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モブオタクの異世界戦記  作者: 五三竜
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第2話 謎の多い試験

 ━━2日目……


「では、早速訓練を始める!構え!」


 その掛け声で2人の生徒が構える。訓練初日目……これは生徒同士での組手のようだ。


 カンッ、カンッ、カンッ、バチンッ


 勝負はすぐに終わった。


(さすがに下手すぎだろ。剣の扱いがなってない)


 真耶はそんなことを思いながら魔法の練習をした。今日の訓練は二手に別れての訓練だ。魔法使いは魔法、物理系の職業は組手のようだ。


「まーくん!」


 後ろから奏が話しかけてきた。奏も物理的な職業ではないので一緒に魔法の練習だ。


「皆頑張ってるな」


「まーくんも頑張らないと」


「嫌だ」


「またそんなこと言う〜。普通ならこんな状況になって怖くなってちゃんとするものでしょ!肝が座りすぎだよ!化け物みたいだね」


「え?」


 再びとんでもない悪口を言ってきた。さすがにそんなこと言われると恐怖を覚える。もしかしたら怒らせてしまったのかもしれない。


「俺なんか怒らせたか?」


「ううん。ただ、私だって怖いのになんでそんなに平然としてられるんだろうって思って。そう考えてると嫉妬というかなんと言うか、まーくんって感情を知ってる?」


「酷い言い草だな。さすがの俺もそこまで言われたら傷つくぞ。それに、俺の感情の起伏がない理由は知ってるだろ……」


 真耶は少し暗い表情をして奏にそう言う。奏はハッとして少し申し訳なさそうな顔をした。


「ごめんなさい……」


「……はぁ、別に気にしてないから良いよ。ただ、最近は俺も自分が人間なのか怪しい気もする。なんか変な夢だって見るしな」


「そうなんだ。寝不足には気をつけてね」


「そうだな」


 そんな話をして2日目も終わった。かに思えたが、違った。まさか、まだ話は終わっんでなかったのだ。


「ちょっと待ってよ、なんでここにナスがあるの?これ、昼ご飯のやつだよね。もう4時間も経ってるんだよ」


 なんと、昼ごはんに出てきたナスが未だに残っているのだ。


「なんで食べないの?」


「なんで食べなければならない?俺はナスが嫌いだ。まさか異世界でもナスがあるとはな」


 奏は呆れて何も言えなくなった。しかも、食べないことを誇りに思っているかのようにキメ顔をしている。そして、その事で長い時間言い争っていたらやっと2日目が終わった。


 結局その後もナスは食べることなく終わった。しかも、よく見ると他の野菜も食べてなかった。今後の課題はこの世界を知ることじゃなくて真耶の野菜嫌いを無くすことだと、奏は心の中で思った。


 それから1週間は同じようなことをした。真耶は少しでもこの世界のことを知ろうと本を読んだ。魔法の練習は夜にこっそり練習したため意外と強くなった。


 ━━1週間後……


「今日は試験だ!街から出て魔物まものを狩ってこい!」


 騎士団長はそう言って真耶達を街から追い出した。どうやら今日は街の外での訓練らしい。


(いきなりだな。普通に無理だろ)


