第26話 剣聖との出会い
━━・・・皆さんはあるだろうか。女の子と一緒のベットで寝て朝を迎えたことが。これは相手によるかもしれないが覚えておいて欲しい。
「女の子と一緒に寝てもろくな事ねぇな」
「そ、そんなこと言わないでください!」
朝から魔法を使わなくてはいけないとは思わなかった。それに、ここはベットが1つしかないし、昨日あんな話をしたから構成粒子が何かなんて覚えていなかった。そもそも、今真耶は何をしているのかと言うと、アロマがおねしょをしたからする前のシーツに変えているのだ。
「あーあ、俺の服までびしょびしょじゃねぇか」
そう言いながら魔法を発動していく。
「ほら、お前も服を出せ。そして後で俺の膝の上に来い」
そう言うとアロマはビクッと体を震わせる。その様子になんだか笑ってしまう・・・が、魔力が減っているせいで脱力感が凄かった。だから、微笑む程度にしか笑えなかった。
━━それから10分が経って、おねしょの痕が着いたものは全て変えることが出来た。
「さて、風呂に入るか。アロマも来い」
「え!?ま、マヤ様と一緒に・・・!?」
真耶はそう言って風呂場へと向かう。アロマは顔から火が出そうなほど真っ赤にしながら同じように風呂場に向かった。
━━そして・・・
「ほら、背中流すぞ」
そう言って背中に水をかけてくる。暖かい・・・
「・・・はぁ、朝風呂は初めてだけど意外と良いもんだな」
「そ、そうでしゅね・・・はっ!?」
「お前、顔赤いぞ。のぼせたか?」
その問いに全力で首を振る。そもそも、今の状況はどうなってるのだろうか。今の2人の状況を説明するとすぐに終わる。そう、2人で風呂に入ってる・・・・・・だ!
━━2人は少しして風呂から上がった。着替えも何もかもは真耶が作り替えたものだ。
「それにしても、風呂はすごいな。魔力が回復したよ」
「魔力というのはリラックス状態の時回復します。知らないんですか?」
「初めて知ったよ。じゃあ、ずっとリラックスして戦えば魔力無限じゃん」
「あはは!無理ですよ!戦いというのは常に緊張してないとダメなんですよ!」
そんなことは無いと思うしそんなに笑うこともないと思うが紳士に流しておこう。
「そういえば、剣聖とどうやって結婚するんだよ?合わなければしなくていいだろ」
「突然ですね。そもそも、剣聖を呼んでたんですよ。来るのは・・・」
話しながらアロマの顔は青ざめていく。なんとなく理解した。
「あ〜、うん、言わなくても分かるよ。今日なんだろ」
「・・・はい」
やっぱり!と、叫んで当たったことを喜びたいが、今日来るという衝撃の事実に色んな感情が頭の中でパーティを始めてしまった。
「すみません!私が忘れていたばかりに・・・!」
「いや、好都合だ。これで暗殺しなくてよくなるからな」
そう言って真耶は不敵に笑う。
「どういうこと・・・?」
「こっちから行くってことはバレたら終わりだろ。だが、向こうから来てくれるなら堂々と戦いを挑めるだろ」
「確かに・・・て、もしかして・・・」
「フッ、剣聖と決闘で勝つ。それでお前を手に入れてやるよ」
堂々とはっきり真耶は言った。その言葉には強い信念を感じる。だが、不安しかない。アロマはそんな真耶に向かって強めに言った。
「やめてください!死にたいのですか!?無駄なことはやめてください!」
「なぜだ?」
「え!?」
「なぜ俺が負けると決めつける?なぜ俺が勝てないと思い込む?剣聖とはなんだ?最強か?無敵か?もしそうなら魔王なんて倒してしまえばいい。じゃあなんで倒さない?それは簡単な事だ。剣聖は最強じゃない。剣聖は無敵じゃない。だったら俺でも勝てるだろ」
「そんなことないんです!」
アロマは聞いたこともないような大声で真耶をベットに押し倒す。そして、ポロポロと涙を流しながら苦しそうに言ってきた。
「あなたが勝てることはありません。剣聖は最強です。無敵です。完璧です。真正面から戦って勝てる相手じゃありません」
