第14話 驚きの真実
宿に着くと、何故か前に来た時と雰囲気が変わっていた。
外見が変わっていると言うより、中から感じるオーラが変わっている。
「なぁ、俺を案内した部屋はどこだ?」
「あそこです」
そう言って指を刺したのは、ちょうど今いる場所から見えるところだった。
「丁度いい。お前はそこで待ってろ。”物理変化”」
真耶は地面に手を着くと地面をエレベーターのように上げ2人のいる部屋の高さまで来た。
「”物理変化”」
真耶は壁に穴を開けた。すると、そこには驚きの光景が待っていた。なんと、2人が捕まって拷問されていたのだ。さっき、ギルドで見たあの道具を使われている。2人は泣きながらこっちを見てきた。
「お前ら・・・何してるんだ?死にたいのか?」
殺意を込めてそう言った。そのせいか、その場の空気がピリつく。
「へっ、一足遅かったな。もうこいつらは俺らのおもちゃだ・・・」
「黙れ!その汚い口を閉じろ!お前らはもう死ぬんだよ!俺の大切な人に手を出しやがって!”物理変化”!」
「なっ!?グァ!」
真耶は人が変わったかのようにキレた。そして、魔法を唱える。床は鋭いトゲとなって男達を襲った。そして、男達の腹を貫く。腹からは血が吹き出しすぐに絶命した。
「・・・っ!?」
しかし、男達はまだ死んでいなかった。体は煙のようにゆらぎ、消えていく。
「チッ・・・幻惑系の魔法か」
真耶はその場に立ち止まる。いくら周りを見渡しても、何も見えない。否、1つだけ見えるものがある。それは、煙だ。しかし、それは何も見えてないのと同じ。真耶は何もすることが出来なかった。
「っ!?」
突如、腹の部分に痛みを感じた。それは、瞬く間に強い痛みとなり更には、熱いという感情まで湧き出てきた。
「残念だったな。これで終わりだ」
そういう声が聞こえた。その声の方を見ると、男が武器を持ち真耶の腹に指しているのが見えた。
「ま・・・さ・・・か・・・!?」
「へっ!雑魚はお前だったな!」
そう言って武器を抜き、更に攻撃しようと武器を振り上げた。咄嗟に手首を掴む。すると、男の右腕は食いちぎられたかのように切断された。
「あぁぁぁぁ!やってくれたな!だが、まぁいい。この女共は貰っていく!」
男達はそう言い残して消えてしまった。
「クソッ!やられたな」
真耶は落ち着きを取り戻すと、入ってきた壁から外に出る。外には、何が起こっているのか分からないクロバがいた。
「待たせちまって悪ぃな、今から2人を・・・」
「ごめんなさい!私のせいなんです!」
・・・は?
クロバは急にそんなことを言い出した。一瞬わけが分からなかったし、いきなり敵になったかとも思ったが目を見て違うと分かった。
「あ〜、なるほどね・・・」
真耶は小さく呟くと、クロバの前に立つ。
「え?フガッ!」
真耶は、部屋に落ちていた拷問の道具を1つ取り出した。それは二股のフックで、真耶はなんの躊躇もなくクロバの鼻に引っ掛けた。
「痛い!いたたたたた!いだいよ!やめてよ!」
クロバは泣き始めた。しかし、真耶はやめない。さらに強く上に引っ張る。
「ひぐぅ!やめて!いだいよ!」
クロバは大粒の涙を零す。そして、鼻を赤く染めていく。その様子を見ながら真耶は言った。
「そんなに自分を追い込むなよ。たとえ自分に非があるとしても、人のせいにしろ。じゃないと世の中生きていけないよ」
その言葉に胸が締め付けられるような感じがした。そして、こぼれ落ちる涙を拭って真耶を見つめる。
「そして、これはその罰だ。お前が自分のせいだと言うならそれの罰、そして、そのことを言った罰だ。次からは自分で自分を追い込んだりするなよ」
そう言って真耶は微笑んだ。その笑顔を見ると、さらに胸が締め付けられるような気になる。鼻の痛みなんかすぐに忘れてしまいそうなほど胸がドキドキする。
「はい、これで終わり」
そう言ってフックを外す。
「あの、これからどうするのですか?」
「えっとねー、この街を滅ぼす」
「え!?そんな!やめてください!お願いします!」
クロバは慌てて言ってきた。
「冗談だよ。まずはギルドにでも行くかな」
