第16話 聖痕の呪い
そのまま真耶は胸の宝玉に狙いをつける。右手を武器に変え突き刺す。真耶の右手は宝玉に当たった。すると、宝玉にヒビが入り砕け散る。
「終わりだ!」
真耶は宝玉を貫くと、女性の胸まで貫く。そして、何かを掴んだ。
「そこが本体だな!」
そう言って心臓を抜き出す。そして、吹き荒れる炎の中に投げ込み自分も入る。心臓はまるで意志を持ったかのように動き回り炎をまとい始めた。炎は人の形へと変わり真耶と向き合う。
「これで最後だ!」
そう言って体の一部を切り離し剣を作る。そして、水を纏わせ勢いよく振り下ろした。
「グギャアア!」
真耶は炎の人ごと心臓を縦に切り裂く。その余波で周りの炎も切り裂かれた。
「す、すごい・・・!」
炎の中は真耶の剣圧で吹き荒れる。外から見ると、炎は竜巻のように渦を巻いていた。
━━しばらくすると炎は収まりはじめた。その中から薄紫の光を放ちながら消えていく心臓と右腕を余すところなく火傷した真耶の姿があった。
「まーくん!大丈夫!?」
奏は真耶に向かって走り出した。真耶はその場に立ち尽くしている。よく見ると腕だけではなく、体全身も火傷している。
「・・・まーくん・・・?」
「なぁ、奏・・・」
真耶は奏にしか聞こえなくらい小さな声で言った。
「もう、炎の中で戦いたくないよ」
そう言って倒れた。奏はしっかりと真耶を受け止める。真耶は奏の胸の中に顔を埋め気を失った。
「カナデさん!マヤさんは無事ですか!?」
「うん。気を失ってるだけみたい」
「だいぶ無茶しましたね・・・魔力が半部以下になってます」
そう言ってクロバは紫に光る目で真耶を見た。
「なんで分かるの?」
「え?あ、その、実は・・・私、魔力が見えるんです」
クロバは笑顔でそう言った。
「じゃあ、あの時残魔力がわかったのは、その目の力のおかげってこと?」
奏がそう聞くと、クロバは頷いた。だとしたら、あの虫眼鏡みたいなやつは何でもなかったようだ。
「てか!そんなことより、早くマヤさんを運ばないと!」
「そうだね!ギルドに戻ろっか!」
3人は真耶を抱えると急いで街へと戻った。
━━3人がギルドに戻ってくるとギルドの冒険者達は急いで治癒魔術師を呼んだ。治癒魔術師とは、いわゆるパーティのヒーラーのことである。普通はパーティに1人は必ず入れないといけないらしいが真耶達にそんな人はいない。
「なんでヒーラーいないのに無茶するんだよ」
そう言った感じで怒られがら回復をしてもらう。その間、3人は謝ることしか出来なかった。
「それにしても、この男・・・どんな筋肉してるんだ?これだけの筋肉があれば筋力値なんて余裕で200は超えてるだろ」
「え?嘘・・・まーくんの筋力値は20だったよ」
「何!?そんなわけはあるか!そもそも、この俺を片手で持ち上げるなんて、筋力値が100はないと無理だぜ。それに、筋力値は見た目より数十倍も大きい時がほとんどだ。だから、こいつの筋力値は余裕で1000は超えてるはずだ」
男はそんなことを言ってきた。そのせいで、真耶がステータスを隠していることが確信に変わった。そこで、皆は真耶のステータスプレートを見ることにした。もし、真耶が錬金術で変えてるのならば魔法を消した時にわかるはずだから。
「よし、じゃあいくよ」
そう言って奏は真耶のポッケに手を伸ばす。そして、ステータスプレートに手をかけた時突然胸に痛みを感じた。
「痛っ・・・!?いだだだだだ!いだい!やめて!」
その胸の痛みは瞬く間に大きくなった。
「嬢ちゃん!どうした!?」
現場は騒然となる。治癒魔術師がヒールしたが、痛みは消えない。すると、突然胸に紋章が現れた。
「なっ!?聖痕だと!なぜこの子に現れるんだ!?」
全員が不思議に思い慌てる。そこで、ルーナは思い出した。博識スキルが言っていたことを。
「聖痕・・・忘れてた・・・ごめんなさい!もっと早く言っておけばよかったのに・・・!」
その場の全員が苦しむ奏を見て呆然とする。奏は、聖痕の痛みでどんどん衰弱していく。
「奏!」
『うわぁ!ビックリさせるなよ!』
突如、真耶が起きた。その事で更に冒険者達は驚く。真耶は起きるなり今の状況を確認して奏に触れた。
「奏、少し痛いが我慢しろ”物理変化”」
そして、魔法を唱える。それと同時に、ルーナに頭痛がした。そして、博識スキルが強制発動される。
(その場から離れろ!)
