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モブオタクの異世界戦記  作者: 五三竜
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第172話 エルマの痛み

 ━━そして、アーサー達は……


「……フッ、まさか、ランスロットも自分の部屋がこうなるとは思わなかっただろうな」


「そうだな」


「そうね」


 そう言って3人は部屋を背に扉から出ていく。その後ろの部屋はボロボロになっていた。部屋にあったものは全て破壊され、壁や床は焼け落ち朽ちている。


 アーサーはランスロットの臣下のレンネンを担ぎ、騎士道のオーブを取って次の場所へと向かっていく。


 一体何があったのかと言うと、それは10分前に遡る。


 ━━10分前……


 アーサーとガウェイン、ヴィヴィアンは真耶に黙ってランスロットの部屋に来ていた。そこにはレンネンが椅子に座って待っており、アーサー達と対峙する。


「よく来たな。さぁ、我を倒してみろ」


 レンネンはそう言って剣を構えた。さすがは己の騎士道を持つ者。正々堂々戦いたいらしい。


 アーサーからしてみれば、別に正々堂々戦わなくてもいい。だが、向こうが正々堂々戦いたいならこちらもそれに応じるだけだ。


「良かろう。お前の力を見せてみろ」


「はぁ!”聖光明絶裂シャインソード”」


 レンネンはそう言って剣を振り上げ突っ込んできた。しかし、アーサーは動く気配を見せない。


「はぁぁぁぁぁぁぁ!」


 レンネンは剣を振り下ろした。光り輝く剣がアーサーを襲う。しかし、その攻撃がアーサーに通じることは無かった。


「どうした?攻撃しないのか?」


「っ!?何故!?」


「正々堂々戦ってやるんだ。少しくらい本気を出してやる。これは、俺の王のオーラだ。一定の威力までの攻撃は全て防ぐ」


 レンネンはその言葉を聞いてすぐにその場から離れた。そして、剣を構える。


「王の力を見せてやろう。”創世そうせい真滅の聖剣エンドオブセイクリッド”」


 アーサーはそう言って剣を振り上げすぐに振り下ろした。その刹那、空間が白い光に包まれる。そして、光が消えるとその場はめちゃくちゃに壊された。


 しかし、レンネンはまだ立っている。どうやらこれくらいでは死なないらしい。なら、もっと強い技を使わなければならないということだ。


 アーサーはなにかの構えを取り剣に魔力を込めていく。


「終わりだ。”創世そうせい神斬波しんざんは”」


 アーサーがそう言って剣を一瞬で何度も振り、その空間を無数に切り裂く。そして、パチンッと指を鳴らした。その瞬間、空間ごとその部屋は壊される。さらに、部屋の外まで破壊される。


