第13話 ギルドと言うより義琉怒な所
再び場所は変わって真耶達は・・・
扉を開いて固まっていた。
「おぅ!何しに来たんだよてめぇ!」
「死にてぇのか!?」
何故かそこには、冒険者とは思えない風格の人達がいた。しかし、どうやらまともな人もいるようだ。穏やかな目でこっちを見ている。
「なぁ、ここって本当に冒険者ギルドか?どこかの組と間違えてねぇか?」
「組?それがなにか分かりませんが、間違いなく冒険者ギルドです」
クロバはそう言う。だが、どうしてもギルドには見えない。どちらかと言うと、”義琉怒”だな。
「この街の冒険者はルールに縛られないんですよ」
「急にどうした?てか、ルールに縛られないって・・・それでこうなったら元も子もないだろ」
「ま、そんなことは気にしないで行きましょう」
クロバはそう言って背中を押してくる。真耶は嫌々ながらも中に入っていった。
「ようこそ!冒険者ギルドへ!今日はどう言った御用件ですか!?」
「他の街で冒険者をやっていたんだが、この街でもクエストを受けられるのか知りたい」
「分かりました。では、ステータスプレートを見せてください」
真耶は受付の女性にステータスプレートを見せる。女性はそれをくまなく見て、言ってきた。
「Eランクなんですね。それに、錬金術師・・・」
「なんかダメなのか?」
「いえ、この街は冒険者になる際錬金術師の方にはちょっとした試練がありまして・・・たとえ他の街で冒険者をやっていたとしても受けないとダメなんです」
そんなことを言ってくる。
なんか訳分からんこと言われたなぁ、と真耶は思った。そして、もう面倒臭いからやらなくていいかな、と思って断ろうとすると視線を感じた。
「っ!?」
扉を見ると、既に封鎖されている。
「これはどういうことだ?場合によっては相応の処置をするが・・・」
「簡単なことですよ。お連れの方は罪人、そしてあなたは錬金術師・・・条件は揃ってます」
全く意味が分からなかった。だが、良くないことが起ころうとしていることだけはわかる。
「クロバ、どういうことだ?」
真耶がそう聞いたが、反応は無い。
「おい!」
「ハッ!?・・・すみません!ちょっと、怖くて・・・あの、言い忘れてたんですけどこの街で冒険者になるのに錬金術師は試練があるんです」
「それを先に言え!」
「い、いえ・・・言ってしまうとマヤさんは絶対に行かないと言ったので・・・」
そう言って口ごもる。だが、真耶にはその理由がよく分からなかった。普通のテンプレならスっと登録してババっとクエストこなせるはずなのだが・・・
「じゃあ、試練を開始しますか?」
「試練って何するんだよ?」
「お隣の方に聞いてください」
女性はそう言ってきた。だから、真耶は聞く。しかし、クロバは顔を真っ赤に染め上げて何も言わない。そして、少し暗い表情となった。
「・・・試練・・・出来るか?」
何が起こるか分からないが、あえてそう聞いた。恐らくこの試練は真耶ではなくクロバが受けるのだろう。すると、クロバは静かに頷いた。
「出来るって。だからやっていいよ」
真耶がそう言うと、女性は不敵な笑みを浮かべる。そして、二股のフック、ボールが着いたバンド、バットや鞭といった訳の分からない道具が出してきた。
「・・・」
なぜか、真耶はその道具に見覚えがあった。日本にいた時に、そっち系の漫画を読んで見た道具だ。
「まさか、こんなものまで日本とそっくりなのかよ・・・」
真耶の力ない言葉が響き渡る。その横で、顔を青くさせて怯えるクロバがいた。
真耶は一体何が起こるのか全く理解出来なかったが何をしようとしているのかは察した。
「やっぱりやらねぇ。会ったばっかだけど、クロバに手は出させねぇ」
そう言って手を前に出す。そして、目の前の女性を睨む。
