第44話 転生魔法と少女
……さて皆さんに1つ問題を出しましょう。異世界召喚と言えば勇者は最強でそのパーティーは当然強い。これがテンプレートと呼ばれるものです。では、そんな強い勇者パーティーが異世界の暗殺者と戦えばどうなるのでしょうか?答えは簡単。当然……
「勇者パーティーは負けてそのとばっちりが俺たちに来る」
「そんなの当たるわけないよ!」
「マヤさんカナデさん、そんなこと言ってる場合じゃないですよ!もうこっちに向かってきてます!」
あぁ、なんでこんなことになったのだろう。それは、少し前に遡る。
真耶達は女の子を助けたあとすぐに矢影達の元へ向かった。いかに暗殺者が強いと言っても矢影達は勇者パーティーだ。それに、レベルやステータスは見た感じ高かった。まだ戦ってるだろうと思った。
しかし違った。行ってみると暗殺者はもう居ない。さらに、矢影達はボロボロになっている倒れている。助けに行くと殺気を感じた。
「なんでこんなにも俺の期待を裏切るんだよ!”物理変化”」
真耶は魔法で地面を棘に変える。それは、とてつもない速さで暗殺者達を襲う。しかし、かすりすらしない。
「まーくん危ない!”ブリザードフラワー”」
真耶の目の前に氷の華が咲く。それは、真耶を暗殺者から守る。氷の華は暗殺者の体を少し凍らかせた。ついでに真耶の右足も凍らかせた。
「……て、やりすぎだバカ!うわぁ!おい!狙われてるじゃねぇか!」
動けなくなった真耶に向かって暗殺者は武器を投げてくる。
「クソッ!うぉらぁ!」
真耶は右足を砕きながらその場を離れる。そして、すぐさま再生させる。
「まーくん!ごめん!お詫びの印にこれあげる!”ゴットフェニックス”」
「バッ……!この野郎!」
真耶は飛んでくるフェニックスを飛んで避ける。スレスレのところを通ったフェニックスは後ろにいた暗殺者を丸焦げにした。
真耶は、奏の魔法の威力は壊れてるだろ!と言って怒りたい気持ちでいっぱいになる。そして、あることに気がついた。さっき奏が咲かせた氷の華から粉が出ていることに。
「……おい、お前やったな。氷の花粉を出してやがる。全員息を止めろ!肺が凍りつくぞ!後で1時間説教だからな!”物理変化”」
地面から炎が吹き出る。それは、氷の花粉ごと花までもやし尽くした。それのついでに暗殺者も燃やした。
「マヤ様!無事ですか?」
「ん?あぁ、大丈夫だ。てか、どこ行ってたの?」
「あのマヤ様を忘れ、それだけではなく犯罪者呼ばわりするクソ野郎とくそビッチを安全な場所に引きずった後ゴミ箱に捨ててきました」
「嘘でしょ?」
嘘だよね。そんな事しないよね。こういう時って普通に安全なところに運んで仲直りのパターンだよね。ゴミ箱なんて入れてないよね!
