第175話 対決!理の王者VS神々の使者(上)
なんと、真耶の作りだした魔法陣は日本に行くものだった。まぁ、正確に言えば地球に行くための魔法陣だ。
その魔法陣を使い、真耶達は日本に召喚された。
「よくも!やってくれたわね!」
「残念だったな。ここに来ればお前は下手に魔法を打てないだろ?」
「っ!?よく分かってるわね……!」
「フッ、相手の情報を知っておくのは定石だ。おまえら神々が全世界を独占しようと考えているのであれば、その独占する世界を壊されれば溜まったものでは無いからな」
真耶はそう言ってアヴァロンの剣を奏に突きつける。
「なんだなんだ?」
「何あの人達?」
「映画の撮影か?」
周りからそんな声が聞こえてきた。東京の、それも新宿に来たから人々が集まってきたらしい。
しかも、真耶達を映画か何かの撮影と勘違いしている。そのためか、スマホを片手に撮影している人が多い。
「フッ、馬鹿な奴らだ。近寄ってきたら、殺されるかもしれないのにな」
「あなたは人々を守らなくて良いの?人が死んじゃうんだよ?」
突如奏がそんなことを言ってきた。しかも、さっきまでとは違い、前の奏のような感じがしている。
「今更昔に戻っても意味は無い。それに、俺にとっての故郷はアヴァロンだ。日本人……いや、地球人がどうなろうと知ったことは無い」
「クッ……!」
「お前に1つ教えておいてやる。ここに来た時点でお前の負けは決まっている。ほら、人も集まって来たことだし、そろそろ始めようか。”大地裂絶”」
真耶は話終えるとアヴァロンの剣を地面に突き刺し一気に振り上げた。そのせいで地面は綺麗に切り裂かれる。そして、その剣から放たれた斬撃は真っ直ぐ奏に向かって襲いかかった。
奏はそれを避けようとするが、地球上のものを壊せない以上、防ぐしかない。何とか結界を張り耐えた。
「おぉ!凄い!」
「これなんの映画の撮影!?」
「凄いエフィクトだな!どうやったら地面が切れたように見えるんだ!?」
そんな声がチラホラ聞こえる。馬鹿な日本人だ。この状況でまだ映画の撮影だと思っているらしい。そろそろ目を覚まさせてやるか。それに、本気も出したいしな。
「”王に導かれし者達よ。今1度我に力を与えよ”」
そう唱えた瞬間、真耶の服の内ポケットから16個のオーブが出てきた。大きさはバラバラで、大きいものから小さいものがある。真耶はそのオーブを自分の手のひらの上で回転させた。
奏はそれを見て嫌な予感がして攻撃をしてくる。
「”ファイアーボール”」
奏の手から放たれた炎の玉は真っ直ぐ真耶に向かって飛んでいく。しかし、謎の力に阻まれ弾かれ後ろの建物を壊す。
ジリジリジリジリ……
建物に炎が着いたことで火災報知器が鳴った。その瞬間、その場の人々は今起きていることが映画か何かの撮影ではなく、本当の異常事態だと気づき、叫び声を上げながら逃げ惑う。
『きゃあああああああああ!!!!』
真耶は逃げ惑う日本人を見ながら少しだけ微笑む。そして、背中に背負っている剣を中に浮かせ、オーブの周りに留めた。
ピーポーピーポー……
どこからかパトカーのサイレンの音が聞こえる。そして、気がつけば近くにいた警察に包囲されていた。
「君達!何をしている!話を処で聞くからちょっと来い!」
何も知らない警察はそう言って警棒を構え近づいてきた。奏はそんな警察を一瞥すると少しだけ俯く。
真耶はそんな警察には目もくれず、詠唱を始めた。そして、自分の手のひらの上で魔法陣を描き始める。
「”我が王道に導かれし……」
警察はそんな真耶を不思議に思いながら話しかけてきた。
「君達、YouTubeか何かかい?もし何かの撮影でやってるならこれはやり過ぎだよ。ほら、1度署まで来て。そこで話を聞くから」
警察はそう言って真耶の手に触れようとした。しかし、バチッと何かに弾かれ触れない。
「っ!?何なんだ!?それに君!何を言っているんだ!?1度話を止めて聞きなさい!」
「君もだよ。そんな俯いてないで、ちゃんと話をして謝るなら考えてあげるから」
そう言って奏にも触れようとする。