 真耶はそんなことを思いながらも街の外に出た。皆は勇者について行ってしまったため真耶は奏と2人きりだ。


「ねぇねぇ、どこに行くの?」


「知らん。聞いてないからな」


「私も〜」


「……」


「……あ、そう言えばだけど、朝ご飯にナスが出たけどどうしたの?あと、私のデザートのプリン無くなってたんだけど……」


「ナスなんか食べるわけないだろ。あとプリンは美味しかったよ」


「やっぱり!なんで食べちゃうの!?」


 奏は泣きながら怒って掴みかかってくる。2人はそんななんともない会話をしながら街の外を歩く。ちなみに道は目の前に勇者達がいるため問題はない。


「本当に魔物なんているのか?」


「楽勝だな!」


 クラスの陽キャ達はそんなことを言いながら歩いている。多分これはフラグだ。この後すぐに強い魔物が出る。


「奏、気をつけろよ」


「わかった!」


「あ!ちょっと待て、武器ぶきとかねぇだろ。なんであいつら持ってんの?」


 真耶は不思議に思った。自分達は武器を持ってないのにクラスの陽キャ達は持っている。


「だって、忘れられてるもん。私達」


「嘘……だろ」


 真耶は歩きながら絶望した。普通そんなことはないだろ、とか思いながら足を進める。すこし歩くと勇者達が止まっているのに気がついた。どうやら魔物がいるらしい。かなり大きいようだ。遠くにいるのにかなり大きく見える。


「あれは犬かな?」


「いや、虎だろ。角生えた虎だろ」


 真耶は少し呆れたように言う。その魔物はどこからどう見ても虎なのだ。一瞬奏の目がおかしくなったのではと疑ってしまった。そんなことを考えていると、クラスの陽キャ達の悲鳴が聞こえる。


「キャー!助けて!」


「嫌だ!死ぬの嫌だ!」


「皆!慌てるな!自分の力を使って……っ!?」


 早速勇者がやられた。死ななかったものの気絶しているようだ。真耶は呆れて何も言えなくなる。


「クソッ!俺が仇を取ってやる!ウォォォォォ!”金剛拳こんごうけん”」


 ほぉ、どうやらクラスメイトの1人が何かしらのスキルを使ったようだ。見た目は凄い。手に光が集まっていく様子が目に見えて分かる。そして、その攻撃は魔物に吸い込まれるように当たった。


「やったか!?」


「どうだ!?」


(いや、ダメだろ)


 砂煙が舞う。そして、その中から無傷の魔物が姿を現した。


(ほらな、やっぱりダメだった。そもそも、あの巨大だとあれくらいじゃかすり傷にもならん)


「あ……」


「終わった……」


 その場の全員が絶望した。皆膝から崩れ落ちる。確かに凄い魔物だ。隣で奏がウザイくらいにくっついてくる。それくらい凄い魔物だ。


「ど、ど、ど、どうするの!?このままじゃダメだよ!」


「慌てるな。まぁ、僕的にはクラスメイトが死んでもなんも思わないんだが今回は特別に助けてやろう」


 そんなことを言って石を投げる。その石は一直線に魔物へと飛んでいく。


 ブォォォォォォ!


 魔物が謎の鳴き声を上げて興奮しだした。そして、まっすぐ真耶に向かってくる。


「ま、ま、ま、まーくん!?こっち来たよ!?」


「だから慌てるなって。”物理変化ぶつりへんか”」


 真耶は落ちている石を拾うと粒子レベルで分解した。


「何してるの!?逃げようよ!」


「待て、安心しろ」


 真耶はそう言って手を前に突き出す。そして、拳を握りしめた。


「”物理変化ぶつりへんか”」


 ブォォォォォォ!


 そう唱えると突然魔物が断末魔だんまつまを上げ血を吹き出して倒れた。


「っ!?ま、まーくん!?大丈夫!?」


「別に何ともない。それより……今の魔物の声で他の魔物が呼び出されたみたいだ。群れが来るぞ」


「そんな!?」


 奏は再び慌てる。やはり、奏もオタクとしては半人前だな。いついかなる時でも動じないのが真のオタクだ。


(それにしても不自然だ。なぜ、まだ来てまもない俺達をこんな危険なところに行かせたんだ?)


