第41話 奴隷の少女
━━私はいつも通り学校に登校していた。私が行ってるのは希望くんと同じ学校。違うクラスとは言えど、希望くんとは仲が良い。
「ねぇ!聞いた!?希望くんのクラス神隠しにあったんだって!」
え!?どういうこと!?希望くんのクラスが神隠し!?
話が突拍子もなくてよく分からなかった。だが、クラスに行ってみると確かにいない。本当に神隠しにあったのだった。
学校は神隠しが起きたせいで早帰りとなった。警察が入り調査を始めた。私はその帰り道ずっとそのことを考えていた。
何が起こったのだろうとか、なんでこんなことになったのだろうとか。すると、足元に光る何かが浮かんでいるのに気づいた。それはすごく強い光を放つと、私を異世界に転生させた。
「……あれ?ここは……」
「何てものを呼んだんだ!勇者が召喚されたと聞いて対抗して転生させたら亜人、さらには獣人ではないか!」
「ダメだな。ステータスは高いが獣人だしな」
「亜人は奴隷。なぜこんなものを呼んだ?」
「まさかこうなるとは、奴隷にして働かせるのがいいな」
そんな会話が聞こえる。
どういうこと?獣人って……っ!?
その時気がついた。自分の体が人間じゃないことに。そして、後ろから首輪のようなものをつけられた。意味がわからないし、人につけるなんて高校生でゆとり世代の人からしてみれば恐怖でしかない。
「ちょっと何するんで……いだぁ!いだい!いだいよぉ!やめでぇぇぇぇぇぇぇ!」
突然強烈な痛みを感じた。それは、死にたくなるほどの痛みで私はヨダレを垂らし涙を滝のように流しながら叫んだ。その痛みはしばらくすると収まったがまだ少し痛い。
私はどうやら本当に奴隷にされてしまったらしい。
「こっちに来い」
私は首輪を引っ張られながら牢屋に放り込まれた。そして、それから私の地獄の生活が始まった。
━━あれから2ヶ月が経った。真耶もあの時から成長している。ステータスこそ変わってはないが、戦闘技術は上がったはずだ。攻撃がなめらかになったり、素早く動けるようになったりした。他にも色々上達したが、今は言わなくてもいいだろう。
このスタットの街も随分変わった。あれだけ壊された街も全て修復されている。というか壊れる前より綺麗になった気がする。どうやら強大な精霊族の軍を退けた街として有名になったみたいだ。それで、人が多く入って来て活気溢れる街となったわけだな。
そんな中真耶は宿の自室で荷物を一纏めにしている。まるで今から旅にでも出る人のようだ。
真耶は荷物をまとめると宿を出てギルドに向かった。その道中もかなり人がいる。少し歩くとギルドについた。扉を開け中に入る。
「あ!まーくん遅いよ!」
入るなりそんな声が聞こえてきた。真耶はそれに少し微笑むといつも通りの挨拶をする。
「おはよう、今日もいい朝だね」
「もうお昼だよ!」
「マヤさんのねぼすけです」
「マヤさん、あんま寝すぎると起きれなくなっちゃいますよ」
「マヤ様の寝顔がずっと見れていいです♡」
皆は色んなことを言ってくる。これもいつもと同じ。
「仕方ないだろ。ベッドの近くに誰かがナスを置いてたんだから。……はぁ、じゃあ出発するか。てか、馬車の時間が昼からなんだから良いだろ」
そう言って6人はギルドをでる。
「向かうはメテオの街だ」
『ん!』
6人はそう決意すると、馬車の停留所まで移動した。そして、あることに気がついた。
「もう行き始めてね?」
「え?でも、時間までまだあるよ」
「あ、そういえば、今日はちょっと早いって言ってたよ」
……は?嘘だろ。じゃああれマジで言ってる奴じゃん。やばい。乗り遅れるじゃん。
「てか、はよ言えやー!」
真耶は咄嗟に走り出した。しかし、馬車は行ってしまう。真耶は猛ダッシュして何とか馬車の運転手を止めた。そして、5人を呼んで何とか乗り込んだ。
「済まない、乗せてくれて助かったよ」
「いや良いよ。誰にでも失敗はあるさ」
馬車の操縦士の人が優しくて助かった。乗せてくれなかったら出発が明日になるところだったよ。
真耶は心の中でそう思いながら息を整えるため椅子に座った。それから少し進んだくらいのところで問題が起こった。道の真ん中に人がたっているのだ。
「誰でしょうか……?」
「俺が見てくる」
そう言って真耶は前に大きく飛んだ。そして、その人の前に立つ。どうやら女の子らしい。フードを被っていて顔は分からないが、胸がある。
「ねぇ、君は……っ!?」
その子は突然真耶を攻撃した。
━━1時間前……
「起きろ!」
バチィィィン!という悲痛な音が響いた。その音が鳴った方を見ると獣人の女の子がいる。女の子は身体中に傷があってボロボロだ。
あの日から2ヶ月が経った。その間、女の子は奴隷として調教された。鞭で背中やお腹、胸、お尻を叩かれたり、3日に1回くらい男のおもちゃになったりした。
そして、逆らえば……死にたいと思うほどの痛みが襲う。出来なければお仕置き、逆らえば罰を受けるという地獄の日々を過ごしていた。
そして今日、牢屋に男が入ってきた。男は絵を見せてきてこう言った。
「何故こんなに危険な男がブラックリストに載ってないのかが分からない。この男……マヤを殺せ」
マヤ……聞いたことある名前だ。でも、分からない。そもそもそんなことはどうでもいい。殺さなければまたあの痛いのがくる。死にたいほどの痛みが体を襲う。
殺す、殺す、絶対に殺す。失敗は許されない。失敗すれば痛いことをされる。恥ずかしいこともされる。
女の子はマヤという男を殺すことを決めた。
そして今、真耶の目の前にはその女の子がいる。女の子はとてつもない殺気で真耶を殺そうとする。
「殺す、殺す、殺す……」
まるで機械のようにそう言って攻撃してくる。真耶はそれらを全て間一髪のところで避けながら後ろに後ずさる。
「殺す!」
女の子の手が真耶の防御をすり抜け腹に当たった。しかし、その爪が刺さることは無い。
「捕まえた。どうしてこんなことするのか聞かせてもらうよ」
そう言って体を拘束する。真耶は自分が防御しきれなかった振りをして女の子を捕まえたのだ。
「嫌だ……来る……痛いのが来る……」
女の子はそう言って怯える。痛いのだと?俺はそんなことはしない。時と場合によるがな。
真耶はそんなことを言って声を出そうとした。しかし、途中でやめた。なぜなら女の子が突然痛がり始めたから。
「いだぁぁぁぁぁぁい!もうやめてぇぇぇぇ!いだいのやだぁ!やめでぐらざぁぁぁぉい!」
「おい!大丈夫か!?」
真耶は少し焦ったが落ち着き優眼を使う。しかし、女の子の様子は何も変わらない。
「一体なんなんだ……?」
「マヤさん!その子は奴隷です!首輪を外してあげてください!」
「首輪!?わかった!”物理変化”」
真耶は首輪の一部を壊して首輪を外す。すると、女の子の痛みが収まったのか荒い息をあげているものの落ち着いた。
「おい、大丈夫か?ヨダレとか涙とか出てるぞ。これでふ……っ!?」
突如矢が飛んできた。それは、真耶の顔の横に来ると、真耶の自動スキルにより消された。
ちなみにこれは、2ヶ月間の特訓の賜物である。
崖の上を見上げると、人影がある。誰かいるみたいだ。真耶はその人影を睨みつけ殺気を強くした。
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