第173話 対決!真耶達と奏
「あら?遅かったわね」
部屋の奥からそんな声が聞こえた。見上げると、奏がアーサーの椅子に座っている。そこは階段の上だからか、少し高くなっていた。そして、王の冠を被っていた。
「ねぇ、これって何?全然王になれないんだけど」
「悪いな。我か認めた者しか王にはなれん。今の正当な王位継承者は真耶だ」
「あらそう?なら無理やりでも奪うわ。まぁ、今の話を聞く限りあなたは殺したらダメみたいだから、それ以外全員殺すわ”ストライクアローズ”」
奏はそう言って手を振り上げると空中に無数の青く光る矢を作った。見た感じ100や200所の数じゃない。
確実に真耶達を殺す気だ。しかし、真耶もここでやられる訳にはいかない。恐らくアーサー以外全員殺すと言っているのだろう。そんなことは絶対にさせない。たとえ世界を滅ぼしてでもモルドレッドは絶対に守る。
「任せて。”マジックシールド・Lv9”」
そんなことを思っていると、ヴィヴィアンが後ろから結界を張った。かなり強力な結界だ。その結界に奏の作り出した矢が突き刺さる。
無数の矢は結界を壊そうと何発も突き刺さるが、それでも壊れない。そして、遂に奏の作り出した矢が無くなった。
結界はボロボロだが防ぎきることが出来たみたいだ。
「……ハァ……ハァ……!」
しかし、見た感じヴィヴィアンはもう限界のようだ。次の攻撃は防げそうにない。
「ヴィヴィアン、よくやった。あとはマカセロリ」
真耶はそう言って親指を立てた。
『……』
その言葉にその場の誰もが言葉を失う。まるで氷の魔法でも使ったかのような固まり具合だ。それに、微妙に寒い。
「冗談だよ。あとは任せろ」
「ふふっ、冗談なんて可愛らしいわ。でも、あなたにそんな余裕があるの?ねぇ、まーくん。”ジャッジメントアロー”」
奏はそう言って金色に光る矢を作りだした。これは、真耶が前に何度か見せたことがある技だ。だが、その威力は全く違う。
「フッ、舐めるなよ。”光れ、五芒星”」
真耶はそう唱え星を描き始めた。その星は不気味な程に赤い光を放つ。
「散れ。”レッドスターダスト”」
その瞬間、星は無数の小さな光となり、金色の矢に向かって飛んでいく。その様子はまるで、流星群のようだ。
そして、2つの力がぶつかった。向かってくる金色の矢は赤い流星群にぶつかると、少しづつだがスピードを落としていく。
そして、無数の流星群は金色の矢を完全に止めるとそのまま爆発させた。そのせいで、赤い十字の光が空中に浮かぶ。
真耶達と奏はそれを見ながら少しだけ殺気を強める。
「やっぱり本気なんだな?」
「何?逆に私が本気じゃないと思ったの?」
「いや、お前じゃないよ。まぁいいけどさ」
真耶の言葉にその場の全員が首を傾げる。真耶はそれがわかっていながら何も言わずにただリーゾニアスを構えるだけだった。
「もう全てはどうでもいいのとなんだ。俺が招いたことは、俺自身でケリをつける。大事なのはそれだけだ。”理滅・深淵の理皇帝”」
その瞬間、真耶の体が青く光り始める。そして、その光はマントや王冠などのいかにも王がつけるであろう装飾品となる。
「さぁ、始めよう。理を超越した、新次元の戦いを」
真耶がそれを言った途端、突如その場から姿を消す。そして、約2秒後に奏の背後に現れた。
「”ヘファイストスブレイク”」
全てを燃やし尽くすような豪炎が奏を襲う。
「”ブリザードフラワー””アストロプリズム””ネザーレイ”」
奏は同時に三重発動を行った。そのせいで、真耶の放った炎は凍りつき、即座に真耶に向かって暗い紫色をした光線が屈折しながら向かってくる。
「”理滅・改理”」
その瞬間、光は真耶の体をすり抜けた。
「っ!?なんで!?」
「さぁな!”天より受けし炎は、天を焦がし地を灰と化す。天照”」
その瞬間リーゾニアスに紫色の炎が宿る。そして、真耶はその剣を斜めに振り下ろした。
その瞬間、奏の体に傷がつく。そして、その傷から紫色の炎が発火した。
「何!?これ……!」
「なんだろうな!”クロスプラネットブレイク”」
