第168話 オーブの乱獲
真耶達は次の階へと移動していた。残り11人倒さなければいけないとわかった以上、進むことに時間をかける訳にはいかないからだ。
そして、ついに真耶達は2人目の刺客に出くわした。そこは、広い空間だ。壁や床、天井は平で何も障害物は無い。そんな空間の真ん中に男は立っていた。
「ハハッ!面白い戦いになりそうだ」
真耶はそう言って目の前の人と対峙する。その人は、見た感じ男だ。そしてごつい。さらに、背が高い。身長はざっと数えると、2m以上ある。
真耶はそんな男を見て笑い声を上げた。なぜなら、その男はガラハッドの臣下だから。そして、その男の持っているオーブはブラックオーブだからだ。
ブラックオーブは基本的に闇魔法を使うと思われがちだが、それはパープルオーブでこれは違う。
ブラックオーブの能力は重力魔法だ。空間の重力を消したり増やしたり、操ることが出来る。
「ガンネル、お前も同じように意識を乗っ取られてるんだな。すぐに元に……」
「待て、こいつは俺がやる。前の戦いも思ったが、ここで魔力を使うわけにはいかない。お前は極力戦うのを控えろ。それに、俺はコズミックオーブの確認をしておきたい」
そう言ってガウェインは真耶の前に立ちビー玉のようなものを見せてきた。そのビー玉の中には何か幻想的なものが入っている。一言で言うなら、宇宙が入っている。
「……そうだな。確かに魔力は温存するべきだ」
真耶はそう言って後ろに下がった。
「さて、すぐに片をつける。”ディスアセンブル砲”」
ガウェインはそう言って先制攻撃をした。その攻撃は、真っ直ぐガンネルに向かっていく。ちなみに、ガンネルとはガラハッドの臣下の事だ。要するに、目の前の男のことだ。
ガンネルはその飛んできた攻撃を避けると、ブラックオーブを使った。突如、黒い円がガウェインの足元に描かれる。すると、突然ガウェインに2倍の重力がかかった。
「……まぁこんなものか。君の力ではこれが最大だ。もう少し実力の差を知れ。”コズミックオーブ解放。コズミックアロー”」
ガウェインがそう言うと、空から巨大な矢が降ってきた。そして、その矢はガンネルの胸を貫く。
しかし、ガンネルは死ななかった。
「精神を貫く矢……。一時的に気絶させただけだ」
勝負は一瞬で着いた。真耶はそれを確認すると、ガウェインの元まで駆け寄る。
「流石だな」
「当たり前だ。行くぞ」
真耶達は、オーブとガンネルを回収すると、すぐにその場を後にした。そして次の場所へと向かう。
━━次の場所は天空の庭だ。この場所はトリスタンの部屋の近くにある扉から行くことが出来る。だから、ここはある意味トリスタンの庭だ。
それでわかったのだが、どうやらこのオーブを持った刺客が配置されている場所は、そのオーブの持ち主の部屋の近くらしい。
時のオーブもモルゴースの部屋の近くだったし、ブラックオーブもガラハッドの練習場だった。そして、トリスタンの庭。ここにあるオーブと言えば1つしかない。
「スカイオーブか。そして、それを守るフィリア」
そう言って目の前の男を見つめた。その男は短髪低身長で、女性のような顔立ちをしている。
「次は私。任せて」
モルドレッドがそう行ってくる前に出た。手には手のひらサイズの推奨のようなものを持っている。それは、黒く染まっており中に星のように煌めくものが入っている。
「スターオーブの力を見せてあげる」
モルドレッドはそう言って戦闘態勢を取った。そして、スターオーブを空中に浮かせる。
その瞬間、フィリアがスカイオーブを使い空に飛び上がった。真耶達はそんなフィリアに目をやるが、モルドレッドは全く見ようとしない。
フィリアはそんなモルドレッドに向かって狙いを定め、突進してきた。手にはナイフを持っている。
「”スターオーブ解放。星の瞬き”」
その瞬間、フィリアの腹の部分が突如光り始め弾け飛んだ。その小爆発から放たれた風はフィリアを吹き飛ばし庭に墜落させる。そのせいで、トリスタンが大事にしていた花壇がめちゃくちゃになった。
「あ〜やっちまったな」
真耶はそう言いながら花壇の中に足を踏み入れさらにめちゃくちゃにする。そして、スカイオーブとフィリアを回収した。
「これ絶対にトリスタン怒るぞ」
「知らねぇよ。やられるトリスタンが悪い。それに、1回めちゃくちゃにしたら2回やっても同じだろ」
真耶はそんなことを言いながらその場を後にしようとした。その時、ヴィヴィアンがキョトンとした顔で言ってきた。
「そういえばだけどさ、みんなはどこに行ったの?私オーブ以外に収納魔法に入れた覚えないよ」
「あいつらなら絨毯の中にいるよ」
「毎回広げてたろ。見てなかったのか?」
真耶とアーサーは2人して呆れた目でヴィヴィアンを見る。
「うぅ……ごめんなさい」
ヴィヴィアンは申し訳なくなってその場に土下座した。真耶はそんなヴィヴィアンのズボンと下着を少しだけ脱がせお尻を力いっぱい叩いてから次の場所へと向かい始めた。
━━その頃エルマは……
「これで何回目?あなた、よっぽど気絶するのがお好きみたいね。それなら、何回でも気絶させてあげるわ」
奏はそんなことを言いながらエルマの首を絞める。
「うぅ……やめ……て……くだ……さい……!」
「はぁ?嫌に決まってるでしょ。そもそも、今の私はストレスが溜まってるのよ!なんであんなぶりっ子みたいなことしなきゃならないの!?それに、結局あのと男を殺すことが出来なかったし!最悪よ!」
奏はそんなことを言いながらエルマを鞭で叩く。さすがにそこまで叩かれるとエルマも耐えきれない。体に傷ができ血が流れ始めた。
「ひぐぅっ!いだい!ああああああああああああ!」
1度痛みが襲ってくるとどんどん痛みは襲ってくる。そして、忘れていた股の痛みが再び襲ってきた。体感だが今のお守りの重さは100キロ近くある気がする。それくらい痛い。
「真耶様……早く……助けてください……!」
か細い声は虚空の中に消えていった。
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