第147話 真の悪者
「ふわぁっ!?」
癒優と彩花は変な声を上げながら飛び起きた。真耶はその様子を見て少し笑う。そして、さらに胸を揉んだ。
「な、な、な、何が起こったの!?」
2人は頭を混乱させパニクっている。そして、真耶は手を離し腰に手を当て言った。
「お前ら、寝すぎだ。早く行くぞ」
「ふぇっ!?」
2人は混乱しているようだ。そのためかどうかは分からないが、服が脱げかけている。
いつもならこういうシーンで少しは嬉しいのだが、この世界ではまずい。服が脱げるということは、この2人は死ぬ可能性があるということだ。
まずいな。早く着せなくては……そんなことを思いながら真耶は2人に近寄った。そして、サッと服を着せる。
「だらしねぇな。もっと気を引き締めろよ」
そう言って呆れた表情をする。だが、ここで一つだけ忘れないで欲しいものがある。このことが起こった現況は真耶なのである。だから、彩花と癒優が怒られることはないのだ。
しかし、真耶は全て2人が悪いかのように言う。そのせいで2人は自分達悪いと錯覚してしまう。そして、終いには裸で土下座をするとまで言い出した。
「いや、脱いだら終わりなんだよ。まぁ、上着だけ着てれば良いからこれから俺が良いって言うまで裸で上着だけ着といてね。約束破ったら5年間くらい座れなくなるほど力いっぱいおしりペンペンするから」
真耶は勝ち誇った顔でそう言った。完全にとばっちりだ。悪いのは全て真耶なのに、まるで自分は何も悪くないと言わんばかりに言う。
彩花と癒優は、一体なんのことか分からないまま服を脱ぎその場で裸になった。
「よし、じゃあ行くか……」
「マヤ、見つけたわ」
「なんだ?」
「神殿があったわ」
突如クロエが慌てて戻ってきた。そして、指を指し神殿があるという。
「そうか。助かったよ」
真耶は少し笑って神殿があると言われた方向に向けて足を進めた。2人はその後を追って歩き出した。
それから少し歩くと神殿を見つけた。その神殿は前に見つけたものと同じ形をしている。そして、まるで誰も通さないと言ったように結界が張られていた。
真耶はその結界に触れてみた。バチッとなり手が焼ける。電流が流れるタイプの結界らしい。
「電流か……さて、どうするかな」
「ゴム手袋とか?」
「ゴム手袋だと手だけだろ。それに、多分ゴムも焼き切れる。もっと何か、電流に強いもの……っ!?」
突如背中に殺気を感じた。それは、これまで感じてきたものと同じだ。そしてだいたいこの殺気を感じると4秒後くらいに魔物が現れる。
「きゃあっ!?」
「いけない!”ファイヤーストーム”」
おぉ、ついに彩花が反撃できるようになったか。前までは驚いて何も出来なかったのにな。だが、まだまだだ。
「え!?嘘!?」
魔物は全く傷ついていない。その事に彩花は驚き言葉を失う。魔物はピュルルルルルルと鳴き声をあげると彩花に向かって攻撃を仕掛けた。
「しまっ……!」
「まだまだだな」
さすがにここまで来れば介入しないわけにもいかない。1人で倒させたい気持ちもあるが、今の彩花には荷が重いだろう。
「てか、何気に初めて聞いたな。あいつの鳴き声」
そんなことを言いながら魔物の胸を腕で貫いた。魔物から青紫の鮮やかだが気持ちの悪い色をした血が吹き出る。そして、完全に力尽きてしまった。
「……討伐完了。てか、こいつ使えばよくね」
真耶はなにか思いついたかのように魔物の体の部位を採取し出す。やはり、こういうのはゲームと同じで敵を倒したらその敵からドロップアイテムを得なければならない。
真耶はその魔物から得た皮を魔法で服へと変えた。形はレインコートのような形だ。
「これを着れば入れるぞ」
そうやって言うが、誰も着ようとしない。皆入りたくないのだろうか。だが、ここで止まられると余計大変だ。なんせ、こいつらが襲われた時俺はこの中から一瞬でここまでこなくてはならなくなる。まぁ、転移魔法を使えば一瞬のだがそれでも魔力は温存したい。それにもしこの中が転移魔法を打ち消す何かしらの魔法がかけられていれば、俺は転移魔法で帰って来れなくなる。
「お前らをこ子に残す方が危ないから来い」
「でも、私達ならもう戦えるよ」
「だが勝てない。たとえ戦えたとしても、勝てなければ意味が無い。それに、相手と自分の実力が同じなら魔力量で勝負は決まる。そして、お前らの魔力量は魔物より少ない。だから、お前らをここに残すことは出来ない」
真耶はそう言って2人の手を掴んだ。
「引きずってでも連れていくからな」
そう言って真耶は手を引っ張った。彩花と癒優は転けて強く尻もちをつく。さらに、真耶が引きずっているせいでお尻が擦れる。
「痛い痛い!」
「止めて!お尻が痛いよぉ!」
2人は泣きながら言ってくるが、止まったら絶対に逃げるから止まれない。
「わかったから!ついて行くからぁ!」
「私もついて行くから止めてぇ!」
お、ついに行くと言ったな。
「本当にか?」
真耶はピタッと止まり2人に聞く。2人は泣きながらウンウンと頷く。
真耶はそれを見て手を離した。すると、2人は泣きながらお尻をさする。そして、風魔法で冷たい風を送り始めた。
真耶はそんな二人を見ながらこの神殿の中にある気を感知した。どうやらこの神殿は一直線で、その奥に何かあるらしい。
真耶は2人が立ち上がり準備が出来るのを確認すると歩き始めた。
「……なぁ白虎、今のお前は白虎冥爪が使えるのか?」
「あぁ、どこでも使えるからな」
「じゃあ、クロエは白虎と同じことができるのか?」
「えぇ、だってマヤはいまゴッドドラゴンアイを持ってるでしょ。それを使えば出来るわよ」
「よし」
真耶はそれを聞いて不敵な笑みをうかべた。
そして、ついに道をぬけた。抜けた先には広い部屋があり、人が1人いる。当然真耶はいきなり攻撃を仕掛けた。頭を狙って蹴りをぶち込もうとする。
しかし、途中で避けられた。その後もいくつか連撃を決めたが、全て避けられてしまった。
「今度は少し楽しめそうだな。クロエ、白虎行くぜ」
「わかったわ!」
「任せろ」
「私達は援護するわ!」
「あぁ!頼む!”白虎冥爪”」
真耶がそう言うと、白虎が右腕の中へ入ってきた。そして、すぐに真耶はゴッドドラゴンアイを発動する。
「二重使用なんてかっこいいわね」
「からかうなよ。”神閃龍覇”」
そして、同じようにクロエも真耶の左腕の中に吸い込まれていく。
「さすがにかっこよすぎだろ?」
そう言った真耶の両腕には、派手でかつ殺傷力が高そうな腕と爪が着いていた。
「パクリみたいな技だが、まぁいい。名ずけて、”対極爪”……だな」
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