そして、音が近づいてきて気がつけばパトカーが止まっていた。かなりの数だ。ざっと数えて30台くらいだろうか。皆警棒を持っている。中には拳銃やさすまたを持っている人もいる。
「……」
「……今ここに顕現せん。ユニオン”」
真耶はそう唱えジャンプをすると、アヴァロンの剣を回転するオーブの中に剣を突き刺した。その瞬間、剣とオーブがアヴァロンの剣に吸い込まれていく。
そして、その剣は強い光を放ち形を変えた。
「っ!?うわっ!?何だ!?」
警察はその光に目が眩み少しだけ後ろに下がる。
「ククク……これで最後にしよう。本当のラストバトルだ。この、”理滅王剣アヴァロンナイト・ユニオンモード”でお前の理ごと消滅してもらう」
真耶はそう言ってアヴァロンナイトを奏に突きつけた。
「……」
しかし、奏は何も言わない。
「ちょっと君達!いいから一旦署に来なさ……」
「うっさいわね!私を消滅させるなんて笑わせないでよ!神々が人間に負ける訳には行かないのよ!」
「っ!?」
突如奏が叫んだことで、警察は驚き言葉を失う。
「ちょっと!君達!いい加減に……っ!?」
その時、警察は何が起こったのか分からなかった。突然視界が低くなり、強烈な痛みが顔を襲った。
そう、奏に触れようとした警察は奏に鼻より上を切り裂かれ殺されてしまったのだ。
当然、目の前でそんなものを見せられた警察達は全員即座に拳銃を構える。
「もういいわ。全員容赦はしない。”エレキフィールド”」
奏は小さくそう唱えると、雷のフィールドを作り出した。それは、一瞬で大きくなり警察達全員を一瞬で感電させる。真耶はすぐに気が付き範囲外まで逃げた。
「お、いいねいいね。やっとやる気になったか。それじゃあラストマッチと行こうか」
そう言って真耶はすぐに奏の後ろをとる。
奏は、一瞬で真耶が自分の後ろに来たことにより戸惑う。ついさっきまでこんな速さじゃなかったからだ。どうやら真耶も本気を出したらしい。そのことに気がつきすぐに逃げようとする。
しかし、気づくのが遅れた分奏には隙がある。そして、当然真耶の方が速い。だから、ギリギリ逃げきれずに攻撃を食らってしまう。
「きゃあっ!」
ギリギリ結界で防いだから切られはしなかったものの、そのままの威力で遠くに吹き飛ばされる。
「フハハハハハ!やっぱりフィールドは大きく使わないとだな!”理滅・歪曲斬”」
真耶は空中を剣で切り裂く。その瞬間、奏のいる空間が歪んだ。
「ぐっ……ぐぎゃあああ!」
奏は情けない悲鳴をあげ肩から血を吹き出す。そして、すぐに真耶に反撃した。
「”ビッグバンボール”」
「”理滅・消去の矢”」
奏の作りだした高密度に圧縮された爆発する玉は、真耶の攻撃で一瞬で消される。そして、再び真耶は目の前に来た。
「しまっ!避けられない!」
奏は咄嗟に結界で自分の周りを覆う。その刹那、真耶の剣が結界にぶつかった。
再びどこか遠くに飛ばされる。そして、奏は隕石のような速さで地面に激突し、地面をえぐりとった。
「クッ……!」
「ほぉー、始めてきたな。地球って案外狭いんだな」
真耶はそんなことを言って剣を構える。
「What happen!?」
「Amazing!!」
周りからそんな声が聞こえる。見渡すと、そこはアメリカだった。
「よそ見してんじゃねぇよ。”理滅・獄炎の不死鳥”」
真耶がほとんどゼロ距離で紫色の炎の不死鳥を放ってきた。当然奏は交わすことが出来ずに結界で守る。
そして、そのまま上空まで連れていかれる。
「ク……ソ……!」
「弾け飛べ。”理滅・時間の扉”」
奏の周りに無数の扉が現れる。それは、丸い形をしていて青く光っている。
「タイムズゲート……!まずい!”クロノストッ……きゃあっ!」
突然不死鳥が爆発した。そのせいで結界は木っ端微塵に碎ける。
「まずい……!”レインボーウォール”」
再び結界を張った。それも、何重にも。
そして、奏が結界を張った2秒後に扉から一体ずつ紫色の炎の不死鳥が飛び出してきた。
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