 アーサーはその光景を見つめながら目の前を見すえた。目の前ではレンネンが倒れている。どうやらさっきの技に耐えきれなかったらしい。


 価値を確信したアーサーはレンネンに近づき言った。


「どうだ?これが実力の差だ」


 そして今に繋がる。アーサーはレンネンの体をかつぎあげると次の場所へと向かった。


「……これって、私達要らなかったよね?」


「だな。まぁいいだろ」


「そうね」


 ガウェインとヴィヴィアンはそんな会話をしながらアーサーについて行く。そして、それから5分程度歩いたところで真耶達と合流した。


「そっちは終わりか?」


「ああ。これでだいたい揃った。あとはエルマが持っているんだろ?」


 アーサーはそう言って隣の道を見た。真耶は頷きアーサーと同じ方向を見る。そのには1本の道があった。その先には大きな扉がある。


 この道は、王の間に行くための道である。扉を抜けると待機室があり、その奥が王の間だ。


「お前ら、気を引き締めろ……て、なんで服脱いでんだよ」


 真耶が振り返ると何故かヴィヴィアンが服を脱いでいた。


「ふぇ!?あ、いや、えと、その……ごめんなさい!私……自分のオーブ無くしちゃった……」


 ヴィヴィアンは申し訳なさそうに言ってくる。しかし、真耶は全く焦ることなく言った。


「だろうな。お前のオーブは俺が持ってるからな」


「ふぇ!?」


 ヴィヴィアンは驚きのあまり情けない声を出す。真耶は、そんなヴィヴィアンを見て呆れて何も言えなくなる。


「てか、何時取ったの?」


「さっき出会った時にな。ほら、早く行こうぜ」


 真耶達はそう言って扉に向かって歩き出した。ヴィヴィアンはそれを見て慌てて服を着て追いかけた。


 真耶は扉の前に着くと、ゆっくり扉を開ける。これまでトラップはなかったが、もしかしたらここにあるかもしれない。そう思ったからだ。


 だが、そこにあったものは、トラップなんかよりもっと重要で、驚きを与えるものだった。


「っ!?エルマ!」


 なんと、エルマがいた。エルマは正座をして座っていた。しかし、その目には光はなく、どこか虚無を感じさせる。傍からみたら死人のようだ。


「っ!?……やられた……!」


「だいぶ酷い拷問を受けたみたいだ……!」


「こんなの……!こんなの!絶対に許さない!」


 真耶はエルマに寄り添い抱きしめる。アーサーとモルドレッドはそう言って拳を強く握りしめた。ガウェインとヴィヴィアンは何も言えなくなる。


「真耶、いつものは出来ないのか?」


 アーサーが聞いてきた。


「出来ないことは無い。だが、ここまで精神を壊されると治せるかは分からない……」


「それでも、やれることはやるべきだ。治せる可能性が少なくても、やらないよりはマシだ」


「……そうだな」


 真耶はそう言って目を閉じ魔力を込め開いた。その左目には、赤、緑、ピンク色の光が放たれている。そして、右目には時計が浮かんでいる。


「時を戻せ。”クロノススフィア”」


 真耶はそう言ってエルマの時間を戻した。そして、心眼で心を読み邪眼で心の中に入る。そして、優眼である程度の心の痛みを和らげた後、邪眼でエルマが犯されたという記憶を消す。いや、それだけじゃない。エルマが拷問を受けた記憶を全て消す。


 そして、真耶は戻ってきた。


「……これである程度は大丈夫だろう。記憶は消したが心にその痛みが刻まれているかもしれん。もしかしたら、無意識に何かを恐れることがあるかもしれない」


「そうか。まぁ、その時はその時だな」


 アーサーはそう言ってエルマの頭を優しく撫でる。真耶もエルマの顔を優しく触れる。


「……少しの間眠ってろ」


 真耶はそう言って魔法をかけ眠らせた。そして、絨毯の中に入れる。


「……オーブは無いか。じゃあ、持ってるのは奏か」


「行こう!こんなことするなんて、たとえ一緒に旅をしてきた人でも許さない!」


「あぁ。行くぞ」


 真耶はそう言って扉の前に来た。


「次がラストバトルになるかもしれない。いや、多分そうだろう。こうなったのも全て俺のせいだ。自分の失敗は全て自分でケジメをつける」


「本当に君に出来るのか?」


「敵と言っても少しの間一緒にいたんだろ。情が湧いたりしねぇのか?」


 アーサーとガウェインはそう聞いてくる。しかし、真耶は表情を1つも変えることなく言った。


「湧いたりしない。俺を裏切り、ルーナ達を裏切り、エルマにあんなことをした。だが、それ以上にモルドレッドに悲しい思いをさせた。全て許せないんだよ。たとえ少しの間一緒に居ても、俺は敵対するものは殺す。それが俺だから」


 冷たい声でそう言いきった。そのことばにアーサーとガウェインは頷く。ヴィヴィアンは笑顔で見つめる。そして、モルドレッドは真耶にキスをした。


「これが最後じゃないよね?」


「……フッ、なんだ?心配してるのか?俺はフラグを折るのが得意なんだ。それに、俺が死ぬなんてあるわけないだろ」


「フッ、確かにな。行く前に、作戦を確認しておく。まず、我らでパーっとやってその間にお前が王になれ。王になる儀式は王冠を被るだけだ。王冠は俺の椅子の上にある」


「簡単だな」


 真耶はそう言って不敵な笑みを浮かべた。


「ねぇ、真耶は本当に死なないよね?絶対に生きて帰って来るよね?」


「何だよ?それフラグだからな。それに、俺は死なない。いや、死ねないんだ。今は死ねるが、もし俺が王になれば《《王は自分と同じ魔法でしか死ねない》》んだ。だから、俺が死ぬには《《自分のルールを変え、この世に存在しない、もしくは出来ない状態に変える》》しかないんだ」


「じゃあ、死なないね」


「そういうことだ。ほら、お前ら気を引き締めろ」


 真耶はそう言って扉に手をかける。モルドレッドは心配そうな顔をしていたが、すぐに気を引き締め戦う時の顔つきになる。


 真耶達は、準備が出来たのを確認すると、勢いよく扉を開けた。

読んでいただきありがとうございます。

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