第15話 魔物討伐
「この強さでEランクだったなんて・・・マヤさんの強さは異常ですよ」
「異常って・・・そもそもランクを上げるのってどうするんだよ」
そんなことを言うと、その場の全員が絶句する。そして、静かに自分の前に魔物討伐の依頼の紙を出てきた。
「ま、頼むよ。お前しか倒せねぇんだ」
「この魔物は既に10人の冒険者チームが討伐に行ったんです。しかし、彼らは帰ってきませんでした・・・」
突然何かが始まった。皆、同情を買うように泣き真似や声色を変える。そして、上目遣いで頼み込んできた。
「お願いします!もうあなたしかいないんです!報酬はいくらでも払います!」
そう言って手を握ってきた。だが、真耶は紙を見る。そこには報酬1万ゴールドと書かれている。
(これで、3万ゴールド欲しいって言ったらくれるのかな)
「報酬は3万ゴールドが良い。それでも良いならやってやるよ」
「本当ですか!?報酬は3万ゴールドでも、それ以上でも大丈夫です!」
「そうか、なら帰ってきて決めるよ」
「行ってもらえるのですか!?」
「あぁ」
その会話を聞いて、その場の全員が喜び騒ぎ立てる。ギルドの中が騒ぎ声でいっぱいになった。
「あの!1つ気をつけてください!光線は避けてください!」
ギルドの受付の女性はそう言って手を振ってきた。真耶は手を振り返してギルドを出た。
「あれ?なんか忘れているような・・・」
その時ルーナが何かを忘れているような感じがした。というか、確実に何かを忘れている。ルーナ自身もそれだけは理解している。
「どうした?」
「ううん、なんでもないです」
「?」
真耶は不思議に思いながらも足を進めた。奏も、不思議に思いながら真耶について行く。
「ねぇねぇ、マヤさん!武器は買わないのですか?」
そう言って服を引っ張って来た。誰かと思うとクロバだった。
「お前も来たのか・・・お前、服は着ないのか?」
「着れないのですよ!着たらキッツ〜いお仕置きが待ってるんです!」
へぇ〜そうなのか〜・・・
真耶は頭の中でそう思って依頼の場所に向かう。少し歩くと、街の入口まで来た。
「あれ!?武器屋行かないの!?」
「行かなくても大丈夫だよ」
3人は不思議に思いながら真耶について行った。
━━依頼された場所まで30分ほど歩いた。場所は開けており、かなり分かりやすくなっている。
「ここにメデュールがいるのか・・・気をつけろよ」
『はい!』
3人は真耶の掛け声で一気に構える。その数秒後に突然光線が向かってきた。真耶はその光線を避けると向かってきた方を見る。そこには、胸の辺りに黒い宝玉を埋めた女がいた。その女は体中に蛇をまとわりつかせている。
「あれがメデュール・・・女の人じゃない・・・」
「カナデさん。あればメデュール本体ではありません。あの胸の宝玉・・・あれがメデュールです」
「フッ、なるほどな。じゃあ、あの女の人は前に行った冒険者の1人か。寄生型の敵とは厄介だな」
そう言って真耶は地面に手を着く。
「”物理変化”」
そして、地面から土の剣を作り出した。そして、剣の材質を作り替える。
「凄い・・・!土が鉄になってる・・・!」
「お前ら、気を引き締めろよ」
そう言って3人の方を向くと、突然右腕に何かが当たる感覚がした。
「ん?なっ!?」
腕を見ると、右腕が石になっている。
「自分で言っといて、気をつけてないじゃん」
「悪い悪い・・・てかこれ、石化かよ・・・」
メデュールっていうか、メデューサだな。とか思いながら自分の右腕を見る。
(材質が石に変わっている。なら・・・)
「”物理変化”」
「治った!?」
やはり治ったようだ。どうやらメデュールの光線の石化は物理変化で治せるらしい。これが分かったら凄く楽に戦えるぞ!
