第3話 新しい場所
「ここは……街みたいだね」
「みたいなじゃなくて街だろ」
2人は街に着いた。その街は人が多く色んな種族の人がいる。例えば、エルフや亜人などだ。
(てか、ここどこなの?マジでわかんねぇぜ)
真耶の頭にそんな考えがよぎった。しかし、考えても仕方がない。
「ここは、前に進もう。まずはギルドだ。そこで、俺達がこれからすること、そして目的を話す」
「もう決めたの?」
「こんな状況になったからな。異世界だと言ってはしゃいではいられない」
真耶はそう言うと足を進め出した。それについて行くように奏も足を進める。しばらく歩くと少し大きな建物に着いた。
「恐らくここがギルドだろう。入ってみるぞ」
真耶はその建物の扉を勢いよく開いた。その中にはごつくて怖い人たちが沢山いる。真耶は少し中を確認すると空いた席を確認した。いくつかあるのでそこに座ることにした。
「それで、これからどうする?ここがどこかは分からねぇし、それに、いつあの男達が来るか分からない」
「……」
「そう暗い顔をするな。俺達の目的は皆を助けることでも、殺すことでもない。まぁ、帰る気もないけどな」
真耶はそう言った。そのせいか、奏は顔を曇らせる。流石に帰らないは言いすぎたかな。
「悪い、お前が帰りたいなら帰る方法を探すが……」
「ううん!いいの!帰らなくてもいいよ……」
「お前、もしかしてあれか?家のフィギュアとかタペストリーが気になるから帰りたいのか?」
真耶がそう聞くと体を震わせそっぽを向いた。こいつ図星か!
「そんなもの後でいくらでも作ってやるよ」
「ホント!?やったぁ!あ、じゃあこれからどうするの?」
「だから、それを今話してんだろ。……はぁ、今決めた。これから俺達はギルドに加入する。そこで、活動しながら情報を収集する。幸いなことに俺達はモブだったから気づかれてすらいないらしい。多少騒いでも問題はない……と、思う」
真耶はそう言った。確証はないが多分大丈夫だろう。
「と、言うことで登録に行こう」
真耶は立ち上がると周りを確認した。どこを見ても登録するような場所は見当たらない。仕方がないので周りの人に聞くことにした。
「すまない、冒険者になりたいのだがどうすればいい?」
「あ?」
凄く怖い顔をされた。聞き方がまずかったかな?それとも、普通に冒険者はこういう顔をされるものなのか?だから、登録する場所が無いのか。
「悪いことを言ってしまった。すまない」
「あ?」
また怖い顔をされた。どっちなんだよ、とか思いながらこっちは困った顔をした。すると……
「悪い!悪い!そんな困らせる気はなかったんだ!」
男はそう言って謝ってきた。マジでなんなの?情緒不安定すぎるだろ。真耶はそんなことを思いながら男を見つめた。すると今度は男が困ったような顔をして言ってきた。
「あ、あの……そんなに怒ってるの?ちょっと試しただけのつもりだったんだけど……」
「いや、怒っては無い。俺が冒険者としてやっていけるか心配だったんだろ」
「そこまでわかってたのか……本当に悪かったな。登録するならあっちだ。よろしくな!相棒!」
「あぁ、ありがとう。助かったよ。あと、相棒になる気は無いから心配すんな」
真耶は爽やかな笑顔で親指を立てそう言う。そして、言われた場所に行ってみた。するとそこには借金する時の窓口みたいなものがあり人がいる。そして、凄い美少女だ。だが……
「あ!冒険者希望の方ですか?登録ならここでできますよ!」
「そうか。なら、登録をお願いしたいのだが……お前、本当に出来るのか?」
「む〜!見た目で決めつけてるでしょ!私これでも16歳よ!」
そんなことを言われた。確かに見た目で決めつけたのは悪かった。しかし、その子は背が小さく子供のようだ。それに、やっぱり俺より年下だった。
「まぁいいわ。ゴホンッ、では、登録を行います。あの……お手柔らかに・・・お願いします」
そう言って女の子は服を脱ぎ始めた。
「何してんの?」
「と、登録ですよ!恥ずかしいから急いでください!」
「急げとか言われても、やり方がわからん。言い忘れていたが、俺達は少し記憶が曖昧でな。ここに来る道中魔物に襲われてしまった」
