第174話 最後へ
「1つ聞きたいんだけどさ、なんで記憶が戻ったの?私の魔法は完璧だったのに」
奏はそう言って不思議そうに聞いてきた。
「……」
「言いなさいよ。どうせ死ぬんだから」
「……完璧なんてものはこの世には無いんだよ。どんなに完璧だと思い込んでいても、必ずどこかに抜けているところがある」
「そんなことを聞いてるんじゃないわ。いいから答えて」
「……」
しかし、真耶は答えない。少しだけ目を細め無言になる。そして、小さな声で言った。
「そもそも、誰のせいでこんなことになったと思っている……?」
「はぁ?何?聞こえないんですけどー。もっとハッキリ……」
「誰のせいでこうなったと思う!?全てお前のせいなんだよ!俺がこうやって戦ってるのも、記憶が1回消えたのも、何もかもお前のせいなんだよ!あの時だ……!あの時お前がモルドレッドに呪いさえかけなければ!」
「っ!?気づいてたの!?」
真耶の叫び声に奏は動揺を隠せない。目を見開き、なぜ?という顔をする。それでも真耶は続けて言った。
「なぜ?という顔をしてるな。お前は馬鹿だから教えてやるよ。神々と人々では魔力の質が違ぇんだよ!あの時市場でも、お前は悪目立ちしていた。だが、皆は見て見ぬふりをした。俺もだ。だが、お前はすれ違いざまにモルドレッドに呪いをかけた。それも、《《俺と一緒にいると、俺の生命力を吸い取る》》と言う呪いをな。城に戻ってすぐに気がついたよ。すぐに呪いも解いた。だが、お前を殺さない限りあの呪いは一生解けないものだった。だから俺は、ラウンズを抜けアヴァロンから出ていったんだよ!お前を殺すためにな!ちょうどお前が地球にいると聞いたから真っ先に向かったよ。そしてあの日、俺が真耶となってお前の目を欺こうとした時、突如記憶が消えた。あの魔法はお前の魔法じゃなくて、ゼウスの魔法だろ?残念だったな。あの老いぼれももう潮時だ。もし帰れたら伝えといてくれよ。死ねってな。まぁ、どうせ無理だろうけどな。なんせ、俺が殺すから!」
真耶はそう言って不敵な笑みを浮かべる。だが、その笑みはどこか気味悪さを感じさせた。
そして、これまで生きてきた中でもそんな顔をしたのは初めてなのではないかというほどの憎悪に満ちていた。
「ふふふ……何よ!いい気になって!私が神々の使者だってわかったからと言って、勝てる気になってるのはおかしいわよ!私だって力をつけたんだから」
そう言って自慢げな顔をする。確かに、奏は力をつけた。それはもう、他の神々を圧倒出来るくらいに。だが、そんなことは真耶には関係ない。どうせ一撃で決まるのだから。
「俺もお前も、この世界……いや、全世界からすれば、異物なんだよ。理を変えるものなんか特にな。だから、異物はとっとと排除しなければならない。世界のためにな」
「それはこっちのセリフよ」
2人はそう言って不敵な笑みを浮かべ合うと、同時に魔法を発動する。
「”アルテミスレイ”」
「”プリズムレイ”」
2人の放つ光線がぶつかる。そして、とてつもない光を放った。真耶はそれを見ながら同時に魔法陣を作っていく。
さらに、3つほど大気中の魔力を使い魔法陣を描く。
「”インフェルノ”」
突如地獄の炎が迫ってきた。奏がどこからか攻撃してきたのだ。真耶はそれを確認すると、即座にもう1つ魔法陣を描く。
「”オーロラウェーブ””スターダストストリーム””グランドギアス””アストロプリズムレイ”」
真耶は炎を防ぐと即座に3つの攻撃を繰り出す。その攻撃は広範囲に渡って攻撃を繰り出した。
さすがに奏も避けられなかったのか、その攻撃を食らってしまう。
「うきゃあ!」
「どうした?避けなくてよかったのか?あぁそうか!避けられなかったのか!どんくさいやつだな!」
真耶は煽るように大声でそう言う。奏は少しだけふらつきながら立ち上がると息を荒らげ、殺気を強めながら睨んできた。