「奏!魔法でこの剣を燃やしてくれ!」
「え!?わ、分かった!”ファイアー”」
真耶の剣に火が点る。真耶はその剣を構える。メデュールも光線を出そうと蛇をこちらに向ける。蛇はこっちをむくと秒で光線を放ってきた。
「き、来たよ!」
「フッ!」
真耶は笑うと同時に剣を横に振った。すると、剣にまとわりついていた炎が刃となって飛んでいく。炎の刃は光線にぶつかり石化する。その隙に、真耶はメデュールと距離を詰める。
「これで終わりだ!」
剣をかまえ飛び立つ。そして、メデュールの宝玉目掛けて剣を突き出す。
「マヤさん!避けて!」
「え?」
うっかりしていた。たとえ蛇の光線を防いだとしても、蛇自体はまだ動けるということを忘れていた。蛇は真耶に噛みつき光線を放つ。ゼロ距離で放たれた光線は真耶だけでなく、弾かれた光で周りまで石化していく。
「クッ・・・”ぶつり・・・へんか・・・”」
真耶は魔法で石化された所を治していく。石化されたらすぐに治すを無限に繰り返す。
(魔力が・・・急スピードで減っていく・・・)
「”ウインドカッター”!」
突如蛇の首が切り裂かれた。風の刃だ。咄嗟に来た方向を見る。どうやら奏が唱えたらしい。
「”ファイアーアロー”」
「”マリントルネード”」
続けて魔法が飛んできた。ルーナ、クロバも魔法を唱えたようだ。その魔法で、一瞬蛇の縛りが緩む。その隙に真耶は抜け出した。
「助かった・・・」
「まーくん大丈夫?」
「傷は特にないが、魔力がかなり減ってしまったな。どうしようか」
「もぅ、自分で言っておいて、自分が気をつけてないじゃん」
「・・・」
真耶は急に黙ってしまった。なにか言おうと思ったが、何も言いたくなくなった。だが、そんななかでも、一つだけ言いたいことがある。
「あれ?急に黙っちゃってどうしたの?」
「いや、奏・・・お前、人の話を聞け〜!」
急に真耶が怒鳴ったせいで奏は心臓がとび出そうなほどドキッとする。真耶はそんな奏を見て更に続けた。
「いちいち過剰反応するなよ!そもそも、なぜこうなると分かっておいてその行動をとるんだよ!」
「うぅ・・・ごめんなさい・・・」
奏は泣き出してしまった。しかし、真耶はそんなことでは許さない!泣いて許されると思ったら大間違いだ!と、言おうとすると光線が飛んでくる。
「チッ!こっちを先にしねぇとな」
(だが、どうする?真正面に行けば、光線を食らう。たとえ、光線をどうにかしても蛇をどうにかしないといけない)
真耶は悩んで下を向いた。
「あ!そうすればいいのか・・・」
そこで真耶は思いついた。この方法なら、絶対に近寄ることが出来る!と・・・
「皆、魔法で注意を引き付けてくれ。俺はアイツに近づく」
「え?でも、それじゃやられちゃうよ」
「こうするんだよ。”物理変化”」
真耶はそう言って壁を作り出した。そして、その前に穴を作る。
「なるほど、モグラ作戦ですか。いいと思います」
「そういうことだ。バレないように注意を引き付けてくれ」
そう言って穴の中に入った。奏達は強く頷くと詠唱を始める。
「よし!いきます!”デルージア”」
「”ブラストフレイム”」
「まーくん!いくよ!”ゴットフェニックス”」
3人はそれぞれ大規模な魔法を唱える。クロバは大洪水を起こし、ルーナはプラズマ化した光線を放つ。そして、奏は・・・
「熱っ!どんな威力の魔法使ってんだよ!」
奏は辺りを全て焼け野原にする威力の炎魔法を唱えた。その火力が高すぎたせいか、穴の中は火の中にいるくらい高温になっている。
「クソッ!これはやばい・・・”物理変化”」
真耶は体を水に変え先へ進む。しかし、ちょっとマシになっただけでやはり熱い。
なんとか進んで、メデュールの真下まで来た。真耶は魔法で小さな穴を開けそこに手を入れる。今の体は水なので、小さな穴でも入る。
「俺の勝ちだ!」
真耶はそう言ってメデュールの前に飛び出した。
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