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モブオタクの異世界戦記  作者: 五三竜
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第45話 謎の女

 真耶の声はその場にこだました。だが、いくらこだましようとも奏達は退いてくれない。しばらくの間奏達と紅音に挟まれる感じで倒れていた。


「ちょっと、あなた達ここで何してるの?」


「やっと見つけたな。君達は衛兵に差し出す」


「っ!?」


 そんな声が聞こえた。真耶は急いで起き上がると全員を抱いてその場を離れる。


「そういう訳にはいかないな。そもそも、なんでお前らが助かったのか知らないのか?」


「知らないな。そんなことより君達を衛兵に差し出す」


 こいつこれしか言わねぇじゃん。頭壊れてんのかな?まぁなんでもいいや。とりあえず記憶を消しておこう。


「おいお前ら、人の話は目を見て書くものだろ」


 そう言って邪眼を使おうとした。しかし、出来なかった。


 どこかで爆発音がする。そのせいで気を取られて発動しなかった。まぁ、どうせ発動しても見られなかったから意味ないが。その爆発音がした方向を見ると煙が上がっているのが見えた。


「行ってみるぞ」


 真耶はそう言って、煙に向かって走りだした。その後ろを奏達が追いかける。矢影達も少し焦ってはいたが急いで真耶の後を追った。


 真耶が着いた頃にはその場はかなり酷い状況だった。建物は破壊され煙が至る所から上がっている。さらに、建物があった場所には人が倒れている。


「おい!大丈夫か?」


「……うぅ……」


 どうやら死んではいないらしい。それは良かった。


 それにしても、一体何があったらこんなことになるのだろうか。街が半壊している。単なる爆発では無さそうだ。


 だが、神眼で見ても魔法を使った跡らしきものは見えない。かと言って魔法以外でこれほどの被害を出すのは不可能に近い。


「……一体……っ!?」


 真耶が瓦礫をどかしていると紫の光を放つ矢が飛んできた。真耶はそれをバク転容量で避ける。飛んできた方向を見ると、1人の女性がたっていた。その人は、紫の宝玉を持ち闇のオーラを放っている。


「君!何者だ!?」


 隣から矢影がそう聞く。霧音の姿がない。気がつけば、既に女性の背後で刃物を首に当てていた。さすがは暗殺者アサシンだ。


「あなたは何者?返答によっては今すぐ処刑するわ」


「うふふ……あなたにできるかしら?」


 女性がそう言うと霧音の服はビリビリに破かれた。そして、腹に3つの剣が刺さる。


「まずい!奏、結界を張れ!」


 真耶はそう叫ぶと女性に向かって大きく飛んだ。そして、矢影は霧音が刺されたことで動揺しその場に尻もちを着く。奏は結界を張ると、矢影をその中に魔力で掴んで放り込んだ。


「”物理変化ぶつりへんか”」


 真耶は自分の体を雷に変え、倒れていく霧音を捕まえだきかかえた。そして、女性と向き合う。


「うふふ、あなたなら少しは楽しめそうね」


「俺は楽しくないがな」


「あぁそうなの?でも、私が楽しいからいいのよ」


 そう言って再び紫の光を放つ矢を飛ばしてきた。真耶はそれを横に避ける。そして、そのついでに霧音を結界の中に投げ込む。


「”物理変化ぶつりへんか”」


 真耶は地面の石ころを2つ拾うと炎に変える。そして、その炎は大きくなり奏の放つフェニックスのようになった。


「あらヤダ、予想以上だったわ」


「そうか、それは良かったな」


 真耶はそう言って2体のフェニックスを放った。そのフェニックスは真っ直ぐ女性へと飛んでいく。そして、そのまま女性を炎で包み込んだ。


「まぁ、これで終わりだな。”物理変化ぶつりへんか”」


 真耶はまた石ころを拾うと今度は鉄の槍へと変化させる。その槍は先端が渦巻いていて殺傷力が高そうだ。その槍を真耶は女性に向かって突き刺す。


「っ!?」


 感触はあった。確かに殺したはずだ。だが女性はいない。代わりにそこに居たのは紅音だった。


「なぜっ!?」


「隙だらけですよ」


 紅音はそう言って真耶に馬乗りをして押し倒す。そして、自分の腹に刺さる槍を抜くと体の形が変わっていった。それは、紅音ではなく女性だった。


「これで終わりね」


 女性はそう言うと真耶に槍を突き刺した。


「まーくん!やめて!殺さないで!」


「いや、突き刺した後に言うなよ」


「え!?なんでここにいるの!?」


「何!?」


 その場の全員が愕然とする。何故か真耶が結界の中にいるのだ。そのことに、奏達だけでなく女性も動揺する。そして、真耶は結界から外に出た。


「なぜ俺がここにいるのか不思議なんだろ。答えは簡単だ。俺は初めから戦っていない。この下に隠れていたのだが、その上にこいつらが結界を張った。それだけだ」


 その言葉に全員呆れる。まさか偶然だったなんて夢にも思わなかっただろう。


 まぁ、それはそれで良いとして、この後どうするべきか……戦った所で街が壊れるだけだろう。


「逃げるっていう選択肢は……ないなぁ」


 逃げようと思っても矢影達が逃げないだろうな。このまま殺されるのを見るのもいいが、さすがにクラスメイトを見殺しにするってのも気が引ける。


「”物理変化ぶつりへんか”」


 真耶は自分の体を水に変えると手を掲げた。


「何をする気?無駄なことはやめた方が身のためよ」


「そう言うお前もな。”物理変化ぶつりへんか”」


 真耶は魔法を唱えた。何も触らず、何も無いところで魔法を発動した。2ヶ月前の真耶ならこんなことやっても意味なかっただろうが今の真耶は違う。


 真耶の魔法は発動した。空気が熱くなる。そして、その場は炎で真っ赤に染まった。真耶達のいる場所は瞬く間に火の海へと化した。


「何っ!?」


「帰ってくれると嬉しいんだけどね。”物理変化ぶつりへんか”」


 真耶は石ころを拾うとフラスコに変える。そして、中で再び魔法を使う。


「とりあえず、帰れ!」


 真耶はそのフラスコを女性の顔にぶつけた。すると、フラスコは割れ、中から何かが出てくる。


「これは……?」


 そう思った途端その場は大爆発した。白い煙が上がり辺りに水が飛び散る。さらに、とてつもない爆風が奏達を襲う。


「キャッ!」


 奏達はその爆風で結界の維持が出来なくなる。そして、全員は後ろに吹き飛ばされ背中を壁で強打した。


「いたた……あれ?まーくんは……っ!?まーくん!どこに行ったの!?」


「ここだ」


「まーくん!生きてたの!」


 なんと真耶は生きていた。あれだけの爆発があって傷1つない。それどころか傷はほとんど治っている。


 それより、なんであんな爆発が起こったのだろう。真耶はあの時フラスコをなげつけていたが、何が入っていたのだろうか。


 答えは簡単。水素だ。あのフラスコの中には水素が入っており、その水素が炎と反応して水素爆発を起こしたのだ。強い圧力で抑え込まれた水素はフラスコが割れた瞬間に一気に拡散する。さらに、炎で酸素が減っていた分そこに水素が行ってしまい炎と反応して大爆発を起こしたのだ。


 その爆発の威力は強すぎたのか、爆風で建物を壊してしまった。真耶はそんな爆発があった場所を見ながら右目にかかる髪をどけた。

読んでいただきありがとうございます。感想などあれば気軽に言ってください。

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