第134話 白虎冥爪
「ねぇ、まーくん……どうしよう……?」
「真耶くんなら何とかできるよね……?」
「マヤ様、カナデ様、お2人は必ず私が守ります」
「マヤさん……私信じてます」
4人は、口々にそう言ってきた。しかし真耶には、この敵をどうにかする力は残っていない。
いや、残ってはいるが右腕がない以上火力が足りない。それに、この擬似的な腕も弱い。
「……新しい目を使ってみるか」
真耶はそう言って左目を見開いた。その目には雲のようなモヤがかかっている。そして、何やら幻想的な雰囲気を醸し出させる。
その目の力なのか、真耶自身の体も幻想的な光を放ち出した。
「まーくん……それ……」
「お前達は離れてろ。そして、結界を張れ」
奏達は真耶の言葉を聞いて後ろに下がると結界を張った。
とりあえずこれで大丈夫だろう。奏達の結界は強いからな。さて、そろそろ準備に入るか。
そんなことを思いながら右手に魔力を溜め始めた。本当は無いはずの右腕を想像する。そして、構築……
「っ!?」
その時、突如前から攻撃が来た。真耶はそれを何とかして回避する。しかし、ギリギリだ。当たるか当たらないかというところでスレスレで回避した。
そして、すぐに体制を建て直し再び右腕の構築を始める。
「させるわけなかろう!」
「チッ……!お前、俺が何をしようとしてるのか分かるのか?」
「思考が読めるんでな」
そんなことを言うが、冗談では無さそうだ。だが、多分これは奢りだ。勝ちを確信したゆえの奢りだろう。なら、まだ決着は分からないな。
「……いや、普通の右腕を構築するのは面白くないな」
真耶は構築するのを止めた。そして、新たに考え直す。今回は前で慣れてるからすぐに想像できるし構築も簡単に出来る。
「終わりだ!”エンドスロット”」
コンスタンティンはスロットのようなものを回し始めた。そして、1のゾロ目がでる。斬撃が来る。避けるか?いや、そんなことする必要もない。
「だって、俺が最強だから」
真耶がそう言うと、斬撃が飛んでくるのが見えた。それは、真耶の目の前に来ると突然消滅する。
コンスタンティンは一瞬何が起こったのか分からなかった。自分の技が失敗したのか、とか思ったが、失敗することがないのでそれは無い。
じゃあなぜ斬撃が消えたのか……。その理由はすぐにわかった。なんと、真耶の右手が再生しているのだ。しかも、巨大な爪となって。
その爪は虎の爪に似ていた。しかし、白く、光を放っている。そして、何故か真耶の右目の時計の針が通常通りに動いている。さらに、その目の近くまで白い光が模様を描きながら来ていた。
「何だそれ?」
「お前と同じようなものさ。ボスが強くなれば主人公も強くなる。テンプレだろ」
真耶はそう言って爪を見せつける。だが、以下に強い爪だと言ってもジャックポット中の自分よりは強くない。コンスタンティンは頭の中で勝手にそう決めつけて真耶との距離をとった。
「いい考えだ。俺が爪だから接近戦が得意だと見たんだろ。だがな、爪だからと言って接近戦だけが得意だと言う訳では無い。”白虎冥爪・白線”」
真耶は爪を1振りした。すると、白い光刃がコンスタンティンに向かって飛んでいく。コンスタンティンはその刃をスレスレのところでジャンプして避けた。
……が、それが失敗だった。
「な!?」
「終わりだね。”白虎冥爪・裂絶白刃”」
真耶はそう言ってコンスタンティンの左肩から右の脇腹にかけて右手を振り降ろした。すると、コンスタンティンの体が輪切りにされる。
しかし、コンスタンティンは不敵な笑みを浮かべていた。おそらく再生することが出来るからだ。だが、その笑みはすぐに消えうせた。
「本当に終わりだ。”白虎冥爪・地獄喰”」
その言葉と共に、コンスタンティンから紅い液体が吹き出してきた。見ると、真耶の腕がコンスタンティンの胸を貫いている。そして、スロットが止まる。いや、止まると言うより止められた。それも、数字と数字の間で。
止めたのは当然真耶だ。真耶は止めるなりすぐに破壊する。これでもう魔法は使われない。
「これで回復もできないわけだ。俺の勝ちで決まりだな」
真耶はそう言うと、右手の爪を元の腕に戻した。そして、不敵な笑みをうかべる。
その瞬間剣が飛んできた。しかし、その剣は誰にも当たることなくどこか虚空に消えていく。
どうやら最後に不意打ちをしようとしたらしいが、出来なかったようだ。真耶はその剣を消滅させるとコンスタンティンの顔に手を触れた。そして、魔力を流す。
「っ!?グァァァァ!」
コンスタンティンの断末魔が聞こえた。そして、とんでもないほどの魔力がVIPルームの中に溜まっていく。
どうやらこの男、声に乗せて大量の魔力を流しているらしい。そのせいで部屋の中に魔力が溜まっていく。
「爆発させる気か。やめておけ。そんなもの俺には通用しない」
「フハハハハハ!貴様は効かんのは知っておる!だが、貴様の女達はどうだ?」
「耐えきれないな。だが、こさそれがどうした?俺が守れないとでも?お前は俺を舐めすぎだ。右腕がなかったらまた違ったかもしれんが右腕が再生した俺からすればお前など取るに足らん」
真耶はそう言うと静かに奏達の元まで歩いた。そして、右腕に魔力を溜める。すると、透明な壁が現れた。この壁は最初にコンスタンティンが真耶の攻撃を防いだものと同じものだ。
「そういうわけで、1人で死ね」
真耶は不敵な笑みを浮かべるとそう言い残して自分達を壁で覆った。その直後、その部屋は大爆発した。
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