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モブオタクの異世界戦記  作者: 五三竜
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第143話 地獄の1日目

 ━━一方その頃、奏達は……


「君は確か……マヤと一緒にいた娘か。マヤはどうした?」


「奏よ。まーくんなら1人で他の部屋に行っちゃった」


「部屋?」


 希望は奏の話を聞いて少し悩む素振りを見せた。そして、少し深刻な顔つきをして言ってきた。


「それはまずいな。おそらく彼もあそこに行かされたか……」


「あそこ?行かされた?どういうことだ?どこに行かされたと言うんだ?」


 シュテルはすぐに希望に聞く。すると希望は少しだけ怒りを混じえながらシュテル達に言った。


「彩花と癒優も同じところに送られた……!」


「何!?」


「君達も同じだろ。透明で見えない扉に入らされた。そうだろ!」


 希望はそう言って怒鳴りあげる。全く同じだ。真耶の時と同じ状況だ。


「でもなんで連れていかれたと分かるんだ?」


「きっと君達もすぐに伝えられるさ。あの女からな」


 希望がそう言うと、突如部屋に誰か入ってきた。


 エルマだ。エルマは部屋に入るなりすぐに奏達の前へと行き言った。


「真耶様はある場所へ行きました。それでは」


「ちょっと待って!まーくんはどこに連れていかれたの!?」


「あなたに教える義理はありません」


 エルマはそう言って何も教えず帰ろうとする。しかし、それを奏と玲奈が止めた。2人は魔法を使って何とか止める。


 しかし、エルマは全く止まる気配を見せない。それどころか何故か余裕の表情を見せてくる。


 そして、エルマはついに本気を出した。左目を大きく見開き手を突き出してきた。


 ボンッ!


 という音と共に奏と玲奈が吹き飛ばされた。シュテルと希望はそれを見て即座に剣を抜きエルマに突きつける。


「”希望状態ホープモード”」


「”聖剣せいけん”」


 シュテルと希望は一瞬でエルマに対し攻撃をする。しかし、そのどれもが当たらない。全て避けられてしまった。


 エルマは全ての攻撃を避けると即座に領域のようなものを展開する。すると、地面に魔法陣が現れた。それは、奏達の足元にできると一瞬で奏達を縛り上げてしまった。しかも、シュテルと希望以外の全員を亀甲縛りで。


『ふぐぅっ!』


「き、キツイです!」


「紐が……くい込んで……痛い……れす……!」


「や、やらぁ……!恥ずかしいです……!」


 みんなは口々にそう言ってもがき苦しむ。


「では皆様、そこで大人しくしていてください。もし、暴れようものならその縛りはさらにきつくなっていきますので」


 エルマはそう言って部屋から出ていった。


「待って!」


 奏は全力で止めようとする。しかし、エルマは出ていってしまう。奏は途中で転けて床に強く顔をうちつけてしまった。


 そして、どうやらそれが暴れたと判定されたらしいで紐の縛りがどんどん強くなっていく。


「ふぐぅっ!ひぎぃ!や、やらぁ!やめてぇ!」


 紐がどんどんくい込んでいく。それが、痛いのに気持ちいい。けど痛い。奏は不思議な感覚になりながらもがき苦しんだ。


「……クソッ!予言が当たってしまった……!」


 シュテルはそう言ってその場に座り込んだ。


 ━━一方その頃真耶は……


「……」


 1人で黙々と歩いていた。あれから数時間歩き続けたが何も無い。出口など見当たらない。それどころか入口すらない。


 それに、これまで色々試してみたが、どうやらここでは魔法はあまり使えないらしい。せいぜい出来て、何か物を作るくらいだ。


「クッ……、早く帰らなければならないってのに……」


 真耶は愚痴を言いながら歩き続ける。奥に奥に、どんどん進んでいく。


「誰かいねぇのかよ。いや、いたとしても死んでるか……」


「ねぇ」


「っ!?」


 突然後ろから声がした。振り返ると後ろに人がいる。


 なぜだ?何故ここに人がいるんだ?どうやって入ってきた?それとも出入りが自由になるような出入口がどこかにあるのだろうか?


 頭の中で色々な意見や考えが浮かんでいっぱいになる。そのせいで全然冷静な判断が出来ない。


 真耶はその人を見ると、慌ててその場を飛び退こうとした。しかし、その人の焼けただれた右腕と凍りついた左腕を見て止まってしまった。


「何者だ?」


「ま、真耶……くん……だよね……?私……だよ。助けて……」


「……”物理変化ぶつりへんか”」


 真耶は魔法を使ってその2人の人物の傷を全て治す。すると、その人物は驚きの人物だった。


 なんと、彩花と癒優だったのだ。2人は泣きながら真耶に抱きついてくる。


「うわぁぁぁん!真耶くん!怖かったよぉ!」


「うわぁぁぁん!もぅだめかと思ったよぉ!」


「待て待て、なんでお前らがここにいる?」


「多分真耶くんと同じくだよ」


 彩花は顔を上げ涙を真耶の服に裾で拭いながらそう言ってきた。


 ということは、こいつら2人もエルマに嵌められたようだ。


「お前らもか……、お前らはなんで子この状況に耐えられるんだ?」


「一応魔法は使ってますからね。魔力回復力の方が多いので魔力が枯渇することは無いと思いますが」


 癒優はそう言ってにっこり笑顔を作る。だが、そんな癒優の魔力は急激に減っていっている。持ってあと2時間ってところだな。


「……”物理変化ぶつりへんか”」


 真耶は体を自分の上着を脱いでそれを複製した。


「どうしたの?」


「これを着てろ。対策はしてある」


「え?でも、それじゃあ真耶くんが……」


「いいから着てろ。お前らの魔力はとんでもない速さで減っていっている。このままでは死ぬぞ」


 真耶はそう言って無理やり上着を渡した。癒優と彩花はその上着を少し申し訳なさそうに着た。


 そして、自分に着けている強化魔法を解除する。


「……あ、ほんとだ。すごい!」


「全然痛くないです」


「それは良かったな」


 どうやら付与魔法は成功したらしい。ちなみに、魔法が使えない真耶がどうやって付与魔法を使ったかだが、それは簡単な話。魔力の波長を合わせただけだ。基本的に魔力は全て波長で決まる。魔力の波長を合わせさえすればどんな魔法も使える。人々は皆それを感覚でやっているのだが、真耶は強制的に変化させているのだ。


 だが、強制的に変化させている分魔力の消費量は多い。それだけエネルギーを使っているからな。


「さて、早くここから出ないとだな」


 真耶はそう言って左目を黄色く光らせた。


 ……真耶の寿命が無くなるまで、あと7000年……

読んでいただきありがとうございます。

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