第166話 攻略開始
「……」
「どうするんだ?あの感じだと本気で殺すつもりだよ」
「アーサーはどう思う?」
「我か?我は行くべきだと思う。たとえ勝ち目がなくても仲間を見殺しにするべきでは無い」
「だな」
真耶はアーサーの言葉を聞いて不敵な笑みを浮かべた。そして、城の方向を向いて歩き出す。
「じゃあ行くか」
「空から行かないの?」
「いや、俺とアーサーは空飛べねぇよ」
「嘘。浮遊魔法使えるくせに」
「なんで戦う前から魔力を……て、それ」
なんと、ヴィヴィアンが持っていたものは魔法の絨毯だった。
「それ……!?」
「こっそり貰ってきたんだ」
そう言ってめちゃくちゃ嬉しそうに笑う。
「フッ、この悪ガキめ。人のものを盗んだらお仕置だろ」
「何言ってんの?これ真耶のでしょ」
「え?俺の?……それって……」
その時真耶はふと思った。そういえば、なんで俺は忘れていたのだろうかと。魔法の絨毯もだが、この剣のことも。
「いや、だがそうなってくるとおかしい。なんで俺は《《何も無い状態》》で奏と戦おうとしたんだ……?」
もしかしたら、真耶の知らない何かを、忘れている何かを昔のケイオスは知っていた……持っていたのかもしれない。だから、剣を分解し、絨毯をペンドラゴンに送った。
そして、真耶はペンドラゴンに召喚され新しく剣を作り、絨毯を拾った。もしかしたらこの忘れていたことに奏を倒すヒントがあるのかもしれない。
「……」
「真耶、とりあえず考えるのは後にしよう。もしくは、行きながら考えてくれ。今はエルマを助けることが先だ」
「そうだな」
真耶は頷くと絨毯を広げその上に乗った。アーサーも同じように乗る。そして、浮き上がった。モルドレッドとヴィヴィアン、ガウェインは普通に浮あがる。
5人は空に上がると凄まじい速さで城に向かい始めた。
「マスター!マスター!やっと出られましたよ……」
突如下から声がした。見ると、リルがいる。
「お前まで来たのか。危ねぇから中にいろ」
「そうですね……」
そう言ってリルは中に入って行く。
「……あ」
その時、真耶はリルを止めた。そして、リルのスカートをめくる。
「きゃあああああ!マスターの変態!」
「ちょっ!変態!馬鹿!私という者がいながら目の前でそんなことを!」
そう言ってポカポカと殴ってくる。
「痛え痛え。ちょっ、やめっ……」
真耶は殴られるのを我慢しながらリルのスカートの下を覗く。リルは恥ずかしすぎたのか、顔を真っ赤にして気絶している。
「……っ!?これは……!」
真耶は何かを見つけた。そして、リルのパンツを脱がしていく。すると、ちょうどパンツで隠れていた尾てい骨ら辺に魔法陣が描かれていた。
「ん?真耶、それは?」
「……これは……言えないな」
「え?」
「ま、あんまり役に立たない奴さ」
真耶はそう言ってリルを床に下ろす。リルは力なくへたり込むと目をクルクルと回しながら顔から煙を出していた。
「うぅ……恥ずかしいです……。それに、もうお嫁に行けないです」
「気にすんな。どうせ俺と一緒に住むんだ。俺とモルドレッドの惚気話を毎日話してやるよ」
「それはそれで嫌です」
そんなことを言ってそっぽをむく。そんなこんなしていると、真耶達は城に着いた。王城の周りには巨大な結果が張ってあり、到底壊せるような代物じゃない。
「どうする?」
「だいたいこういう時は鍵となる敵を倒せばいいが、奏は1人だ」
「だったら壊すしかないね。我に任せよ」
「ん。任せた。無理だったら私がやる」
アーサーとモルドレッドはやる気なようだ。攻撃ができるように構えている。
「行くぞ。”光明閃線”」
アーサーはそんなモルドレッドを見ながら剣を振るった。その瞬間、アーサーの剣から光る斬撃が放たれた。その斬撃は城を覆う結界に向かって飛んでいく。
「どうだ?」
そう一瞬間斬撃が結界に触れた。そして、とてつもない光を放ちながら切り裂いていく。結界にはどんどんヒビが入っていく。そして、結界は斬撃と一緒に弾け飛んだ。
