第19話 勇者と真耶
真耶は武器屋の男に代金を支払う。
「おい、これは多すぎだ。こんなに要らねぇよ」
「いやいい。この店の武器を少しコピーさせてもらいたいからな。金を払わなかったら申し訳ないだろ」
そう言って、1つ武器をコピーする。それを見て、武器屋の男は驚くが何も言わずに不敵な笑みを浮かべた。
「なら尚更要らねぇよ。ただし、絶対に勇者に勝てよ。そしたら、お前に武器を1つ作ってやるし、俺の店の武器は使い放題にしてやるよ」
そう言って金を武器1つ分だけとって返す。そして、真耶の背中を押す。真耶は不敵な笑みを浮かべると、2人を連れて外に出ようとする。その時思い出した。自分で出入り口を塞いだことを。
「”物理変化”じゃあな、また明日」
真耶はそう言って出ていった。
「あ、1つ忘れてた。頼みたいことがあるんだけど・・・」
そう言って戻って来た・・・
━━次の日・・・
「さぁ!ついに始まりました!勇者様VS謎の冒険者、マヤ!」
その声とともにワー!と言う歓声が上がった。そして、闘技場内が熱気で包まれる。
「キャー勇者様〜!」
「あ!勇者様が手をお振りになりましたわ!」
「勇者様〜!」
観客席からは、勇者を応援する声しか聞こえない。誰も、俺のようなどこから来たかも分からないようなモブに興味は無いらしい。
「さぁ、正々堂々と勝負だ!」
そう言って希望は神器を向けてくる。
「正々堂々ね・・・」
ご〜〜〜〜ん!
真耶が小さく呟くとドラのような物がなったような音がした。その音とともに希望は技を放ってくる。
「”ライトニングスラッシュ”!」
大きく横に降ったため、斬撃は地面と水平に飛んでくる。真耶はそれを飛んで避ける。
「終わりだ!”光斬”」
希望は合わせたかのように斬りかかってきた。恐らくこれが、こいつの必勝コンボなのだろう。
「・・・速いな。やはり、奏の言っていたことは当たりか・・・”物理変化”」
真耶は自分の手を鉄に変え、受け止める。
「残念だな」
真耶はそう言って希望を蹴り飛ばした。そして、闘技場にいる人全員に聞こえるように言う。
「手加減なんてしやがって・・・」
真耶は自分の腕を見るが傷1つない。やはり、手加減されているようだ。
「手加減したやつに勝っても面白くないんだよ!死にたくないらな本気でこい!」
そう言って殺気を強める。その殺気は強すぎたのか観客全員が震え上がったのがわかった。中には泣き出す子供もいた。そして、誰もが思っただろう。勇者と戦っているのは魔王なのではないか、と。
「先に言っておくが、俺は魔王じゃないぞ」
真耶は半分呆れながらそう言った。
「そんなことはわかっている!フッ、面白くなってきたな!”希望状態”!」
そう唱えると、希望の体が黄色く輝き始めた。
(これが・・・クロバの言っていた、勇者の奥の手の1つ・・・)
真耶は希望と向き合って、昨日のことを思い出した・・・
━━昨日の夜・・・
「そろそろ本当のこと教えてよ!」
奏はそう言って真耶を押し倒した。
「なんだよ?今はそんなこと気にしてる場合じゃないだろ。お前も気づいただろ、あの勇者ステータス1万超だ。俺はその対策をしないといけないんだよ」
そう言ってどかそうとするが中々どいてくれない。ルーナとクロバに目をやるが、2人も怒っているのか助けようとしない。
「あぁもう!わかったよ!何が嫌なんだ!?言ってみろ!」
「だから本当のこと言ってって言ってんじゃん!」
全く意味が分からない。本当のこととは何なのだろうか。
「本当のことってなんだよ?」
「まーくんの本当のステータスの事だよ!ずっと秘密にしてて、全然押してくれないじゃん!何でよ!?」
奏は怒りながらそう言ってきた。さらに、よく見ると目が潤っている。
「そりゃあ、思考を読まれたら俺のステータスは筒抜けになるだろ」
そう言った。すると、その場の全員が確かに、と納得した。しかし、それでも3人の不満は収まらなかった。
「まーくんが教えてくれるまでこっちも教えない!」