「そんな目をしても無駄だ。あと1分で魔法陣は完成する」
「……させないわよ!私達の計画が狂ってしまうからね!」
「フフフ……フハハハハハ!お前らはまだ俺達が計画に気づいてないと思っているのか!?馬鹿め!もうとっくに気づいている!お前らは俺という存在を消すことで、全世界を自分たちのものにしようとしている。だからゼウスは世界の父と自分で言って広めた。とうだ?違うか?」
真耶の問いに奏は言葉を失う。
「なんでそこまで……!?」
「俺を舐めるなよ。そうやって侮るのはお前達神々の悪い癖だ。”十拳剣”」
真耶はそう言って剣を天に掲げた。すると、黒いオーラがまとわりついていく。真耶はそれを一気に振り下ろした。すると、黒い斬撃が飛び奏の右腕を切り裂く。
真耶はそれを見て不敵な笑みを浮かべた。
━━一方その頃、モルドレッド達は……
「……モルドレッド、1ついいか?」
「何?」
「呪いは何時解いたんだ?」
「……あの呪いは真耶が日本に行ってすぐに解けた」
「っ!?なるほどな……」
モルドレッドの言葉を聞きアーサーは納得する。
「神々は世界を自分のものにするために真耶を殺そうとした。だから、妻であるモルドレッドに呪いをかけた。しかし、真耶が日本に行ったことで呪いの必要性が無くなった。だから解いたのか。そして、逆に真耶に記憶が消える呪いをかけた」
「そういう事。だから真耶は、私を見た時すぐに気がついて敵の振りをしたの。王も気づいてたんでしょ?」
「何となくな。理由はわからんが、真耶が俺の敵のふりをしようとしているのは気がついた。だから、我がペンドラゴンに召喚され、少ししてから使い捨ての人形を真耶に送った。恐らく、あの女は真耶をあの場所に閉じ込め殺すつもりだったのだろう」
「そういう事。……ほら、出口が見えてきた」
遂に、モルドレッド達は城の外に出た。時間はまだまだある。残り1分ってところだ。
「真耶。負けるなよ」
その言葉は小さく響き渡った。
━━そして真耶は……
「……残り1分……十分よ。それだけあれば、あなたを殺せるから」
「止めておけ。どうせお前じゃ俺を殺せん」
「そんなことないわ!あの王様君も闇属性に光属性の剣なんて、馬鹿じゃないの?反発し合うに決まってるでしょ!」
奏はそう言って誇らしげな顔をする。しかし、その言葉を真耶は少し疑問に思った。
「闇属性?……あぁ、なるほどね。お前、あの言葉信じてんのか。馬鹿だろ。エンドワールなんて剣があるわけないだろ。あれは嘘だ」
「え?嘘……!」
「嘘じゃねぇよ。だからアーサーの攻撃が異様に効くわけだ。騙されてんのか」
その言葉を聞いて奏は顔を真っ赤にしてプルプル震える。そんな奏からはどこか、嫌な気配が漂っている。
恐らく怒って本気の攻撃をするのだろう。だが、思い出して欲しい。あと1分だ。1分なんて話しているだけですぐにたってしまう。
だから、当然1分が経って魔法陣は完成した。
「残念、時間切れだ。”世界変”」
真耶はそう唱えた。奏は咄嗟に逃げようとするが、突如自分の目の前に結界が現れ逃げられなくなる。
その結界はだんだん小さくなっていく。そさて、真耶の近くに引き寄せられる。
「バカね!殺してあげるわよ!」
「殺してもいいけど、俺が死んだらこの魔法は暴発して神々の世界を壊すよ。媒体を神々の世界にしたから」
「っ!?」
その言葉を聞いて奏は何も出来なくなる。そして、どんどん結界は小さくなり、遂に2人分の広さしか無くなった。
「ほら、最終ラウンドだ。決着をつけようぜ」
真耶がそう言った途端、その空間が白い光に包まれた。その光はすぐに消える。奏はすぐに目を開いた。すると、そこには驚きの光景が待っていた。
「っ!?ここって……日本……!」
「さぁ、始めよう!俺とお前の最後の戦いを!」
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