第23話 隠されたトラウマ
「”物理変化”」
真耶は鉄の壁を作り出し炎を防ぐ。
(弱い・・・かなり下っ端をよこしたようだ)
そもそも詠唱をしている。恐らくだが、大人数で捜索してたまたま発見したってところだろう。
「そして、精霊族・・・案外早いものだな。今のうちに殺しておくべきだな」
真耶は小さく呟く。その一部が聞こえたのか、ルーナが聞いてきた。
「殺しちゃうの?」
「あぁ、後々強くなって戻ってこられても困るしな」
そう言って手に魔力を込める。そして、魔法を発動する。
「・・・!」
ルーナは目を閉じた。というより、真耶がルーナの目を隠した。見せないようにして地面を鋭いトゲに変える。そして、喉元を突き刺した。
ピチャッ・・・
「ん?・・・っ!?」
ルーナの手に血が着いた。それを見て絶句する。
「もう・・・大丈夫です・・・」
そう言って手をどかす。そして、目の前の状況を見て気分が悪くなる。
「うぉえ・・・ゲボッ!ゲホッ!」
吐き出してしまった。真耶はその様子を見て背中を優しく撫でる。
「安心しろ。俺はお前達を危険な目に遭わせたりはしない」
そう呟く。そのせいか、少しだけ気分が良くなった。それでも、吐き気は収まらない。遂には涙まで出てきた。
「でも、人を殺すなんて・・・マヤさんは何とも思わないのですか!?」
「っ!?・・・またその目か・・・」
「どういうことですか?」
ガチャッ!
その時、扉が開く音がした。足音がうるさい。奏だ。
「まーくん!ただいまー!」
「マヤさん!ただいまです!」
クロバも一緒にいた。2人は陽気に入ってくる。そして、入ってくるなり急に静かになった。
『っ!?』
「どう・・・したの・・・?」
「マヤさんがこの人達を殺したのよ」
『っ!?』
2人はそれを聞いて驚いた。そして、嘘でしょ、と言わんばかりの目で真耶を見つめる。
「あ〜ね、お前らもその目で見るんだ・・・奏にも教えたこと無かったしね・・・」
「え?何・・・?」
「いや、なんでもないよ。どうやら皆は俺の事が嫌いなようだからもう一緒に旅するのは辞めるよ」
突然発せられた言葉は驚きのものだった。真耶はすごく悲しい顔でそう言う。
「待って!なんでそうなるの!?意味わかんないよ!」
「意味わかんないよ・・・か。もうウンザリなんだよ。お前らと仲良しごっこをするのも、お前らのわがままを聞くのもな。どうせ事情を話しても信用しないんだろ?」
「そ、そんな事ない!」
「いや、そんなことある。だってそういう目をしてたもん。俺はその目を知っている。そもそも、モブが異世界に来て有名になろうとすることが間違えてたんだよ。お前らとはここでお別れだ。じゃあな」
そう言って真耶は自分の胸に手を当てる。そして、魔法を発動した。すると、真耶の体が光の粒子となって消えていく。
「待って!」
奏の声は虚しく虚空の中に消えていった。その場に取り残された3人は何も出来ずにただ呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。
「マヤさん・・・凄く悲しい顔してましたね・・・」
「カナデさんは何か事情知らないんですか?」
「ううん・・・でも、まーくんは秘密が多いから」
「あれって召喚される前からああなんですか?」
「うん」
3人はそんな会話をしながら部屋を散策する。その部屋には壁中血がべっとりこびりついていてまるでホラー映画のワンシーンのようだ。3人は恐る恐るその死体のフードを剥がす。
「すごい・・・綺麗に殺されている。刺すだけじゃなくて体が潰されている・・・」
「ねぇ!これみてください!」
ルーナは慌てて2人を呼んだ。直ぐに行くと1人の女がいた。当然真耶に殺されている。
「っ!?まさか・・・!?」
「そんな・・・!?マヤさん・・・ごめんなさい!」
「・・・まさか・・・この人達全員・・・精霊族だったなんて・・・」
3人はそれを見て言葉を失う。
「探そう・・・まーくんを探そうよ!」
その時、3人の意思は固まった。
━━一方その頃真耶はギルドに来ていた。
「なんで俺勇者に勝ったのにこんなに覚えられてないの?」
「すみません・・・勇者様の方が勝つと思っていたので・・・」
「いや、悪い、忘れてくれ。それよりどこか違う街に行きたい。いい街はあるか?」
「それだと、ロストの街はどうですか?」
そう言って地図を出して指を指してもらった。この街から近いが、前にいた街からも近い。
「なぁ、この街・・・」
「スタットの街ですか?」
「そうそれ、スタットの街の人とかいるのか?」
「いえ、詳しくは分かりませんが・・・どこか閉塞的な街なので居ないと思いますが・・・どうしてそんなこときくんですか?」
「そこは秘密でな」
そう言って微笑む。ギルドは秘密が多いので詳しくは聞かないらしい。受付のお姉さんは優しく微笑むと手を振ってくる。真耶はそれを確認してからギルドを出た。
「あ!勇者様だ!」
どこからかそう言った声が聞こえる。
「凄いよな、勇者様はもうレベル123になられたらしいぞ」
は?レベル?何言ってんの?てか、123て、上限突破してんじゃねぇか。そういや俺のレベルなんだろ?てかレベルとかあったのかよ・・・
「まぁいいや、後で確認しとこ」
真耶は小さく呟いて道の端による。そして、影に入り魔法を唱えた。すると、体が光の粒子になり虚空の中に消えていった。
・・・・・・奏達がギルドに来たのはそのすぐだった・・・・・・
読んでいただきありがとうございます。感想などあれば気軽に言ってください。




