第148話 対極爪
「対極爪……?」
彩花と癒優は驚いた顔で見つめていた。その見つめる先には真耶の腕がある。その腕は、右が白く、左が黒く光り輝いていた。
そして、真耶の右目には太極図が描かれている。真耶はその目で目の前の人物を見た。
それは人の形をした何かだ。何故そう言えるかと言うと、見た感じ気が普通の人と違う。それに、魔力量が桁違いだ。
昨日のうちに見ておいたのだが、どうやら癒優と彩花のレベルは今330らしい。だから、魔力量はかなり多く、俗に言う勇者パーティと言っても遜色ないくらいだ。
だが、目の前のこいつはどうだ?魔力量は普通の人とは桁違いの量を持ち感じたこともないような気を感じる。それに、真耶の攻撃が通じない。
確かに本気を出していなかったとは言っても、さすがにこれはおかしい。確実になにかある。真耶は警戒を怠らず、その目でその何かを見つめた。
「……」
「え!?」
突如彩花が声を上げた。気がつけば、その何かが武器を持っている。見たことも無い武器だ。剣なのだが、異物でもアーティファクトでもない。
「神器か……死ね。”白虎冥爪・白雷の鳴動”」
真耶はそう言って右腕を振るった。その瞬間、無数の白い雷が何かを襲う。しかし、その何かは剣で全て防いだ。
「まぁ、予想済みだ。”神閃龍覇・地変動”」
地面に向かって強烈な一撃を決める。すると、地面が大きく揺れ光り始めた。その光は何かの足元に行き、その何かの足元の地面が突如盛り上がり、鋭い巨大なトゲとなった。
「終わりだ。”対極混合・十字拳”」
そう唱え、右手で空気中を十字に切り裂いた。そして、左手でその部分を殴りつける。すると、その十字に切り裂いた場所に魔力が無くなりそこに入っていこうとする魔力を乗せた拳が巨大な魔力の塊となりその何かを殴り付けた。
当然の事だが、こんなに巨大でかつ圧縮された魔力の塊がぶつかりでもすれば、いかに強い敵であろうともタダでは済まない。それは、その何かも同じ。
その何かはとんでもない一撃をくらい、吹き飛んで行ってしまった。しかし、幸いなことなのか不幸なことなのか、壁が黒曜石で出来ているため壁にぶつかり止まる。
そして、そのまま地面に落ち倒れ込んだ。真耶はそれを見てその何かに近づく。どうやら今回は完全に力尽きているらしい。だが、これまでの経験上、もしかしたら生きているかもしれない。
それに、もし生きていたのならその時点で終わりだ。なんせ、今使った技は俺の魔力だけじゃなくクロエと白虎の魔力も使用する。だから、俺の魔力があるからと言って容易に発動できるものじゃないんだ。
そして、今の攻撃でクロエの魔力が完全に無くなってしまった。白虎は多少あるらしいが、冥爪を作り出すほど残ってはいない。
真耶は背中のアルテマヴァーグを鞘から抜き、魔力を込めて近づいた。その目には太極図が浮かんでいる。
「……」
「……っ!?」
真耶が近づくと、その何かが起き上がり攻撃を仕掛けてきた。やはり、何かしらのプログラムがされてあるようだ。こうなると、完全に破壊するまでうごき続けるな。
だったら、完全に破壊してしまえばいいだけの話だ。修復することなど一切出来ないほどに壊してしまえば、それで良い。
だが、さっきの攻撃で死ななかったんだ。これはかなりピンチだな。
「真耶くん!援護だよ!」
突如彩花がそう叫んで魔法を放ってきた。それは、なんでもないただの火の鳥。奏のゴッドフェニックスからしてみれば、小さく非力だ。だが、真耶はそれを見てあることを思いついた。
だから、すぐに動き出す。アルテマヴァーグをさやに収め、アムールリーベを抜いた。そして、火の鳥に向かって言う。
「”もっと大きくなれ。もっと強い炎となり燃え盛れ”」
真耶がそう言うと、火の鳥は突如火力をあげた。そして、辺りの空気さえも焼き尽くしていく。真耶はその火の鳥をアムールリーベで斬り裂いた。
すると、火の鳥はアムールリーベの中に吸収されていく。そして、アムールリーベは赤く燃え盛る炎を纏った剣となった。
「おぉ!凄い!」
「感動している暇は無い。手を休めず魔法を放て」
「わ、わかったわ!」
彩花は魔法を連続して放た続けた。真耶はそれを見てすぐにその何かとの距離を詰める。
そして、一瞬で4回ほど切りつけた。どうやら4回切る事に炎が消えるらしい。
真耶は炎が消える度に彩花の放つ炎を纏っていく。そして、ついにその何かは体の修復が間に合わず、バラバラになってしまった。
「……フフフ……俺の勝ちだ」
真耶は1人、不敵な笑みを浮かべた。
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