「おぉ。さすがだな」
「何言ってる。あれは誘い込んでんだよ。真耶もわかってるだろ」
「まぁな」
真耶は結界が壊れたのを見てそんな会話をする。そして、城の門の前に降りた。
「ベランダに降りないの?」
「多分何かしらの呪いがかけられるぞ。見た感じ呪符が貼ってあった」
「じゃあ、下から攻めるしかないか……」
「いや、多分奏のことだから……」
そう言いながら扉を開いた。そこには、アーサー達の予想とは違い何もいない。
「ほら見ろ。何も無いだろ。あいつの事だからそんな細かく考えてねぇよ。あいつは俺と戦いたいだけだからな」
真耶はそう言ってどんどん進んでいく。モルドレッドはそんな真耶を見て少し呆れてしまった。しかし、すぐに気を引き締めて真耶について行く。アーサー達も真耶について行った。
━━それからはまじで何も無かった。特に戦うとかそんなものは無い。ただ階段を昇って部屋に入っていくだけだった。
「本当に何も無いね」
「……」
「簡単」
「……なぁ、アーサー」
「あぁ。分かっている」
「さっきからループしてるな。それも、時間を」
なんと、さっきから何も無いのではなくループしているのだった。真耶はそれの証拠を見せるかのように時計を見せてきた。
「本当だ。時計が……」
そう、その時計はある程度の時間が経つと元に戻るのだ。そして、自分達のいる場所もいつの間にか元に戻っている。
「ちょうど5分か……そしてこの4つ角。恐らくここから5分で行ける場所がちょうどドアだ。そして、タイミングよくループしてるからここに戻ってくるんだ」
「なるほど。凄いね」
モルドレッドはまるで話を聞いていなかったかのようにそう言う。そして、何故かにこにこしている。
「え?何その笑み。怖いんだけど……」
「いや、なんというか、真耶ってかっこいいなって思って」
「今更か?生まれた時からかっこいいだろ」
真耶はそう言ってカッコをつけた。だが、今はそんなことをしている暇は無い。早くこの状況を何とかしなければならない。
真耶はすぐに気を取り直して周りを見渡した。
「……ループか……」
「真耶、いい加減わかったか?ループしているとはいえ俺達からしてみればかなり長い時間が経っている。もうお前のくだらんギャグは飽きたぞ」
突如ガウェインがそんなことを言ってきた。真耶は突然のことすぎて言葉が出なくなる。
「すまんな。こっからは本気だ。恐らく今こうなってるのはオーブのせいだ。だから奏はラウンズとエルマを襲った。今俺のオーブを持ってるのはエルマだからな」
「じゃあ、あと12人の持ってたオーブをこうしてトラップにしてるの?」
「いや、多分誰かに持たせている。その持っているやつを殺してオーブを奪い返さなければこの状況を打破出来ん」
「……と、言うことは……」
「そうだ。恐らく他のオーブも何かしらのことが起きるから、それだけ倒さなければならない。要するに、あと12人程度倒さなければならないということだ」
「えぇぇ!?長すぎるよ!」
真耶の言葉にヴィヴィアンはそう言って涙を流す。
「まぁ、これでやることがはっきりしたんだ。あとは簡単だろ」
アーサーはそう言って剣を構えた。嫌な予感がする。昔からアーサーは考え無しだとは思っていたが、さすがにそんなに酷いことはしないはずだ。
真耶はそう思いながらジリジリとその場を離れていく。そうしていると、時間がループした。そのせいで、一旦全員4つ角に集められる。
その瞬間、真耶は全力でその場から離れた。当然モルドレッド達もなにかに気がついてその場を離れる。
「”トライウォール”」
ヴィヴィアンは結界を張った。これで万全だ。そう思っているとアーサーが何か呪文を唱えた。
「”グランドインパクト・絶”」
その刹那、その場は光に包まれ何も無くなった。
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