そう言って、ギルドに向けて足を進め始めた。
━━少しして、ギルドに着いた。その道中、前と雰囲気が違うような店や人がいくつかあったが、気に止めることなくここまで来た。
「・・・」
そして、扉を開ける。やはり、前と変わってないようだ。真耶は、歩いて受付の元まで行く。
「あら、お帰りなさいませ。気が変わりましたか?」
受付の女性はそんなことを言って笑う。真耶はそんな女性の胸ぐらを掴んで言った。
「いい加減にしろよ。俺の仲間に手を出しやがって。俺はこの街を滅ぼすことも簡単なんだよ。早く2人を返せ」
「あ〜らぁ〜、怖いこと言いますね。なんのことかさっぱり分かりませ〜ん」
「しらばっくれるなよ。お前んとこの・・・」
その時、後ろからジャキッという音がなった。振り返ってみると、冒険者が全員武器を構えている。
「もうあの女達は俺らのものだ」
「散々遊んで返してやるよ」
「そういうことだ。お前は死んでくれ」
どうやらこいつらは俺の仲間をおもちゃにしたいらしい。選択肢は2つだ。逃げるか、皆殺しか・・・
「当然・・・皆殺しだ!”物理変化”」
再び床は鋭いトゲとなって男達を襲った。そして、そのトゲは冒険者達の目の前まで来た。
「待て!」
そこで、急に静止された。真耶は魔法を止めると、声のした方を見る。すると、男が出てきた。
「合格だ。俺は、ビュート。悪かったな、ちょっとした試させてもらったよ」
そう言って出てきたのは、真耶はが右肩を貫いた男だった。その右肩は既に回復している。
「試す?」
「あぁ、そうだ。お前が冒険者になっても大丈夫かどうかを試したんだ。そしたらお前、なんの躊躇もなく攻撃してくるから焦ったぜ」
そんなことを言って方に手を置いてくる。
コイツッ!俺の奏とルーナに手を出したくせに!と、心の中で思っているとそれが顔に出たのか慌てて2人を呼ぶ。すると、後ろから鼻とお尻を真っ赤に染めた2人が出てきた。
「いや、だいぶやってんじゃん・・・やっぱりお前ら殺してやるよ」
「ま、待ってぇ!わ、私達もグルなの!だから痛い事しないでぇ!」
「は!?」
真耶の低い声の反応にその場の一同がビクッと震える。真耶はそれを見てため息を着く。
「じゃあ、クロバはグルなのか?」
「ううん〜違うよ〜」
いや、お前はグルの方がいいだろ!とか思いながら額に青筋を浮かべる。というか、ちょっと、そう、ちょっとだ。ちょっと怒ってしまったので血管が浮かび上がってしまった。
「ちょっと・・・」
「あ?なんだよ?」
「なんだよじゃないよ!怖いよ!血管が浮かび上がってるよ!」
おっと、いかんいかん。
真耶は額を少し押えて深呼吸をする。そして、奏とルーナを呼ぶ。2人はニコニコ笑顔で近寄ってきた。
「はぁ・・・結局俺達って冒険者になれるの?」
「いや、お前だけはもう1つ試練を与える」
「は!?なんでだよ!」
「お前のせいで、肩が動かなくなるところだったんだぞ。俺の私欲だ」
完全に逆恨みじゃねぇか!こっちは殺されかけたんだぞ!
頭の中で負の感情が嵐のよう吹き荒れる。
「ころ・・・何をしたらいい?」
「ん?あぁ、お前には魔物を1体狩ってきてほしい」
「だま・・・良いけど」
真耶は負の感情を抑えながら言われた魔物の詳細情報を見る。それは、メデュールと言われる魔物だった。
「いや、この魔物危険度Aランクなんだけど」
「何言ってんだよ。お前、Sランク級冒険者だろ」
そうなのか・・・初めて知ったんだけど。てか、俺らにもランクがあったのか・・・
そう思いながら自分のステータスプレートを目にする。そこに書かれていたのはSランクではなく、Eランクだった。
「いや、Eランクって書かれてんぞ」
「え?おいおい、嘘なんてつかなくていいんだぞ」
「嘘なんか着くかよ」
そう言って真耶はステータスプレートを見せつける。そこには、Eランクと書かれている。ちなみにだが、ここの部分は何も変えていないので本当にEランクだ。
「嘘・・・!?」
その場の全員が目を丸くした。
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