そんなことを思いながら行くと、呆れて何もいえなくなった。
「あれがマヤ様をいじめるものの末路です」
冗談かと思っていた。あんなこと言いながら実は嘘でしたーというのを望んでいた。しかし、そんな望みは聞き受けられなかった。
見に行くと、本当にゴミ箱に捨てられていた。しかし、まだ2人は起きてないようだ。
「チャンスだ」
真耶は早足で近づきゴミ箱から救出する。そして、すぐさまその場から離れ人気のない場所に向かった。
「マヤさん、カナデ様、暗殺者の素性がわかりました」
唐突に声をかけられる。フェアリルだ。ここに来る途中からずっとカナデにデレデレで何も話さなかったがどうやら調べてくれたらしい。
「どこだ?」
「ガルマ王国の者かと」
ガルマ王国……それは、今真耶達がいるセント王国と敵対する国。確か、闇の魔術を研究しているとか。セント王国が勇者達の召喚を初めてから転生者を増やしているらしい。
「転生者……」
そう、この子は転生者なのだ。だからこの子もガルマ王国の暗殺者と考えていいだろう。今は違うがな。
「確か、転生には儀式が必要だったな」
「そうなんですか?私はあまりそういうのに詳しくないので……」
「確か、強制転生魔法を使って別の世界……いわゆる異世界からこの世界に魂を引き抜くらしい。だから、向こうの世界では突然死したことになっている。そして、引き抜いた魂はこっちの世界に来た時無作為に形成された体の中に強制的に入れこまれる。前に本で読んだよ」
と言うのは真っ赤な嘘で、たまたま転生者についての噂を聞いたからルーナに博識スキルを使って貰って確かめただけだ。そしてついでにそのことを邪眼を使って忘れてもらった。
まぁ、そんなこと言ってもいいんだが、言ったらめんどくさくなりそうだな。そんなこと許さないーとか、助けに行くーとか、誰をどう助けるのかも分からないのに言い出しそうだ。
まぁ、そんなことは置いといて、この子の名前とどこから来たのかはきちんと知るべきだな。あと、連れていくかも考えないといけない。
「君達、名前は?」
「……無い……です」
「あー、こっちの名前じゃなくて、向こうの世界にいた時の名前だよ」
真耶がそう言うと女の子は少し驚いた表情をして泣き出してしまった。普通ならここで慌てるだろう。それがテンプレだ。だが違う!俺はオタクだからそんなことで慌てたりしない!
真耶は一切とりみだすことなく普通に聞いた。
「辛かったかな?嫌なら言わなくてもいいよ」
「……うぅ……辛く……ないでしゅ……」
女の子は泣きながら真耶に抱きついてきた。そんなに辛かったのだろうか?それとも俺が怖いのか?それはそれで俺が辛いな。
「わ、私……は、恋桜紅音《紅音》……です」
「っ!?」
真耶はその名前を聞いて言葉を失った。なぜなら、その名前を日本にいた時から知っていたからだ。
少し話が逸れるのだが、俺はテストは全て1位だった。期末も中間も、ましてや全国模試も。だが、俺はモブだから誰も話しかけてこなかったが、唯一この恋桜紅音という人物が俺に話しかけてきた。
まぁ、話したのはその日だけなんだけど。とりあえず俺は学校の生徒の名前は全員覚えている。だから紅音という人も知っている。
「恋桜紅音……俺が誰かわかるか?」
「え?あの……その……分かりません。……殺さないでください!もう痛いのは嫌なんです!お願いします!」
「大丈夫、殺さないし殺させないよ。月城真耶って覚えてるかな?あと、夜桜奏も」
「つきしろ……まや……あ、もしかしてまやくんですか?」
やった、覚えてて暮れた。なんだか嬉しいな。
真耶は優しい顔で話していたからか、その表情のまま心の中で喜んだ。
だが、問題はここからだ。紅音をこれからどうするべきか、連れていくべきかそれとも置いていくべきか。いや、答えは既に決まってるよな。
「連れていきたいんだろ。そう目で訴えかけるな」
真耶がそう言うと、後ろの方で目をキラキラさせていた奏達が飛びついてきた。そのせいで真耶は前に倒れ込む。そして、当然目の前に紅音がいるから巻き込んで押し倒す形に倒れ込む。
「痛いわ!あぶねぇだろ!紅音、大丈夫……か……え?」
紅音を見ると、顔を真っ赤にして真耶に抱きついている。そして、目からは涙がこぼれている。それほど辛かったのか……
「紅音、泣きたい時は素直に泣いていいよ」
真耶がそう言うと紅音は泣き始めた。そして、真耶の胸に顔を埋めた。
「てか、早く退けぇぇぇぇぇ!」
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