アロマはそう言って涙を零す。そして、強く服を握りしめる。
プチプチビリビリ・・・
服が破れる音が聞こえた。それほどまでに強い力で握っているのだろう。
「・・・何があった?」
「・・・昔、剣聖とある国の最強の騎士が私をめぐって決闘したことがあったんです。その時、剣聖と戦った男は一生治らない傷を負いました。だから、剣聖と戦って勝てるわけないんです」
そんなことがあったのか・・・辛い過去だったな。
そう言ってあげたいが、声が出ない。唯一言えることは・・・いや、他にいっぱい言おうと思えば言えるが、一つだけ言いたい。
「俺が、負けるとでも思ってるのか?暗殺したいなら暗殺者にでも頼め。お前は俺が勝てると思ったから選んだ、そうだろ?」
その問いかけに静かに頷く。
「だったら最後まで信じろ」
その言葉に強い力を感じた。洗脳魔法なのかもしれない。催眠術かもしれない。そう思ってしまうほどに強い力を感じた。
「・・・分かった。マヤ様を信じる!」
「いい返事だ。さっそくギルドに行こう」
そう言って部屋から出た。その後ろをアロマはついて行く。すると、ギルドに向かう途中で真耶は足を止めた。
「その前に服を買おう」
そう言って服屋に入っていった。アロマは少し呆れながらもついて行った。
━━しばらく悩んで服を決めた。結局は自分で決められなかったので、アロマが決めることにした。
「このローブとかいいんじゃないですか?」
「それいいな。それにしよう」
『これください』
カウンターに服を持っていくと、反対側から来た人と鉢合わせになって閉まった。向こうも服を買いたいらしい。
「あ、すみません。先いいですよ」
「こちらこそすまない。お先に失礼するよ」
そんな会話をして2人は服を買う。
「あれ?あの人は?」
「ん?いや、服を買う時鉢合わせになってしまってな」
「え?いや、マヤ様、あの人剣聖ですよ」
アロマはそんなことを言う。別にそんな冗談を言って場を和ませなくてもいいって言うのに。
「嘘じゃないですよ!あれが剣聖・・・シュテルです」
アロマは真剣な顔で言ってきた。本当なのだろう。
「あれが剣聖か」
小さくそう呟いた。
━━それから少し時間がたってギルドに着いた。ギルドの中はこの閉塞的な街から考えられないくらいにぎわっていた。
「なんだ?」
「あ!アロマ!そこにいたのか・・・探したよ」
そう言う声が聞こえた。そして、男がよってくる。その男は服屋で見た男と同じ人だ。
「やぁ、久しぶりだね、アロマ」
アロマは剣聖に挨拶されたにも関わらず無視をして真耶の後ろに隠れる。
「あはは、いつも通りだな。ところで、君は誰だ?もしかして、アロマに引っ付く悪い虫か?」
それは普通本人に言うことは無いし、もし引っ付く悪い虫なら俺の方から引っ付くから違うのは見ただけでわかるだろ。と、言ってやりたいが剣聖は話が通じると思うから言わないでおいた。
「違います!この方は、私がフィアンセとなる方です!」
アロマは高々とそう言った。その言葉にシュテルの目が細くなる。
「貴様、アロマに何をした?洗脳魔法でもかけたのか?」
いや、お前こそ何をしたらここまで嫌われるんだよ。
と言いたいが、ここで喧嘩をするわけじゃないからやめておいた。
「魔法なんかかけてないよ。俺は錬金術師だ」
「何?錬金術師だと?そうか詐欺師か!」
いきなり詐欺師呼ばわりをされた。なぜそうなる?こいつの頭はおかしいんじゃないか?
「いきなり人を詐欺師呼ばわりするなボケ。俺は詐欺師じゃない」
「そうですよ!マヤ様は私の王子様なんですから!」
2人はそう言ってかなり密着する。その様子に腹を立てたのか、シュテルは剣を抜いて首元に突きつけてきた。
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