若いお兄さんが出てきて、そう叫ぶ。
(何!?強制発動されるなんて、初めて・・・!?)
(説明している暇は無い!今すぐこの場から全員を避難させろ!ギルドに近づけるな!)
若いお兄さんはそう叫ぶ。その様子からただ事では無いことが分かる。
「皆!今すぐここから離れてください!危険です!」
ルーナはそう叫んだ。しかし、皆は動こうとしない。
「お願いします!ここにいると皆危ないんです!」
ルーナは必死に訴えかける。すると、その声で冒険者のリーダー的存在の人が全員の避難を促す。どうやら察してくれたらしい。
「逃げろ!」
「早くここから出てください!」
「ギルドから離れて!危険です!」
冒険者達が街の人にも近寄らせないようにする。
━━一方その頃、中では真耶が奏を見つめ優眼と邪眼、そして神眼を発動した。
(まさか、夢の中であんなこと言われるなんてな・・・しかも、マジでそうなってるし・・・)
「初めて邪眼を使ったよ。効果は・・・精神に干渉出来る・・・か。それ以外にもあるが今は必要ないな・・・」
真耶は1度目を閉じてもう一度魔法を唱えた。その力で奏の胸の聖痕が消えていく。すると、一瞬でその場が光に包まれた。そして、奏の精神に引きずり込まれた。
「何っ!?夢で言われたこととは違うぞ!?」
光が収まると周りが見えてきた。そこは真っ白な世界だった。そして、目の前に人とは思えないほど強烈な殺気を放つ男が立っていた。
「この世の理に当てはまらない者よ。汝に問おう。なぜ、我が目的の邪魔をする?」
「誰だよ?てか、邪魔も何も俺は俺のやりたいようにしているだけだ」
男は真耶を見ると、もう一度同じことを聞いてきた。
「汝はなぜ、我が目的の邪魔をする?」
「・・・」
その問いに真耶は答えない。そして、自分の胸に違和感を覚えた。見ると、謎の紋章がある。
「聖痕か・・・俺には効かない。”物理変化”」
真耶は紋章を消した。
「痩せ我慢はするな。もう汝の魔力は残ってはおるまい。汝のためだ、すぐに終わらせてやろう。”ジャッジメント”」
「クッ、いきなりか!”物理変化”」
雷が真耶に向かって飛んでくる。真耶は手を突き出し雷に触れた。その雷は手に触れると丸まっていく。
「雷球完成〜。返してやるよ!」
雷の球は男に向かって飛んでいく。しかし、途中で消えてしまった。
「我の物は我に傷つけることは出来ない。それが理・・・」
そう言って、殺気を強める。普通の人ならそれだけで死んでしまうだろう。だが、真耶はオタクである。どんな状況になっても即座に対応出来る男である。そして、特殊能力に目覚めても即座に使いこなせる男である。
「ほぅ、これに耐えるか。まぁいい、汝にはもっと強めのものをくれてやろう。”ジャッジメント”」
そう言ってもう1度雷を放ってきた。流石に2回目は通用しない。避けることも容易だ。そう思っていると、雷は思いのほか速く真耶の前まで来た。
「っ!?」
ギリギリのところで避ける。どうやらさっきより速くなっているみたいだ。
「また避けるか・・・」
男は呟き再び雷を放つ。
(クソッ、防戦一方じゃねぇか。このままじゃジリ貧でいつか負ける)
「仕方がない。初めてやるが、試してみるか・・・”物理変化”」
真耶は自分の体の材質を変える。そのため、体が1度光に包まれた。そして、光が収まると中から雷の体の真耶が出てきた。
「”雷状態”」
そう言って出てきた真耶は、雷の化身のような姿だった。
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