第38話 因縁の戦い
「きゃあっ!」
部屋が光に包まれた。その光は収まるところを知らない。
「なんだこれ?目が痛いんだが……」
「奴隷契約をするといつもこうなる。すぐに収まるはずだ」
支部長がそう言うと、確かに光はすぐに収まった。しかし、光が強すぎたのか目が眩む。
「滅びの呪文くらい光が強い」
真耶は小さくつぶやく。しかし、それがわかる人は奏しかいなかった。そのせいか、全員から不思議な顔をされた。
まぁいい。とりあえずステータスプレートを確認……しなくていいや。やっぱり目の前に文字がでてきた。
「よし、これでフェアリルは俺のものだ。よろしくな」
そう言って手を伸ばす。握手をしようとしているのだ。しかし、フェアリルは少し怒った顔をすると奏の後ろに隠れる。全く意味がわからない。
まぁいい、後でどうにかしよう。そんなことより街の修復だ。
「支部長、街の中はどんな感じなんだ?」
「かなり壊されたな。治してくれるのか?」
「あぁ、俺にも非はあるからな」
そう言って入ってきた所まで歩こうとする。しかし、フェアリルに足を捕まれ転倒してしまった。一体何を考えているんだ?
「おい!」
「ひっ!ごめんなさい!」
いきなり怖がらせてしまった。まぁいい、とりあえず外に行こう。……今日はまぁいいが多いな。
「奏、フェアリルを見ててくれ!」
「どこに行くの?」
「ちょっと外に……っ!?」
真耶は突如嫌な気配を感じた。しかし、真耶以外の人は誰も気がついていないらしい。かなり強い気配だが、1度だけ感じたことがある。
「ちょっと!暴れないでよ!」
突如そんな声が聞こえた。どうやらギルドの受付のお姉さんが誰かと揉めているようだ。真耶は急いで駆けつける。行ってみると、クロエが暴れていた。
「やめて!今はダメなの!敵がいるの!離して!」
「クロエ!お前も気づいたのか……お前はじっとしてろ。俺が行く」
「行ってくれるの?」
真耶は静かに頷いた。すると、クロエは落ち着きを取り戻す。真耶はクロエの頭を撫でるとギルドを飛び出して行った。
(どこだ?どこに……っ!?)
街の広場に人が立っていた。その人は男で背中に羽が生えている。精霊族の生き残りかとも思ったが、顔を見て分かった。おそらく、あの嫌な気配を放ったのもこいつだろう。
「決着つけようぜ、スフェル」
「どうせ私が勝つ。そんな気合いは入れなくてもいい」
「へぇそうかい。だが、俺を舐めるなよ。”物理変化”」
早速攻撃を仕掛ける。地面は鋭いトゲとなってスフェルを襲った。しかし、途中で全て粉々にされる。
どういう技だろうか?この技は見たことがない。こいつとはあまり戦ってないが、こんなに強いとは思わなかった。やはり俺が来てよかったな。
「すぐに終わらせる」
カチンッ、という音がした。すると、真耶の右目の時計が早く動き始める。すると、それに応じて真耶の動きも早くなった。
「っ!?これは……!?」
スフェルはこの技を知らない。初めて会った時は真耶はこの目を持っていなかったからだ。だから、今この2人は会うのは2回目だが、戦うのは初めてに近い。
「グハッ!」
真耶は素早い動きでスフェルを攻撃する。スフェルはそのスピードについていけず、ただ切られるばかりだ。
さらに、スフェルは気がついた。自分の動きが遅くなっていることを。手をあげようとすると、いつもの2倍時間がかかる。そんなイレギュラーに戸惑いながらもすぐに慣れたスフェルは魔法を放った。
「”ビックバン・ファースト”」
そう言って地面に手を着くと、手を着いた部分が爆発する。その爆発は、広場の半分以上を飲み込むと、焼け野原に変えてしまった。
「危ねー……ギリギリ当たるところだったぜ」
真耶は、たまたま爆発してないところにいて助かった。すごい強運だ。しかし、そう何度も運は続かない。早めにケリをつけなければ。
「”物理変化”」
真耶の右手がバチバチと雷を放つ。真耶はその雷を確認すると再び走り出した。雷が地面をえぐる。
「”ビックバン・セカンド”」
スフェルは魔法を唱えた。すると、爆発が2つ起こる。真耶はその爆発に巻き込まれながらも、雷を維持し続けた。そして、間合いに入る。
「終わりだ!」
真耶の右手はスフェルの胸を貫通した。雷がまるで花火のように煌めく。そして、引き抜くとスフェルは膝から崩れ落ち絶命した。
「やっと終わったか……」
真耶はそう呟くとその場に座り込む。そして、完全に気を抜いていた。
「……まだだ……”ビックバン・ファイナル”」
「っ!?」
死んだと思っていたスフェルがそう言った。さすがに驚いたがそれどころでは無い。なんと、スフェル自身の体が赤く光っている。
「やばいっ!」
真耶は逃げようとする。しかし、気を抜いていたせいか、なかなか起き上がれない。しかし、スフェルの体はさらに赤くなっていく。もう爆発する。そう思った時、不意に体が軽くなった。
「マヤは死なせない!」
そう言って現れたのはクロエだった。クロエは真耶の体を掴むと遠くに投げる。そして、そのまま爆発に巻き込まれてしまった。
「クロエ!」
真耶は着地するとすぐに手を伸ばす。しかし、届かない。そして、すぐに爆風が来た。そのせいでさらに遠くに飛ばされる。
「うぉあ!」
真耶は2、3回バウンドして壁にぶつかり止まった。背中が痛い。それに、お腹も……あ、何か刺さってる……
「っ!?これは……!」
それは、1度見たことがあるものだった。それを見て真耶は言葉を失う。それは、クロエが龍化した時の爪だった。
「うそ……だろ……!」
真耶は急いで爆発した所まで駆け寄る。そこは、酷く荒れていてあったものを全て吹き飛ばしてしまっていた。
真耶はそんな中クロエを探す。しかしどこを探してもクロエは見つからない。
「どこだ!?返事しろ!」
しかし、返事は帰ってこない。こんな時探知魔法があればいいのにとか思うが無いものはないのでしょうがない。神眼を使い大量の情報を頭の中に入れていく。
しかし、見つからない。やはり、自分で探す他ないみたいだ。真耶は爆発した場所を組まなく探した。しかし、そこには何も無い。
「まさか、爆発で消し飛んだのか……!」
そんな考えが頭をよぎる。真耶は不安になりながらも必死に探した。5分ほど探すと人影を見つけた。それは、爆心地からかなり離れた場所だった。
「クロエ!大丈夫か!?」
真耶はそう叫んで近づく。すると、体全身に火傷をおったクロエが倒れていた。
「クロエ!」
「マヤ……良かった。生きてたんだ……」
「それはこっちのセリフだ。大丈夫か?どこを怪我した!?」
そう聞くが、クロエは何も言わない。それで分かった。もう……クロエは……
「ねぇ、マヤ……」
真耶がそんなことを考えていると、クロエが何か言ってきた。真耶は優しく微笑んでその話を聞いた。
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