「キャアァァァ!」


 そんなことを考えていると、クラスメイト達から悲鳴が上がった。行ってみるとかなり強そうな魔物たちが群れをなして襲ってきている。


「やだっ!死にたくない!」


「助けて!」


 真耶は呆れて何も言えなかった。なんでこいつらは勇者パーティなのにこんなに臆病おくびょうなのだろうか。そんな考えしか浮かばなかった。


「……はぁ、モブの僕としてはもう何もしたくないんだよな。せっかく陽キャの仲間入りできると思ったけどできなかったし……」


「まーくん!助けてあげてよ!」


 奏が再びそう言いながらくっついてきた。真耶としては勇者にどうにかして欲しいんだが……


「仕方がない。奏!救援を呼んできてくれ!”物理変化ぶつりへんか”」


 真耶がそう唱えると、今度は地面が盛り上がり鋭いトゲとなって魔物を刺した。


「クソッ!また来やがった!」


 魔物を倒した時に魔物が声を出してしまい更に呼び出されてしまった。


(ダメだ!このままじゃジリ貧で負ける……)


 かなりピンチになってきている。まだどうにかできるがこれ以上数が増えるとさすがに耐えきれない。特殊エクストラスキルを使えば割かしマシになるのだろうが使い方が分からない。


(マジで勇者パーティは使えねぇ奴らだな!)


「クソッ……」


 真耶は呻くように呟いた。


「まーくん!連れてきたよ!」


 そう言って奏が走ってきた。どうやら救援を呼んできてくれたらしい。しかし、何かおかしい。


「っ!?奏!逃げろ!」


「え?」


 奏が後ろを向いた時にはもう遅かった。真耶達を召喚した人達が刃物を持って襲ってきている。


「クソッ!”物理変化ぶつりへんか”」


 真耶は奏が刺されそうになる直前で壁を作った。そして、地面で鋭いトゲを作りその人達を刺し殺す。そして、すぐに奏に近寄る。


「奏!大丈夫か!?」


「ま、まーくん!?ひ、人が……!」


「そんなことを言っている暇は無い!このままだと皆殺される!理由は知らないが、あいつらは僕達の敵だ!」


 真耶はそう言って奏をクラスメイトの元に連れて行く。しかし、そこには大量の魔物がいて結界術士けっかいじゅつしの人達でなんとか踏ん張っている状況だった。


「あそこだ!」


「いたぞ!」


「殺せ!」


 周りからそんな声が聞こえる。どうやら既に囲まれているらしい。


(何か無いのか?この状況を1発で打破する何かが……ん?)


 気がつけば目の前にログのようなものが出ていた。そこには【特殊エクストラスキル、神眼しんがん邪眼じゃがんスキル、解放しました】と、書かれている。


(これは……?まぁいい、迷ってる暇は無い!)


「使えるものはなんでも使ってやる!”神眼しんがん邪眼じゃがん”」


 真耶がそう唱えると左目に白く輝く紋章が、右目に黒く煌めく紋章が浮かび上がってきた。そして、一瞬にして大量の情報が流れ込んできた。


(これは……!やばい、頭の中がパンクする……!)


「まーくん!?大丈夫!?」


「……うぅぅ、大丈夫……だ。……聞いてくれ。今から……世界に魔法をかける。その魔法で世界中の人々の……記憶を変える。そして……勇者達を世界の隅々まで送り飛ばす。僕達も……それに乗じて逃げる」


 真耶はそう言って手を差し出してきた。


「フゥ……能力はだいたい理解した。それにもう慣れた。僕……いや、俺に捕まってろ」


 奏はその言葉を聞いて頷き真耶の手を取る。そして、真耶は唱えた。


「”物理変化ぶつりへんか”」


 その日、世界が光に包まれた。その光は世界中の人々の記憶を別のものに作り替えていく。それと同時に勇者達が何人かのグループに分けられ世界のあちこちに飛ばされて行った。


「さ、行くよ」


 真耶達も一緒にどこかに飛ばされる。どこか遠くの彼方に……。


 少しして光はおさまった。真耶達は光が収まると同時に目を覚ました。どうやら、真耶達が目を覚ました場所は草原の真ん中らしい。近くに街があるのを見つけた。真耶達はそこまで行ってみることにした。

読んでいただきありがとうございます。感想などあれば気軽に言ってください。

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