第17話 理と理に当てはまらぬ者
真耶は光る体で男と向き合う。真耶の体はバチバチと音を立てている。
「やはりな。自分の体を水に変えれるなら雷にも変えれると思ったが、成功だ」
真耶は自分の体を見た。体には小さな雷がまとわりついている。なんだか、強力な静電気を帯びている気分だ。
「世界の理を歪めるものよ、汝に罰を与える」
「嫌だね。例えあんたが神だとしても、俺はお前に指図されるつもりは無い」
真耶は右手に魔力を貯めた。すると、その部分の雷が強くなり、雷を1点に集中させた強力な武器になった。その威力は、あの時冒険者の方を貫いたものより数倍もの威力だ。
「ま、あの時の技はこの技の実験段階だったしな・・・。そろそろ決着をつけるとするか」
「世界のため・・・理を元に戻す・・・”ゴットフェニックス”」
その魔法は、奏が使ったものと同じ魔法だった。とてつもない高火力の炎が真耶を襲う。
「汝にはこれでは足りん。”イビルフォース”」
更に、闇の力が加わった。このままだと、まずい。炎だけでも対処が難しいのに、闇の力まで加わったとなるとますます対処は難しい。
(ゴットフェニックスって、奏が使ってた魔法じゃないか。当たったらマズイ・・・逃げるか)
心の中でそう思い、全力でその場から飛ぶ。雷の体となった真耶は光の速さで走ることが出来る。凄まじい轟音を鳴らしながら真耶はその場を縦横無尽に走り逃げ回った。
「後ろはガラ空きなんだな!隙だらけだ!」
そう言って死角に潜り込んだ。そして、右手でいつでも貫けるように構える。
「我に隙など無い」
その言葉と共に背中から無数の刃が現れる。それらは全て真耶を襲う。
「いや、隙だらけだね。特に前が」
その言葉と同時に突然目の前に真耶が現れた。男は一瞬何が起こったか分からなかった。しかし、すぐに気づく。
「雷の・・・」
「さよならだな!」
気づいた時にはもう遅かった。その時には既に、真耶の右手は胸を貫き始めていた。そして、真耶の右手が血しぶきを上げながら胸を貫く。
「ゴフッ!こ・・・とわり・・・に・・・収まらぬ・・・者ごときに・・・我が負けるなど・・・あってはならないのだ!”ラストバースト”」
そう叫ぶと、男の体が赤く光り始める。
「我は今から自爆する!汝もろとも道ずれにしてくれよう!」
なんとはた迷惑なやつだ!死ぬなら誰にも迷惑をかけないところで死んでくれ!と、思ったがコイツは自分を殺そうとしているのだから、道ずれにしようとするのは当たり前か。とも、思う。
「仕方がない。逃げてどうにかなるものでもないな」
「我を追い込んだことは褒めてやろう!だが、世界の理である我が負けることなど許されないのだ!」
男の体はさらに赤く染まっていく。もう少しで限界が来そうだ。
「先に言っておくが、この爆発はダイアモンドも粉々に砕く。諦めるのだな」
どうやらダイアモンドに変わるのはダメらしい。それ以上硬い鉱石に変わりたいが、自分はそれを知らない。
「もう諦めることだな」
「・・・そうだな。最後にお前の名前を聞かせてくれ」
「我か?我は世界の理!名をルールと言う!」
「そうか・・・なら、ルール。お前は1つ間違えた。自爆すれば勝てると思ったのかもしれないがそれも無駄なようだ」
「何?どういうことだ?」
「だから・・・」
真耶は話しながらルールと距離を詰め触れる。そして、魔法を唱えた。
「お前自身の物質を変えれば良いだけだ」
そう、その通りである。ルールは自分を爆発物に変えた。なら、逆にそれを変えてしまえば爆発はしない。真耶はルールに触れると灰に変える。
「塵となって消えろ」
そう言って灰となったルールにデコピンをする。すると、その部分からどんどん崩れ落ちていく。
そこで、真耶の意識はそこから引きずり出された。再び目を開けると、そこはベットの上だった。
「起きました!皆さん!マヤさんが起きました!」
「マヤさん!心配しましたよ!」
ルーナとクロバが抱きついてくる。
「なんで俺はここにいるんだ?」
「マヤさんはあの時魔法を使ってから、2日も倒れていたんですよ!私・・・心配して・・・夜も眠れなかったんです!」
どうやら自分はこっちでは倒れていたことになっているらしい。だが、確かにそうだと思う。奏の精神に自分の意識が入ったのだから、自分の体の意識が無いのは普通のことである。
「そうか・・・悪かったな・・・。それより、2日だと?」
「はい。2日間ずっと眠りっぱなしで・・・」
「そうか・・・」
精神世界では2時間程度のことだと思ったが、こっちでは2日もたっていたらしい。精神世界とこっちでは時間の流れは違うようだ。
「ま、何でも良いけど俺はもう大丈夫だよ」
そう言ってベットから起き上がり立ち上がる。周りを見渡すと、奏が居ないことに気づいた。
「あれ?奏は?」
「カナデさんなら隣で寝てますよ」
隣?ベットが1つしかないのに?
