第30話 再びスタットの街へ
それから1日が経った。真耶の体力と魔力は回復し立ち上がることが出来るくらいまでにはなった。しかし、まだ万全では無い。気を抜くとすぐに力が抜けてしまう。
「マヤ様!ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!」
そう言って飛びついてきたのはアロマだった。飛びつかれたせいで真耶は倒れる。
「あ!ごめんなさい!」
「いや、良いんだが……なんかお前、回復魔法かなんか使ってねぇか?」
「あ、気づきました?私の特殊スキルのせいなんですよ!ヒーリングフィールドを展開できるんです!」
すごいな。アロマの周りならどこでも回復できるということか。恐らく回復量は展開する範囲の大きさで決まるのだろう。
「あれ?マヤ様、その目はどうしたのですか?」
「目?」
「はい」
目がおかしいと言う。だが、これといって何も変わらない。アロマは手鏡を取り出して見せてきた。
「時計?これって……時眼?なんで……あ」
力の代償……この目の力には多くの代償があった。だが、それは当然なのだ。時間の流れを変えるのだから。この力の代償の1つ目は、1度使うと二度とその目は戻らない。自分の右目は常にこの世の時間を刻むことになる。2つ目は、体が状態異常に陥る。今は目が完璧に見えない。視界が歪んでいる。恐らくこれが今回の代償なのだろう。そして3つ目は……
「ん?マヤ様、どうかなさいましたか?」
「いや、何でもない」
今は言わなくてもいいか。下手に言って心配させるわけにもいかないしな。それに、俺が使わなければいい。これに対抗できるスキルを手に入れるまで使うのはやめておこう。
「てかさー、まーくんは説明してくれないの?」
奏は怒りながら聞いてきた。一体なのんのことか分からない。
「その子よ!その子は一体誰なの!?」
そう言って抱きついてくる。あー、説明しないといけないのかぁ……あ、てか、結局あれはどうなったんだろうか。やるのだったらいつやるのだろうか。
「ちょっと!無視しないで……ふがっ!」
「うるせぇ!説明するから静かにしろ!」
真耶はしつこく聞いてくる奏の鼻に鼻フックをかけて静かにさせた。そして、説明した。
「かくかくしかじかでうんぬんかんぬんなんだよ」
「え……?じゃあ、2人は結婚するの……?」
「そういうことだ」
奏はそれを聞いて静かに涙を流し始めた。真耶はそれを見て少し悩む素振りを見せる。そして、ルーナとクロバの方に目をやると2人も泣いていた。
「なぁ、アロマ……こういうのって、嫌いか?」
そう言って静かにアロマにだけ聞く。すると、アロマはにっこり笑って
「良いよ」
とだけ言った。真耶はそれを聞いて静かに微笑むと魔法を唱える。
「お前ら、褒美をくれてやる。左手を出せ」
真耶は振り返るとそう言った。それを3人は不思議に思いながらも左手を出す。その手の薬指に、真耶は1人ずつ指輪をつけていった。
「俺が迷惑をかけたな。これで許してくれないかな」
『……うぅ……うわぁぁぁぁん!ごめんなさぁぁぁぁい!』
「私達が悪かったよぉぉぉ!」
「良いよ。俺も悪かったからさ」
そう言って3人に抱きつき頭を撫でる。それから3人は1時間程度泣き続けて疲れきったのか泣き止んだ。
「マヤ様、これからどうしますか?」
「まずはギルドに行こう。式をあげるのは今度でいいか?」
「いつでも大丈夫です!」
2人はそんな会話をして立ち上がった。それと一緒に3人も立ち上がる。
「あ、ちょっと待ってください」
アロマはそう言って部屋を出ていく。そして、5分後に戻ってきた。
「どこ行ってたんだ?」
「ちょっと許可をとってました。今日から一緒に旅をするので」
「それで良かったのか?」
「それはもちろん。なんせこの宿はギルド直属なので」
