第24話 次の街へ
ルーレイトの街を出て少ししたところに光が集まっている。それは、蛍のように輝き煌めいている。その光は集まってくると人の形を成形する。そして、光は収まっていく。
「さて、次の街に行くか」
光の中から現れたのは真耶だった。真耶は小さく呟くとロストの街を目指して歩き始めた。
━━━━━━……一方その頃奏達はギルドで真耶の居場所を聞いていた。
「真耶さんならもうこの街を出ましたよ。次の街に行くとか……」
「どこに行ったの!?」
「あ、えっと、ろ、ロストの街です……」
受付のお姉さんは急に問い詰められ慌ててそう言う。奏達はそれを聞くと地図を取り出し場所を聞き出す。それは、この街から近く直ぐに行ける街だった。
「今この街を出たならまだ近くにいるはず。早く追いかけましょう」
「あの、何かあったのですか?」
「ちょっと、喧嘩しまして……すみません!急いでいるので!」
そう言って扉まで移動する。受付のお姉さんは静かに微笑むと手を振って送り出した。3人はそれを確認することも無く慌ててギルドを出ていった。
━━━━━……再び場所は変わって真耶は……
既に、ロストの街へと来ていた。道中魔物に襲われたが難なく倒し、倒した魔物を担いで街まで来たのだ。
「さて、ギルドに行くか」
そう言ってギルドへと向かう。……それにしても、凄く暗い街だ。受付のお姉さんが言っていた通り、閉塞的だ。
そんなことを考えていると直ぐにギルドに着いた。真耶は扉を開け中に入る。すると、そこは他の街と変わらない様子だった。
「ようこそ、ロストの街のギルドへ」
「冒険者登録をしたい。他の街でも冒険者をやっていた」
「分かりました。ステータスプレートと、お持ちでしたらギルドカードをお願いします」
そう言われたので2つとも見せる。ギルドカードはそのままだが、ステータスプレートはランクに合ったステータスに変えている。
「えっと……凄いですね!Sランク級冒険者なんですね!登録完了しました!」
ギルドカードとステータスプレートを受け取ると直ぐにクエスト掲示板を見に行く。
「あ、これだ。このクエストの魔物なんだけど、ここに来る時倒したんだよね」
「はい。えっと……それじゃないですね……これは!?シュウさん!来てください!」
そう言ってお姉さんは人を呼ぶ。なんか凄いことしちゃったのだろうか……もしかしたら、逆に凄く悪いことをしたのかも……
真耶はそんなことを考えてしまい冷や汗が止まらなくなる。顔は平然として静かに立ち尽くす。しかし、頭の中で105通りの打開策を考える。
「なんだ?何があったんだ……て、これ誰がやったんだ!?」
シュウと言われた男は出てくるなり、真耶が倒した魔物を見て驚く。そして、ベタベタと触り確認する。
「なぁ、何か悪いことでもしたのか?」
「君なのか!?この魔物を倒したのは!?」
「そうだが……」
「凄いな!この魔物はエンシェントキマイラと言って数百年前からあそこに住み着く主だったんだよ。王国から討伐依頼が来ていたが、まさか君が倒すとは……」
そう言って手を握ってくる。凄く感動しているのか、涙まで流している。
「君には報酬として100万ジェルをあげるよ。元々王国のために集めてた金だからね」
そう言って、奥から袋を出てきた。中を確認すると、大量のお金が入っている。王国のためとは言え、貰うのはどこか申し訳ない気持ちにもなるがあげると言うので貰っておいた。
「それにしても、苦戦したのではないか?宿を紹介するからそこで休みなよ」
シュウはそう言って宿を勧めてきた。たしかに、宿には困っていたのでその善意は受け取ることにした。
「助かるよ」
真耶はそう言ってギルドを出る。勧められた宿はギルドを出て左に行くとあるらしい。真耶は宿をめざして足を進めた。2分ほど歩くと、宿がでてきた。
