最終話 決着!真耶VS奏
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━モルドレッドは光の柱に包まれた王城を見て涙を流した。
「モルドレッド……な……」
「止めて、慰めの言葉なんかいらない。逆に悲しくなるだけだから」
「……そうか。なぁ、1ついいか?」
アーサーは俯き涙を流すモルドレッドに言った。
「何?」
「なんで真耶は奏が神々の使者だと気づいた?それに、なんで奏は真耶を異世界に召喚した?」
「……そんなの知るわけ……」
「嘘だ。お前は気づいているんだろ。そもそも、真耶を異世界に召喚しなければこんなことにはならなかったはずだ。だが、召喚された。お前はその理由に気づいたんだろ」
アーサーはモルドレッドを追い詰めるように言う。モルドレッドはその言葉を聞いてさらに涙を流す。
それでも、モルドレッドは話さなければならないと思い、嗚咽を堪えながら話を始めた。
「奏は……真耶が好きだったんだと思う。だからずっと一緒にいようとした。あのままケイオスの記憶が戻らなければ、神々が支配した世界で一緒に暮らせるから」
アーサーはその言葉を聞いて納得する。そして、少しだけ微笑むと振り返り王城から離れようとする。
「……どこに行くの?」
「……さあね」
「……ねぇ、真耶の口癖覚えてる?真耶はいつも”いつも通りってつまらないよな。何かいつもと違うことが起こらないかな”って言ってたじゃん。真耶は記憶を失ってもそれを言ってたみたいだよ。多分、真耶の中にいるケイオスが記憶を取り戻そうと必死だったんだよ」
「そして、奏はそれに気がついてわざといつも通りでは無いことをした。そうやってケイオスの記憶を消そうとした。それが裏目に出たわけか」
「そういうことだよ」
「……真耶は頭がキレるからな。奏を殺した位で神々が黙るとは思えん」
「だから真耶があんなことをするんだよ。そうしたら神々だって手を出さなくなるでしょ」
「……そうだな」
モルドレッドの言葉にアーサーは少し悲しい顔をする。ガウェインとヴィヴィアンはそんなアーサーとモルドレッドを見て言葉を失う。
(真耶……あなたがしたかったことは本当にこれなの?例え世界を平和に出来ても、自分が幸せになれなきゃ意味が無いんだよ)
モルドレッドは頭の中でそう話しかける。しかし、返答が帰ってくることは無い。そのせいか、少し悲しい気持ちになる。
モルドレッドは悲しさのあまり涙を流し始めた。そして、膝をつき両手を絡め合わせて握りしめると祈るような姿勢をする。
そして、目を閉じ心の中で唱えた。
(いつか、会えますように。どんな形でもいい。またどこかで、出会えますように)
そうやって祈る。その祈りが届くのかは分からない。だが、祈る。そうしなければ、悲しみが溢れてきて抑えられないから。
しかし、それでも涙は止まらない。
「……」
「……」
「……」
アーサー達は黙ってモルドレッドを見つめた。そして、上を向く。見上げた空にはモルドレッドを照らすように光が指していた。
「真耶……」
「……王とは……」
突如モルドレッドが目を開け静かに話し始めた。アーサー達はその話を黙って聞く。
「王とは人々から愛され、皆を導いていく者。でも、それと同時に孤独に愛される者。力を持つものは孤独に導かれる」
「そうだ。だから、王は人々を愛する。愛すれば、愛されるかもしれないからな」
「そんなもんなのかねぇ……俺は王じゃないから分かんねぇけどさ」
アーサーとガウェインが言った。その言葉を聞いてモルドレッドが立ち上がる。そして、涙を拭って振り返るとニコッと笑った。
「もう気は晴れたの?」
「ん!」
「そう。それなら良かったわ。それにしても、真耶は幸せ者ね。こんな4人から好かれてたなんて、孤独を愛する王とはよく言ったものだわ」
「ふふ、ホントそうだね。考えてみたらモブになる必要なんか無かったんだよ」
「オタクになる必要性はあるのか?」
ガウェインが煽るように言ってくる。モルドレッドはそれに頷いて言った。
「あるんじゃないかな?」
「……フッ、そうだな」
「お前ら、無駄口叩くんなら部屋の中に入ろうぜ」
アーサーの言葉で全員部屋の中に入れるように近寄る。そして、4人は仲良く誰もいなくなった王城の王の間へと向かった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━そして真耶は……
「っ!?なん……で!?」
「さぁ、何でだろうな?」
真耶と奏はそんな会話をする。どうやら奏には、真耶が奏と一緒に自決するとは思っていなかったようだ。だから、この状況に頭が追いつかずただ睨むことしかできない。
「クッ……っ!?体が……!?」
「残念だったな。言ったろ?理ごと消滅させるって。この、アヴァロンナイトは理を消滅させることが出来る。だから、俺と奏の理を消滅させた」
「っ!?」
「フフフ……そう焦るなよ。理を消された者は、この世に存在しているという理すらも消され、初めからこの世に存在しなかったことになる。だから、俺とお前は本当の意味で死ぬんだ」
真耶はそう言って笑った。そんな真耶の両足は透けてきている。奏は既に足は消えていた。そして、お腹の辺りも透けてきている。
「きっと、初めからこうすればよかったんだ。俺がいるから神々が使者を送ってくる。だったら、俺が死ねば神々は何も言わなくなるだろ?」
「クッ……!そ、そうね……!でもなんで私まで……!」
「お前は、罪を犯したからだ。王を騙し、人々を悲しませた罪をな。お前はずっと信じていたルーナ達まで騙した。まぁ俺もなんだがな。だから、お前がここで死ぬのは、あいつらを騙した罰だ」
「っ!?」
奏はその言葉を聞いて言葉を失った。ずっと、1年間という短い間だったけど、一緒に旅をしてきた。楽しいことも悲しいことも一緒に味わった。奏はそんな人達を騙していた。その罪悪感で、奏は涙を流す。
真耶はそんな奏を抱きしめた。そして、小さく言う。
「ほら、泣くな。俺がついるからさ」
そう言った瞬間、2人の体は光の粒子となって空へと消えていった。
そしてこの日、全ての世界から月城真耶と夜桜奏という人物が消えた。
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