「そ、そうだったんですね!では、1から説明しますね。私達ギルドの受付嬢達は特別な魔法を使えます。その魔法を使うことでその人のステータスプレートを作成し登録できます」
「それで、その魔法を使うのにそういう格好をしないといけないわけか」
真耶がそう言うと女の子は頷いた。真耶は1度自分のステータスプレートを見つめて再び女の子に向き合った。
「ステータスプレートはある。これがある場合はどうしたらいいんだ?」
「あ、あるんですね。でも、やることは変わらないので・・・こっちに来てください……」
来てと言われても壁があっていけない。それに、奏を1人にする訳にはいかない。
「連れも一緒でいいか?」
「はい!」
真耶は奏を連れて近寄った。どうやって向こうに行くかを聞こうと思ったら女の子から襟首を掴まれた。
「は?おい何を……うわぁっ!?」
真耶が聞こうとするとそのまま窓口の中に連れ込まれてしまった。その後すぐに奏も連れ込まれたため、真耶の上に落ちてきて大変なことになりそうだった。
受付の人は、奏を連れ込むとすぐに外から見えないように扉を占める。そして、奏の手を掴み立ち上がらせた。奏は、立ち上がるなりすぐに真耶を見て起き上がらせようとするが、真耶は寝転がったまま動かない。
「ま、まーくん!?大丈夫!?」
奏は当然のように心配して書けよる。
「……」
「応答がない。死んじゃったかな?」
死ぬか!とツッコミたいが結構ガチめにやばい。意識が遠のいていく。
「……フッ」
真耶は少し笑うと気絶した。
『や〜!死なないで!死んじゃやだよ!』
奇跡的にハモった。2人は泣きながら真耶の体を揺さぶる。しかし、起きない。
「うわぁぁぁぁん!まぁぁぁぁぁくぅん!」
「お、おい……なんかあったのか?」
「この窓口だけ凄い泣き声が聞こえるぞ」
「大丈夫ですか!何かあったんですか!?」
その場にいた冒険者達が心配してよってきた。全員は窓口の中を見ようとするが、閉まっているため見えない。聞いても、泣いていて返事は帰ってこない。全員の頭の中に良くない考えが浮かんだ。
「大丈夫ですか!?」
「今すぐ開けてください!」
そう言ってドンドン窓を叩く。ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン……
「うるせぇよ!」
「わぁぁ……まーくんが生きてた!」
「良かったです!生きてて良かったです!」
2人はそう言って抱きついてきた。まだ、体が重い。それに頭が凄く痛い。しかも、抱きつかれてさらに痛みが強くなった。
「死んでねぇよ。それに、俺は何があっても死なない」
「ドキュンッ!」
「ん?なんか言ったか?」
真耶がそう聞くと奏はすごい速さで首を横に振る。
「お前、顔赤いぞ。本当に大丈夫か?」
そう聞くと、今度は縦に首を振る。
「なら良いが……そんなことより、登録はどうするんだ?」
「あ、それはですね、私が魔法を使えばいいのですが……その、条件が……」
「条件?言ってみろ。俺に出来ることは何でもやってやるよ」
真耶はそう言ったが、何だかモジモジして中々言わない。更には顔を真っ赤に染める。なんか、だいたいわかったぞ。
「うぅぅ〜……条件が……私と、エッチなことを……」
やっぱり!なんでこんなにこの世界は俺の予想をぶち壊すんだ!?テンプレだったらチャチャッと終わるだろ!
真耶はそんなことを考えながら平然そうな顔と格好をする。
「どうしたの?まーくん、なんかおかしいよ」
「どうもしてないさ。俺は平然と聞いているだけだ」
「……?」
真耶がそんなことを言っていると女の子は顔を真っ赤にして泣き出してしまった。
「わ、悪い。他の人達もこうなのか?」
「違います!私だけが……こうなんです!だから、皆が私にはさせないように……冒険者の方達もわかってて……」
なるほどなと思った。だからあの人はやたらと怖い顔をしてきたのか。しかし、ここで登録出来ないと困る。真耶は少し考えて話を聞くことにした。
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