今度は奏の右胸をバツ印のような形で切り裂いた。すると、奏の後ろが真っ黒になり切り裂いた場所が白く光る。その光は瞬く間に大きくなり、奏の右胸をバツ印の形で切り裂いた。
「きゃあああああ!」
奏の無様な悲鳴がこぼれる。しかし、どういう訳か胸の傷を瞬時に回復させた。そして、どこからか剣を取り出し斬りかかってくる。
「無駄なあがきだ!」
真耶はその、横払いにされた剣を体を反り避けると、そのままの勢いでかなでの顎を蹴りあげた。そして、自分はバク転のように一回転し、体制を整える。
奏は、突如顎を蹴り上げられ顔が上をむく。それだけじゃない。体は宙に浮き、頭が追いつかない。
「終わりだ」
そんな奏の首目掛けて真耶は剣を振るった。しかし、その剣は当たらない。途中で奏が爆発魔法を使い、爆発させその勢いで後ろに後退したからだ。
しかし、真耶は王冠と残りのオーブを手に入れた。
「残念だったな。終わらなかったけど、ここからが本番だよ」
真耶はそう言ってその王冠を被った。その瞬間、真耶にとてつもない力が流れ込んでくる。
そして、その時、真耶は完全な王となったのだった。
「……」
「……」
「……あなたが王とは滑稽ね。モブで誰からも見て貰えず、知られることさえない。まさに孤独の王ね」
「……そうだな」
真耶は奏の言葉に頷きモルドレッド達の目を見た。何かを悟っている目だ。恐らく、作戦では説明しなかったが真耶がしたいことをもう知っているのだろう。
「5分だな。5分でこの城から逃げろ。それ以上は俺も耐えきれん」
「分かった」
「ん。……生きて帰ってきて」
モルドレッドは小さく言った。しかし、真耶はその言葉に反応しない。
「……とは言わないよ。でも、いつか会えるよね?」
その問いすらも答えない。いや、答えられないと言った方が良いだろうか?この先どうなるかなんて真耶には分からない。だから、会えるかどうかは分からない。
ただ1つ言えることは、もし真耶が次にモルドレッド達に会えるのであれば、それはそういう運命なのだ。
それに、次に会える時は理を変えなくてもいい平和な世界が良いな。もう戦いとはおさらばした世界。そんなのが良いんだよな。
「……まぁ、会えると思ったら会えるんじゃないの?人の意志というのは時に、魔法以上の強さを見せる。たとえそれが不可能だと言われてもな」
モルドレッドはその言葉を聞いて顔を明るくした。そして、涙を流しながら振り返って扉に向かって歩き始める。
「”フレアアロー”」
「……”ハーモニーウォール”」
奏はモルドレッド達を行かせまいと攻撃してくる。しかし、真耶は指を1回パチンッとならして壁を作って防いだ。モルドレッド達はそれを一瞥すると、素早い動きで部屋から出ていく。
「残念だったな。お前と俺の2人きりだ。最初みたく2人きりで話し合わないか?」
「嫌よ。死ね。”ウインドカッター”」
「”魔氷晶”」
奏は風の刃を放ってきた。それを氷の壁を作り防ぐ。そして、もう一度リーゾニアスを握る手に力を込めた。
「なぁ、最初に言ったよな?俺は日本に帰らないって」
「突然何よ?」
「前言撤回するよ。一緒に日本に帰ろうぜ」
「はぁ?急に何?私に振られたのがそんなに悲しかったの?馬鹿なこと言わないで!あなたなんか初めから嫌いよ!」
「別に知ってるよ。お前がどこから来たかも、なんで俺を狙うのかも。だから、場所を変えようと言っているのだ。こんな狭い部屋じゃなくてさ。もっと場所を大きく使わないと」
真耶はそう言って魔法陣を描き始めた。奏はそれを見た途端さっきまでの余裕は無くなり殺気を強める。
「どうした?急に焦りだして」
「なんでもないわよ!」
「フッ!じゃあ、こっちもの頃起きなく作らせてもらうよ。”我が心に答えよ。王の剣よ”」
その瞬間、地面に文字が現れる。その文字は、一瞬でアヴァロン中に広がる。そして、その文字の中心から剣が現れる。
「アヴァロンの剣だ。これで全て揃った」
真耶は小さくそう呟いた。
今度こそ最後だろう。その時が近づいている。魔法陣完成まで残り4分57秒。
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