もない。今起こったことを全て話す。
説明するとこうだ。まず真耶はあの女性が謎のモーションに入った時に神眼の入ってくる情報の制限を解除した。ちなみに、普段神眼は入ってくる情報が多すぎていつもその量を制限している。これは、2ヶ月間の特訓により瞬時に切り替えることが出来るようになったのだ。
「マヤ様、なんで勝ち誇った顔をしてらっしゃるのですか?」
「いやね、気にしなくていいよ。話を続けるよ」
真耶は制限を解除するとすぐに分かった。あの女性が闇の炎をはなとうとしていることに。
まぁ、わかってしまえばこっちのものだ。壁を作って防ぐ。それだけでいい。
「だから俺はそうしたんだ。そしたら意外と強かったんでね。予想はしてたけどやっぱり再生させないとダメだったね」
真耶はそう言いながら自分の手を治していく。火傷のあとは完全に消えてしまった。
「そう言えばなんであの人はこの街に来たの?」
「……やっぱり私のせいですか?」
奏の質問に紅音は暗い顔をして自分を責める。
「……違うな。なんであの女がこの街に来たのかは知らんがお前のせいじゃない。そもそも国が違うし、アイツの職業は暗殺者じゃない」
真耶はそう言って頭を撫でた。その言葉と行動で紅音は顔を明るくする。そして、嬉しそうに抱きついてきた。
その様子を見た霧音は真耶に話しかけてきた。
「あなた達は一体何者なの?」
「いや、だからクラスメイトくらい覚えろよ」
「え?クラスメイト?もしかして……霧音ちゃん!?」
紅音はクラスメイトという言葉に反応した。そして、流れるように推理をして目の前の女が霧音だと気づいた。
「なんで私のことを知ってるの?」
どうやら霧音はまだこの女の子が紅音だと気づいていないみたいだ。まぁ、クラスメイトの顔さえ覚えてないようなやつに紅音が分かるわけが……
「もしかして紅音ちゃん!?なんでここにいるの!?それに、どうしてそんな体に!?」
……真耶は何も言えなくなった。なにか言おうとすると、なんとも言えない怒りの感情が湧き上がってくる。しかし、それ以上に疑問に思う気持ちが大きかった。
なんでわかるのだろうか?名前もまだ言ってないのになんでわかったのだろうか?
そんな考えで頭がいっぱいになる。
「紅音ちゃん、なんでそんな悪党と一緒にいるの?紅音ちゃんを襲ったんでしょ」
「襲われてないよ!逆だよ!助けられたんだよ!それに、襲ったのは私の方だし……」
紅音は自分で言いながら暗い顔をする。
「そんなことよりなんで真耶くんが分からないの!?クラスメイトなんでしょ!」
「う……、だって、だって……分からないんだもん……!」
「分からないって、期末とか中間のテストの1位の人は?」
「え?希望くんでしょ」
違ぇわ!俺だよ!希望が1500点満点中1405点、俺は1500点満点中1500点だ!間違えるなよ!
「じゃあ、全国模試1位の人は?」
「雷斗くんでしょ」
それも違ぇ!雷斗は全国模試で4問間違えて2位だ!1位は俺だ!満点で俺なんだよ!
真耶は霧音達の会話を聞いて心の中でめちゃくちゃ怒る。しかし、顔には出さないで微笑むだけだ。だが、アロマは真耶が珍しく怒っているのに気がついたのか抱きついてきた。そして、何故か胸をやたらと押し付けてくる。普通に意味が分からない。
「まぁ、俺はクラスのモブだから覚えられなくても良いよ」
「……うん……」
真耶の言葉に紅音は歯切れの悪い返事を返す。それに、何故か胸をやたらと押し付けてくる。真耶は少し困りながらもめんどくさいので無視をすることにした。
そんなことより今は街の修復だ。それに、なんであの女がこの街に来たのか原因を解明しないといけない。
そもそもあの技がなんなのかも調べないといけない。次にあった時確実に仕留められるようにならなければ……
「ここにいたのか!お前達!ちょっとこい!」
誰か来た。見たことあるけど全然分からない。クラスメイトという訳でも内容だが……
「我々はこの街の衛兵だ。お前達には国王暗殺の重要参考人として来てもらいたい」
「何?国王暗殺だと?どういうことだ?」
「それも、全て話す。今はとりあえず来てもらう」
衛兵はそれしか言わない。多分俺達を疑っているのだろう。それとも他に何か手がかりがないのか調べてるのだろうか。どちらにせよ行かないことには話は進まなそうだ。
「ま、だいたいこういう時は俺達が犯罪者にされるのがテンプレなんだけどね」
真耶は誰にも聞こえないように小さく呟いた。
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