「一体何を!?てか、教えてもらわなくても良いよ。正々堂々やって殺すから」
平然とそう言った。
「殺しちゃうの!?」
奏は慌ててそう聞く。真耶は静かに頷いた。その会話の様子を見て、他の2人もかなり驚いている。
「クラスメイトを殺すの?」
奏はかなり強い口調で聞いた。どうやら怒っているようだ。
「殺す気でやらないとこっちが殺される。それに、俺程度に殺られてたらこの世界生きていけねぇよ。それに、真の敵も分からない」
「真の敵?何言ってんのか全く分からないわ。もし殺すというのなら、行かせないわ」
そう言って手首を掴む。いつもの口調とは違っている。本気で怒っているようだ。前に日本にいた時何度か怒らせたが、その時と同じだ。
「そもそも、誰のせいでこうなったと思っている?お前らがやれと言うからやっているんだ。それなのに何だ?行かせないとか言い出しやがって。行かなくていいなら行かねぇよ」
皮肉そうに言った。その言葉で更に、カチンと来る。
「ふざけないでよ!」
奏は掴みかかってきた。掴み掛かられたのは3回目だ。どれも、理不尽な理由でやられている。
「ふざけるなだと・・・?それはお前なんだよ!俺の気も知らないくせに、勝手なこと言ってんじゃねぇよ!お前も知ってんだろ!俺は理不尽なことは嫌いなんだよ!あの時も・・・あの時もそうだ。それだけじゃない・・・日本にいた時も・・・」
真耶はブツブツと言いながら俯いていく。顔を暗くしてしゃがみ込んだ。その様子に、ルーナとクロバは目を丸くする。
「ブツブツブツブツブツブツ・・・・・・」
2人はその異常な様子に心配する。近寄ってなだめようとするが、奏はそれを止めた。
「なんで止めるんですか!?」
「こんなになってるのですよ!」
「わかってるよ!」
奏は叫ぶ。叫んで2人を真耶から離す。
「またやっちゃったよ・・・まーくんは、こうなるともう手が付けられないんだ。まーくんのお姉ちゃんだったら何とかできたのに・・・うぅ・・・」
奏は1人泣き始める。真耶はそんなことはお構い無しに頭を抱えこんで、更に顔を暗くしていく。
「何か知ってるのですか!?」
「うん・・・まーくんは、昔のトラウマで時々こんな感じになるんだ・・・気をつけていたはずなのにこうなっちゃうなんて・・・ごめんなさい・・・」
「マヤさんの過去に何があったかは知りませんが、今の状況を何とかしないとどうにもなりませんよ。皆で力を合わせましょう」
「・・・そうだね・・・」
2人は奏を泣き止ませると真耶に近づく。真耶の様子を見ると、かなり深刻そうだ。
「マヤさん、大丈夫ですよ」
「心配するようなことはありません。理不尽なものもありませんよ」
しかし、そんな2人の声は通じない。
「・・・ごめんね、まーくん・・・”スリープ”」
奏はそう唱えると、魔法で真耶を眠らせた。
「こういう時しかまーくんには効かないんだよね・・・」
奏は誰にも聞こえないようにそう呟いて、真耶をベットに横たわらせる。
「・・・マヤさんの過去に何があったの?」
「・・・ごめんなさい・・・私の口からは言えません・・・」
そう言われて2人は少しムッとする。もし、次こういう状況になった時に眠らせるしかないとなると少し抵抗があるからだ。2人は奏に無理やり聞こうとするが、奏はなかなか言ってくれない。
「本当にごめんなさい・・・私の口から言ってしまえば、また、まーくんを傷つけることになるのです・・・許してください」
そう言って土下座をした。流石にそこまでされるとは思っていなかった。だから、何故か悪い事をやっている気分になる。
「なんで言ってくれないのですか?もし言わないなら無理やりにでも・・・」
「やめろ。俺が話す。それでいいだろ」
「っ!?」
気がつくと、真耶が起きていた。そして、少し暗い表情で2人にそう言う。2人は嫌とは言えず、小さく頷いた。
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