「リメルの宿・・・ここだ」
シュウに言われた宿は本当に近かった。合ってるか確認し扉を開ける。
「ようこそ!リメルの宿へ!」
宿に入るといきなりそう言われた。なんだか、前に同じ状況になった気がする。
「1人だ。一日泊めて欲しい」
「はい。あの・・・もしかして、マヤ様ですか?」
いきなり聞かれた。凄く唐突だ。
「唐突だな。そうだが、どうしたんだ?」
もしや、勇者に勝ったことがここまで知られているのかもしれない。俺も有名になったなぁと感心していると、宿のお姉さんは言ってきた。
「先程シュウさんから話を聞きまして、タダで泊めて欲しいと言われたので」
違った。全然有名じゃない。と言うか、知られてすらいない。少し落胆しながら真耶はお姉さんに言った。
「タダでいいのか?なんか悪いな」
「いえいえ、エンシェントキマイラは私達も困ってたので。あ、でも気をつけてくださいね。王国の人を呼んでいるので喧嘩にだけはならないようにしてくださいよ」
「喧嘩ねぇ……大丈夫だろ。ま、気をつけるよ」
真耶がそう言うと、お姉さんは優しく微笑み部屋を案内し始めた。真耶は言われるがままについて行く。
「では、ごゆっくり」
そう言って案内された部屋は高級ホテルのような部屋だった。和室のような洋室のような部屋で、凄く落ち着く。
「風呂までついてんのか……」
真耶は部屋の中を組まなく探検する。凄く高そうだ。これをタダで泊めるというのだから凄く太っ腹な街だ。
「今日は疲れたな。風呂にでも入るか」
少し早いが風呂に向かった……━━━━━
━━・・・20分程で真耶は出てきた。やはり、日本人ということもあって風呂に入ると落ち着く。自分の中の悪の心が全て浄化されるような気分になった。
「あの、マヤ様。今大丈夫ですか?」
そういう声と共にドアをノックする音が聞こえた。さっきのお姉さんだ。
「あぁ、大丈夫だ」
そう言うとドアが開く音が聞こえた。中に入ってきたのは、やはりお姉さんだった。
「どうしたんだ?」
「あの、マヤ様が勇者様を倒したという話は本当ですか?」
そんなことを聞いてきた。やはりこの街まで知れ渡っていたのだろうか。そんなことを考える。
「本当だよ」
「しゅ、しゅごいです!……あ」
噛んでしまって顔を赤く染める。そして、チラチラと目をやってくると深呼吸をして話を始めた。
「あの、マヤ様にお願いがあります。王国の剣聖を倒してください!」
「…………は?」
発せられた言葉は驚きのものだった。
「剣聖を倒してって、剣聖は倒すものじゃないだろ。なんで倒して欲しいんだ?」
「私……本当はこんなに大人じゃないんです」
「え?いや、そういうこと聞いてるんじゃなくて……てか、本当の年齢ってなんだよ?」
突然言われて何が何だか分からなかった。分からなすぎて話が理解できない。頭を混乱していると、お姉さんは少し周りを気にしながら服を脱ぎ始めた。
「まさか……”物理変化”」
何かを察して部屋中の窓や扉を塞ぐ。そして、消音加工をした。それを確認して、少し恥ずかしそうにお姉さんは服を全て脱いだ。
「私の名前はアロマです。普段は16歳程度に姿を変えていますが、本当の年齢は……12歳です……」
そう言うと、アロマの姿が変わる。そして、小学6年生位の姿になった。
「これが……私の本当の姿です。私はこの姿をたまたま剣聖に見られました。それから執拗に結婚を申し込んできて……あの魔物を倒したら結婚してくれと言われたのです……!」
アロマは嗚咽を堪えながらそう言ってきた。
「……良いよ。でも、なんで剣聖を倒せば良いの?」
「剣聖を倒せばあなたが私のお嫁さんになるからです」
「…………は?」
平然と発せられた言葉に思わずそう言ってしまった。
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