「フフフ・・・ですが、決まりなのですよ。それとも、冒険者登録はしないのですか?それだと、魔物を倒しても報酬は貰えませんよ」
「他に方法はないのか?」
「残念ながらありません。諦めてください」
女性はそう言って笑う。やっぱり変な世界だ!と、思いながらも思考を巡らせる。
(この国の錬金術師はどういう立場なんだよ・・・)
とか思いながらクロバを見る。すると、全て覚悟したような目で真耶を見つめる。
「仕方がない・・・」
そう言って手を下ろした。それを見て、全員がにやける。
「それなら辞めさせてもらうよ。じゃあな」
そう言ってクロバを連れて扉まで行った。しかし、扉には冒険者がいる。その冒険者は扉を封じて行かせないようにする。
「残念だったな。ここに来たが最後、もう出られねぇんだよ!」
「残念なのはお前の頭だ。俺は錬金術師だぞ」
そう言って床に手をおく。すると、壁から鋭い刃が現れる。
「いつでもお前らを殺せる。邪魔をするな」
そう言って壁に穴を開けそこから出ていった。
「それじゃあ、じゃあね」
真耶は壁を修復するとギルドを後にした。
「良かったのですか?あれくらいなら私も受けましたけど・・・」
「そんなことをさせるわけないだろ」
そんなことを言いながら2人は宿へと帰る。その道中、真耶は色々なことを言って来たためかクロバはその一言一言にドキッとさせられる。
(うぅぅ・・・胸の鼓動が収まらないよ〜)
そんなことを思っていると、突如真耶が手を前に出し静止してきた。
「俺から離れるな」
そんなことを言って体を密着させる。
(え?えぇぇ〜!?ちょっと!胸のドキドキが聞こえちゃうじゃない!)
そんなことを頭の中で思う。そして、真耶の顔を見る。少し険しい表情だ。そして、目線の先を見るとさっきギルドにいた冒険者2人が武器を構えて待ち伏せしていた。
「そんな・・・!?マヤさん!私を置いて逃げて!」
「何を言っている?俺から離れるな。これは絶対だ」
そう言ってクロバを片手で抱きしめた。
「うぃ〜!かっこいいね〜にぃちゃん!」
「そのカッコつけてる感じがウザイんだよ!」
2人はすぐに攻撃してきた。クロバは焦った。この街にいて冒険者の実力は把握しているつもりだ。だから、この街の冒険者は実力が高いことも知っている。
(ダメ!殺られる!)
そう思った。そして、目を閉じた。
「グァァァ!」
「ヒ、ヒィ!やめてくれ!」
聞こえてきたのは真耶の声ではなかった。怖がりながらも薄らと目を開ける。すると、右肩を腕で貫かれた冒険者が右肩から血を流していた。
その冒険者は死んではないが、かなり苦しんでいる。
「な、なんで・・・!?」
クロバはかなり動揺した。目の前でありえない光景が起きたのだ。真耶は冒険者の右肩を貫いて、片手で持ち上げているのだ。その冒険者は真耶の数倍の体格を持つ。その様子に、何も言えなくなった。
「・・・その言い方だと、お前もこいつらの仲間なのか?」
真耶はそう聞いた。クロバは慌てて首を横に振る。
「違うよ!ただ、この男はこの街でも有名な冒険者だったんだ。だから、驚いて・・・」
「フッ、冗談だよ。お前が敵とは思っていない」
その言葉にほっとする。
「ただし・・・敵ならこうなるだけだ」
そう言って男を投げ捨てた。もう1人の冒険者は投げ捨てられた男の元へ駆け寄る。死んでいないのを確認して、ほっとする。
「お前!こんなことしてタダで済むと思うなよ!」
「何それ?そんな3流の言うようなこと言うんだ。・・・雑魚は黙って寝てろ」
真耶は声を低くして、言った。それを聞いて、周りの人が驚き、視線が集まる。真耶はそれを見て少し考えると、クロバを連れてその場を離れた。
「さて、帰るぞ」
そう言って、宿の方に足を進めた。
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