第140話 真耶を止める者達
女性は真耶に拘束されると頬を真っ赤に染めあげた。なんと、真耶はその女性を裸にした挙句、亀甲縛りをしたのだ。しかも、めちゃくちゃキツく。
だが、これには理由がある。まず、相手は恐らく忍者だ。戦っている感じそんな気がする。だとしたら、暗器を持っているのは確実。暗器を防ぐのに一番いいのは脱がせることなのだ。
そして、亀甲縛りにも理由はある。まず、この女性はとんでもなく体が柔らかい。であれば、ロープから抜け出すことなど造作もないはずだ。しかし、亀甲縛りにすることで抜けにくく、かつキツくすることでさらに抜けにくくさせている。しかも、両手と両足が繋がっているから手を使おうと動かすと転ける。
真耶は女性を拘束し、右手を構築していたものを解除するとその女性を連行するような感じで里の中へと入っていった。
「ところで、君の名前は?」
「私ですか?私はヒナ」
「ヒナか。よろしくな」
真耶のその言葉に多少は驚くもののなぜか真耶の真意を考えるような素振りを見せて、ぷいっと目を逸らした。
「あ、なんか見えてきたよ。真耶、その子の仲間が来るかもしれないから気をつけて」
そう言って何時でも魔法を発動できるように体制を整える。
そして、そのまま里の中まで入ることが出来た。
「……あーね、まぁそうなることはわかっていたよ」
里に入るといきなり包囲された。だが、それはそうだなと思う。なんせ、突然得体の知れない奴らが自分の領地に入り込んできたのだ。誰でも怪しむ。
だが、この里も少しおかしなところがあるらしい。さっきからずっと見ていて包囲している人が女性しか居ないのだ。
「なぜ女性ばかりだ?男は……っ!?」
その時、女性達はいきなり攻撃してきた。真耶はその攻撃をスレスレでかわす。そして、手に持っていた紐を引っ張り拘束していた女性を引き寄せた。
「お前ら、こいつがどうなっても良いのか?」
こんなことしたくないが、女性を人質にとる。さすがに相手も人質を取られれば大人しくなるはずだ。
「……皆、退け!」
そう言ってその場から全員いなくなった。
「……なんでマヤ様はこんなに狙われてるんですか?」
「知らないな。シュテルは分かるか?」
「いや、私にも分からない。なにか事情があるかもしれないな。急いで里長のところまで行こう」
真耶達は、シュテルの話を聞き里長がいるところまで走り出した。
「ちょっと、そんなに急いで良いの?その子に案内してもらわないと行けないんじゃ……」
奏は少し心配しながら話す。しかし、真耶は1度振り返ると左目を指さして言った。
「この目があるから大丈夫だ」
そう言って指さした目には青白い光を放つ円が浮かんでいた。
「また新しい目の力か?君はどんどん強くなるな」
「まぁな。だが、これは攻撃用じゃない。だから、戦闘にはあまり向かない」
「そうなんだな」
そんな話をしながら真耶達は里長の元まで急ぎ、約1時間で到着した。
「……はぁ……はぁ……もう、ダメ……!ま、まーくん……」
里長のいる建物の前に来ると、奏ははぁはぁと息を切らしている。他の皆もかなり息を切らしている。さすがに急ぎすぎたようだ。だが、シュテルはピンピンしている。どうやらこの程度では疲れはしないらしい。
「体力の差が激しいな」
真耶はそんなことを呟いて目の前の建物を見た。さすがは里長がいるだけはある。とんでもなくでかい建物だ。まず、扉がデカすぎる。とりあえず破壊するか?いや、さすがに壊すのはまずい。普通に開けよう。
「あ、開くんだな。よし……」
真耶は力を込めて開けようとした。意外と軽かったからか、そこまで力を入れる必要は無かった。
「軽いな。もっと重たい方が……」
またいる。今度はさっきの2倍近く人がいる気がする。もしかしてあれか?俺は本当に邪魔者か?
「……なぁ、シュテルは行けるのか?」
「どうだろうね。ここまで嫌われてたら行けるかわからないな」
「だが、先程から俺にだけ攻撃を仕掛けるということは?」
「フッ、やっぱり目的はマヤか」
「とりあえずシュテルは奏達を連れて先に行っててくれ」
「君は?」
「皆殺しにすると言いたいが、無力化させるだけにするよ」
真耶は少し残念そうに言ってアルテマヴァーグを抜いた。シュテルは真耶のその様子を見て少し微笑むと奏達を連れて先に行ってしまった。
「……はぁ、なんで俺をそこまでして里に入れたくないんだよ」
「……」
「なんか喋れよと言いたいが、喋らなくてもいい。無理やり推し通るだけだからな」
真耶はそう言って剣を構えた。そして、一瞬で距離を詰め女性達を全員気絶させる。さっきまで大量にいた里の女性達は、一瞬にして倒された。
「……」
一体何だったのだろうか?なんだか嫌な予感がする。もしかしたら俺の知らないところでなにかが起きているのかもしれない。例えば、《《もう1人の俺が俺を止めるためにこんなことをした》》とかだ。
「……いや、考えすぎか」
真耶はその場に倒れている女性達を端によせ寝かせて里の中へ入っていった。
その時真耶は、遠くから見つめる人影に気づかなかった。
それから真耶はずっと歩いていた。どうやらかなり長い道らしい。歩き続けると、シュテル達がいた。どうやら真耶を待っていたらしい。
「お前ら、待ってたのか?」
「まぁね。ここは多分君の力が必要だからさ」
そう言って指を指した場所には橋があった。しかし、その橋は朽ちていて乗ったらすぐに壊れそうだ。
「あーね。ハイハイ。なるほどなるほど……”物理変化”」
真耶はすぐにその状況を理解し魔法を唱えた。すると、地面が盛り上がり橋を覆っていく。そして、さっきの直ぐに壊れそうな橋は一瞬にして頑丈で壊れるなんて程遠いような橋が完成した。
「さすがだね。真耶くんの魔法は私達も欲しいなぁ」
「使いこなせるのか?」
「えへへー。難しそうだなぁー」
そんな会話をしながら橋を渡って行く。そして、ついに真耶は里長のいるであろう建物の最深部まで来た。
なんというか、その、あれだな。
「……建物の中に建物があるんだな」
真耶はその建物を見てそう言った。
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