第162話 最後の戦いへ
真耶が呼び出してから約5分で真耶の作った城にいた者は皆集まってきた。と言っても、ほとんど連合国に取られてしまったから、ここにいるのは真耶とモルドレッド、ヴィヴィアン、ガウェインくらいだ。
死者も含めると、クロエが居る。あと、ついでに白虎。
『おい!ついでとはなんだ!?ついでとは!』
「悪い悪い」
真耶はそう言ってまぁまぁと言った感じの仕草をする。そして、作戦と今の状況を話始めた。
「……それで、分かったか?今の俺らには人手が足りない。数で押し切られればこっちが負ける。まぁ、全員殺したらいいんだけどね。でも、そういう訳にはいかないでしょ。それに、恐らく奏達が聖教会に乗り込むまで時間が無い。あの感じだと明日だ」
「あのさ、なんでそんなに奏ちゃん達を止めるの?別に奏ちゃん達がアーサーに勝てるとは思わないけど」
「……なんか嫌な予感がするんだよな」
真耶はそう言って下を向いて考え事をし始めた。
「嫌な予感?」
「そうだ。なんだかな、完璧すぎる気がするんだよ。逆にそういうものが無さすぎて怪しい」
「何を言ってるの?」
モルドレッド達は不思議そうに見つめる。真耶は1度目を閉じ考えると、目を開いてモルドレッド達に言った。
「お前ら、奏に気をつけろ。もし奏と戦うようなことになったらすぐに俺に言え。わかったな?これは絶対だ」
「っ!?わ、分かったわ」
モルドレッド達はその異様な雰囲気の真耶を見て少し驚きながらも返事をした。
「ま、多分俺の思い過ごしだろうけどな。お前ら、作戦はわかっただろ?」
その問いかけに全員こくりと頷く。真耶はそれを見て微笑むと振り返り部屋から出ていった。
そして、モルドレッド達もそれぞれの部屋へと向かっていった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……それから一日が経った。次の日の朝6時に真耶は城のベランダへと出て森の向こうを見つめていた。
「真耶、なにみてるの?」
「連合国のある方向だよ。見てみなよ、魔力の波動が見える」
「ほんとね。それだけやる気だってことだよ」
真耶とモルドレッドはそんな会話をする。ちなみに、魔力の波動とは人々が魔法を発動する、もしくは魔法を使うために準備をしている時にその人から溢れ出る魔力の波のことだ。
真耶とモルドレッドはそれを見ながらそんな会話をしていた。
「ねぇ、本気で奏ちゃんの事を疑っているの?」
「なんだ、聞いてたのか?」
「ちょっとね。聞くつもりはなかったんだけど……」
「別にいいよ。事実は事実だから」
真耶はそう言ってどこか遠い目をして空を見た。多分、この戦いが終わりを迎える戦いの始まりなんだ。真耶は直感的にそう思った。少し分かりにくいかもしれない。だが、真耶は本当にそう思った。
そして、同時に真耶は全てを壊す決意を固めた。ここで負ければ確実に世界は破滅するとわかっているからだ。
「多分、俺は奏と戦う時に手加減をしてしまうかもしれない。力が抜けるかもしれない」
「……」
「それでも、俺は負けられない。多分、そのためにこの世界に来たのだから」
「……ふふ」
モルドレッドは突如笑いだした。真耶はそれを見て少しムッとする。
「なぜ笑う?」
「だって、真耶がそんなに考え込んでるなんて珍しいなーって思ってさ。そんなに悩むことなの?」
「お前なぁ……」
真耶は少し呆れたような顔をしてモルドレッドを見つめる。モルドレッドは少し微笑むと真耶の頬をつねりながら言った。
「真耶は真耶が正しいと思うことをすれば良いんだよ。それが間違えたことでもきっと皆は認めてくれるから」
モルドレッドはそう言って真耶の頭を撫でた。
「……初めて頭を撫でられたよ。俺には親はいないからな。この指輪も、あいつらは外してやがったしな」
「ふふ、じゃあ今の真耶は1人なんだね」
「そんな言い方するなよ。辛いじゃないか」
「ごめんごめん。じゃあ、お詫びとして私が真耶の妻になってあげる」
モルドレッドは生意気な顔をしてそんなことを言ってきた。しかし、真耶はそんなモルドレッドを見て不敵な笑みを浮かべる。
「どうしたの?」
「いや、そもそもアヴァロンでは俺とお前は結婚してたろ」
「あれ?そうだっけ?」
「そうだよ。まぁ、俺が居なくなったせいで悲しい思いをさせてしまったみたいだがな」
真耶はそう言って少しだけ暗い顔をする。すると、モルドレッドが少しムッとした表情になった。
その時真耶は思った。これはやってしまったと。そして、その考えは当たっていた。
「真耶!なんで自覚してるの?てか、自覚があるのに私を置いていったの?ねぇ、説明してよ真耶。ねぇ、ねぇ、ねぇ……」
モルドレッドは怒涛の勢いで聞いてくる。どうやら怒らせてしまったらしい。真耶は頭を抱えてしまった。
そして、真耶は立ち上がり逃げようとした。しかし、モルドレッドは逃がしてくれない。まるで殺人鬼のような目を向けてくる。
「……ごめん」
「許さない。私の子供を作ってくれるまで許さない」
「は?」
「それか、キスしてくれるまで許さない」
「はぁ……」
真耶はモルドレッドのわがままを聞いて呆れて何も言えなくなる。そして、1度ため息を着くとモルドレッドの顔に手を触れ唇をモルドレッドの唇にくっつけた。
「……これで許してくれるか?」
「……やだ。ん♡」
結局モルドレッドの方からもキスをしてくる。2人はかなり長い時間イチャイチャし続けた。
「……ふふ、楽しい」
「それは良かった。それじゃあ準備をしないと……っ!?」
その時、聖教会の方向で爆発が起こった。どうやら奏達が戦いを始めたらしい。
「……フフフ……フハハハハハ!どうやら戦いは始まったようだ。俺達も行くぞ」
「ん!」
そう言って真耶は不敵な笑みを浮かべる、ベランダから飛び降りた。
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