真耶はそれを聞いて微笑むとアロマの頭を撫でる。そして、部屋を出てギルドに向かった。
「うわぁっ!」
「何!?どうしたの!?」
ドアノブに手をかけたところで突然真耶が叫んで倒れた。見ると、ドアにナスの模様が描かれている。
「マヤ様……もしかして……」
「おい誰だよ!?俺の視界にナスを入れるなって言っただろ!」
奏達はそう言って怒る真耶を見て呆れて何も言えなくなった。そして、静かに部屋から出ていった。真耶は恐る恐る扉に手をかけると急いで部屋から出ていった。
━━ギルドに着くと、人だかりができていた。なんだかその光景をちさ1度見た事があるような気がした。
「あ!マヤ!君は遅いぞ!僕の腹に穴を空けておいて自分はゆっくり休んでいたのか!?まさか!アロマとイチャイチャやっていたのか!?」
「してねぇわ。俺も大技を使いすぎて倒れてたんだよ」
「信じられないな。それならなぜアロマが隣で抱きついているのか!?」
シュテルはそう言って怒鳴ってくる。なんだかこいつ、戦っている時と全然キャラ違うのだが。なんか勇者みたいになっているのだが。てか、やっぱり俺は皆に知られていない。ギルドの中の人々は全員シュテルの話しかしていないのだが。さて、これらはどういうことだろうか?実に不思議だ。
「そう言えば、君のことをギルドの支部長が呼んでいたぞ」
「何?」
シュテルはそんなことを言ってきた。嫌な予感がする。真耶はシュテルにお礼を言うと奥の方まで進んだ。奥まで進むと支部長が椅子に座っていた。ただ事ではなさそうなのでそのまま話を聞いた。
「やっと来たか。マヤ、お前にスタットの街のギルドから救援の要請が来ている」
「っ!?もう来たのか……!」
「行ってくれるのか?」
「まぁ、行かない訳にもいかないし。それに、約束したしな」
そう言って振り返る。
「行く前に1つ言っておく。今回のことはお前は何も悪くない。お前が前に会ったと言われる龍人族の女、そいつをおってきたらしい。だから、お前のせいじゃない」
「そうか……それなら、その龍人族には罰を受けてもらわないとな」
「フッ、やっと前のお前に戻った気がするよ。会ったばかりだが、なんだか会った時と雰囲気が変わってたからな」
真耶はそう言われて不敵な笑みを浮かべるとギルドを出て、スタットの街に向けて走り出した。他の4人もそれについて行くように走り出した。
━━一方その頃スタットの街では……
「急げ!早くしないとこの街は攻め落とされるぞ!」
冒険者は皆戦いに備え準備をしている。
「クソッ!これも全部あいつのせいだ!あいつが呼び寄せたんだ!」
1人の冒険者がそう言うと、全員が触発され騒ぎ出す。全員ギャーギャー騒ぎ全く防衛が進まない。
「マヤ……なぜこんなことになったんだ……」
支部長は思い返す。あの時、占い師が突然言った。マヤが何か問題を起こしたと。そして、いずれ精霊族が攻めてくると。それで皆はマヤが精霊族に攻撃したのだと思った。だから俺はわざとマヤを追い出すようにしむけた。マヤはそれを理解しこの街を出ていった。だがなぜ今になって精霊族は攻めてきたのだろうか。この街にマヤよりも襲う価値のある物や人がいるのだろうか。
「マヤ……」
「おい!あれ見ろよ!」
「何?っ!?」
1人の冒険者が指した方向を見ると、背中に羽をつけた軍勢が向かってきていた。どうやら精霊族の軍がもう来たらしい。
「予定より3日早いぞ!クソッ!やられた!」
冒険者達は慌てながらも戦闘態勢に入る。精霊族の軍は猛スピードで攻めてくる。前衛にいるものはかなり前まで来ている。そして、その一番前にいた冒険者達が精霊族と対峙した。そこで、戦いのゴングはなった。
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