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モブオタクの異世界戦記  作者: 五三竜
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第142話 天国からの地獄

 真耶は扉を開き中へと入った。何も無いから入れるのか分からなかったが、なんと入ることが出来た。


 扉をぬけた先には少しくらい部屋がある。その部屋には壁に青白い光を放つ炎が揺らめいでいた。そのため、部屋は少し青白い。


 真耶はその部屋に入り1度全体を見渡すと、奥に座っている何者かに気がついた。その何者かは男なのか女なの暗くて判別がつかない。


 だが、いくつか言えることがある。それは、その何者かは面を被っていて表情が分からないということだ。そして、その何者かは姿形が見えず表情も読み取れないにも関わらず、とんでもないほど強大なオーラを出していると言うことだ。


「……」


「気楽にせぇ。わしはお主を殺すつもりは無い。それに、お主を殺せるとも思えん」


「どういうことだ?」


「自分では気づいてないのかもしれんが、お主の体には強大な力が眠っている。まだその力は解放していないが……何かしらのきっかけで目覚めるやもしれん」


「へぇ、そうかい。それは楽しみだ」


 真耶はそう言ってその人物の前に座った。声からして男だ。そして、かなり歳を重ねている。7、80歳くらいだろうか。


「お主、目を見せておくれ」


 そう言って指を指してきているのがわかった。多分時眼クロニクルアイのことだろう。髪の毛で隠していたから見せて欲しいということだ。


「わかった。これでどうだ?」


 真耶は自分の右目にかかる髪の毛を左手でかき分けヘアピンで止めた。


「……やはりな。お主、月城真耶とか言ったな。月城よ、一つだけ教えておこう。時を吸収しながら放出することは《《通常》》は出来ない。それをしてしまうと時の軸が狂ってしまう。今のお主はそうなっておるのじゃ」


「治す方法は無いのか?」


「あるぞ。わしら時の里に住むものは、代々時の軸を操ることが出来る。もちろん治すこともな。お主の軸を元に戻す」


 そう言って突然右手を突き出してきた。そして、指に青白い炎を宿していく。その指にあった炎は、5つそろうと真耶に向かって飛んできた。


「なんだこれ?」


「これでよかろう。ついでにお主の力を強めておいた。さぁ、その腕を治してみろ」


 真耶は男の言葉を聞いて少し目を細めた。先程の魔法、あれからは全く魔力を感じなかった。それに、突然自分の魔力が増えた気がした。


(右目の魔力が多すぎる気がする……一体何をした?それに、この感覚……おそらく寿命が2000年ほど増えた。今こいつは自分の寿命を俺に渡したのか?)


 不思議なことが多すぎる。なぜこの男は何も疑いもせず俺に力を渡した?それに、俺の目も治した。意味がわからない。


「”物理変化ぶつりへんか”」


 真耶は右目の力を解除して魔法を使った。すると、右腕が修復される。


「っ!?治ったか……」


「フォッ、フォッ、フォッ、お主の腕が治ったか……では、代価を支払ってもらおうぞ」


「何?代価だと?ふざけるな。俺はお前に目の力を治して欲しいとお願いした記憶は無い。お前が勝手にしたことだろ」


「それでも、代価は支払ってもらう」


「黙れよ。それ以上喋るとお前は死ぬぞ」


 真耶はその場を埋め尽くすほどの殺気を放ちながらそう言った。すると、里長はまるでその殺気を感じてないかのように微笑んで手を付き出てきた。


「お主に試練じゃ。あの小娘達を救いたかったら1週間以内に戻ってくることじゃな」


 里長は訳の分からないことを言って手のひらから謎の青い光を放つ球体を放ってきた。それは、ゆっくり真耶に向かって飛んで来ると真耶の目の前で止まる。


 何か嫌な予感がする。真耶はすぐに後ろに下がって扉に入ろうとした。しかし、入ってきた扉がない。それどころか周りの襖も塞がっている。


「月城真耶様、お逃げになさらず。中に入れば時間はこことは違います。一日が1000年、1000年が一日、出ることはおろか、一日たりとも生きることは叶いません。そんな環境で過ごすことが試練なのです」


 エルマはそう言って背中に手を当てた。真耶は嫌な予感が再び襲ってきた。そして、魔法で足を固定する。


「そのようなことをしても無駄です。諦めてください」


「何?っ!?やめろ……!」


 真耶は突然足場を崩された。そして、エルマに背中を押される。そして、真耶は里長が作り出した青い球体に触れた。


 その青い球体はとんでもない吸引力を持っている。よく見ると、中は渦を巻いている。真耶はその吸引力に抗おうと足に力を込めたがそれも虚しくその中へと吸い込まれて行ってしまった。


 突然目の前が真っ白になる。そして、すぐに気がついた。自分が落下していることに。


 どうやら足場が左右逆転していたようだ。真耶は体制を建て直しながら落下を続ける。


「……クソが……」


 真耶の見つめる先には、地獄があった。そこは、熱気を帯びた蒸気がそこら中にある。だが、それだけ熱いのに凍っている場所もある。


 崖から落ちるとそこはなく、赤く光っている。辺りにはマグマが流れており、触れればすぐに手が焼け落ちるだろう。


 真耶は落下しながらその様子を観察していた。そして、地面は近づいていき、真耶は地獄に着地した。


 ジュウゥゥゥゥ……パキパキパキ……


 着地した途端右手が焼けただれ、左手が凍りついていく。これがこの世界の常識。


「……クソッ、早く帰らなくてはならないな」


 真耶はそう言って神眼と優眼を発動した。そして、神眼で常に体の回復を始めた。


 魔力がどんどん減っていく。だが、それ以上に回復しているから枯渇の心配はなさそうだ。


「さて、時間は沢山ある。少しずつ探していくか」


 そう言って真耶は歩き始めた。そして、真耶の長い地獄での生活が始まった。

読んでいただきありがとうございます。

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