不思議に思って布団をひっくり返すと、顔を真っ赤に染めた奏がベットの中に入っていた。
「全然気づかなかった・・・一緒に寝ていたのかよ」
そう言うと、コクコクと頷く。
「そうだ奏、ちょっと胸見せろ」
そう言って胸を触り服を脱がす。
「マヤさんの変態!」
後ろから殴り押し倒された。確かに、胸を触って服を脱がしたらそりゃ変態だわな。
しばらくすると、下着姿の奏が前に姿を見せた。胸の部分を見ると、聖痕は消えている。そして、自分の胸を見る。自分にも聖痕は無い。
「ちょっと触るぞ」
そう言って、胸の谷間や、側面を見る。ついでに下乳も確認した。やはり無くなっている。
「うん、聖痕はもうないな」
「良かった!」
奏は顔を明るくさせて喜ぶ。しかし、真耶は一つだけ疑問が残った。どこで聖痕をつけられたのだろうか?そう思っていると、ルーナが小声で話してきた。
「マヤさん、どこで聖痕をつけられたか気になりますか?」
「なぜわかった!?」
「分かりますよ。それに、恐らくですが聖痕をつけられていたのはカナデさんだけだと思います」
「なぜそう思う?」
「マヤさんにはついてないでしょう。恐らく、たまたまつけられたのだと思います」
ルーナはそう言ってくる。何故ここまでわかるのだろうか、と思ったが、ルーナには博識スキルがあることを思い出した。
「聖痕をつけられたのは、召喚された時だそうです」
それなら納得がいく。真耶はそれを聞いて頷くとお礼を言った。
(聖痕に、理・・・この世界はどこかおかしい・・・本当の敵は魔王なのか?)
そんなことを考えるが、今はその時じゃない気がして考えるのをやめた。
「よし、皆復活したということで報酬を貰おうか」
「あぁ、そういえばそうだったな。ギルドのねーさーん!」
「はい!何でしょうか!?」
「こいつの報酬を出してくれ!」
「は〜い!」
少しすると、大きな袋と謎のカードを持ったギルドの受付の人が来た。
「報酬の10万ゴールドです。そして、今からマヤさんはSランク冒険者となりましたのでギルドカードがアダマンタイトとなります」
そう言って袋と、ギルドカードを渡された。てか、ギルドカードとかあったの?
「ギルドカードはBランク以上ではないと貰えないのです」
ギルドの受付の人は察したように言ってきた。
「なぜ10万ゴールドなんだ?」
「メデュール討伐と、カナデさんを助けたことで臨時報酬が出ました」
そう言ってニコニコ笑顔で見つめてくる。真耶はこの大金をどうしようか悩んでいると、奏が言ってきた。
「私、収納魔法使えるよ」
「まじ?じゃあ頼むわ」
お金を収納して気を引きしめる。
「よし!じゃあ次の街に行く・・・」
「勇者が来たわ!皆!勇者よ!」
ギルドにその声が響き渡った。
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